スープ屋しずくの謎解き朝ごはん まだ見ぬ場所のブイヤベース 友井羊

●スープ屋しずくの謎解き朝ごはん まだ見ぬ場所のブイヤベース 友井羊

 前作に続きシリーズ第4作。フリーペーパーを作る会社に勤める理恵がスープがメインのお店しずくに通うようになる。その店の店主である麻野が探偵役となる短編集。以下の5編+αからなる。

 

 

「おばけが消えたあとにおやすみ」

 露のクラスメイト柏夢乃が金縛りにあうため寝るのを怖がり睡眠不足になっているという話を理恵は聞く。柏の母親律子がやっている輸入家具の店は理恵の雑誌の客だったため理恵は話を聞くが原因が掴めなかった。夢乃の症状は悪化、母親がお化けに乗り移られたと言い出すが…


「野鳥の記憶は水の底に」

 伊予は高校時代の友人皆良田文をしずくに連れて行きジビエを食べさせる。文の彼がジビエに興味を持ち始めたためだったが、文はなぜかジビエを敬遠してきた。文は幼少の頃鳥撃ちをする祖母とジビエを食べたことを思い出す。後日文は彼とジビエを食べに行き軽鴨を食べ気分を悪くしてしまう。原因を探るため伊予は文と祖母が暮らしていた家に行くが、そこで軽鴨を見た文は「殺される」とつぶやき伊予を驚かせてしまう。伊予は朝のに相談するが…


「まじわれば赤くなる」

 露の友人夢乃が学校での調理実習中に他のグループの鍋を捨ててしまう。本人は理由を話さず露は困惑する。偶然街中で夢乃を見かけた理恵は彼女から話を聞くことに。過去にあった友人へのイジメ、先生の生徒たちに取った態度など問題点がわかってくる。理恵は先生と夢乃をしずくへ誘う。そこで夢乃が鍋を捨てた理由を告白するが…


「大叔父の宝探し」

 理恵の大叔父石持伸彦が亡くなる。石持と仲良くしていた理恵の従姉妹依咲は生前の石持から家には宝があると聞かされていた。理恵は依咲とともに宝を探すが見つからない。家の取り壊しが決まり、その工事当日理恵は麻野に相談をすると、麻野は取り壊し工事を中止するように命じる。


「私の選ぶ白い道」

 理恵が布美子の代わりに編集長代理をしている雑誌イルミナの他社への譲渡話が社長からされ、理恵は動揺する。同じ頃入社時に世話になった粟田治美の退職、専門学校時代の先輩須藤蘭から一緒に仕事をすることの誘い、布美子からの提案、などがあり、理恵はさらに悩んでしまう。そんな時、休日出勤している理恵のデスクに、イルミナ所属時に客として感銘を受けた光ヶ丘椿が作った柴犬の置物が置かれることがあった。社内には誰もいないはずなのにと不思議がる理恵は、麻野に全てを相談することに。

 

エピローグ

 理恵は布美子とともに社を異動することを決意する。それを告げにしずくへ行き、麻野に感謝の言葉を伝える理恵だったが、麻野の反応は意外なものだった。

 

 このシリーズのファンがおそらく待ち望んでいた理恵と麻野の仲にやっと大きな進展が見られる第4作となった。と言っても一般的に見ればそんなに大きな進展でもないのかもしれないが(笑

 レギュラーメンバーの友人や血縁者に起こる事件を相変わらず麻野が見事に解決していく。このシリーズは料理屋が舞台なだけに、料理に関係する謎を扱うことが多いが、必ずしも全てがそうではない。料理関係の謎の解決は見事だが、そうでない謎についてはちょっとミステリとしてはレベルが下がる気もするがそこはそれ。あまり気にしても仕方ないだろう。

 それよりも、親子や夫婦などの情愛について麻野が見せる態度が厳しくそして優しい。本作でも最初の2話がまさにそれであり、シリーズでの見せ場にもなっている。

 いよいよ理恵と麻野の仲が大きく進みそうな展開となってきた。現時点で続刊はまだまだあるようで、今後の展開が楽しみである。