まひるまの星 吉永南央

まひるまの星 吉永南央

 「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ第5作。コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」の76歳の女主人、杉浦草が主人公。彼女の周りで起きる問題を彼女が解決していく短編集。「母の着物」「探しもの」「冷や麦」「夏祭り」「まひるまの星」の5編。

 

 草は母親瑞(たま)が残した清子への着物の扱いで困っていた。「うなぎの小川」の女主人清子と瑞は昔仲の良い間柄だったが、いつしか不和となり娘である草も「うなぎの小川」へ行くことはなかったためだった。

 そんな折、町の山車蔵を持つ山上から草は「小蔵屋」の敷地内への山車蔵の移設を打診される。草が「小蔵屋」をたたむ時に、という約束だったものを早めるというものだ。悩む草だったが、「うなぎの小川」の向かいにある土地に山車蔵を作るスペースがあると聞きそこを訪ねる。その際久しぶりに清子と対面するが、彼女に『山車蔵は「小蔵屋」で』と言われてしまう。

 草は清子の息子滋の嫁丁子に瑞と清子の不和の原因を聞くことにするが、丁子と滋に離婚話が持ち上がっていることを知る。さらに彼らの娘瞳が未婚のまま子供を産むと言っていることなども。

 山車蔵移設の問題、草が覚えている滋の不思議な行動の理由、頑なに山車蔵移設を拒否する清子、などに対し、草は一つ一つ真実を探って行くことになる。

 

 本作も前作「糸切り」と同様、短編集の形をとっているが、上記した問題解決に向けて草が奔走する長編と言える。ただし前作が非常に複雑な人間関係があったのに対し、本作は清子を中心とする「うなぎの小川」の家族を中心に話が展開するため、前作に比較するととても話がわかりやすかった。

 最大の謎は、草の母瑞と清子の不和の原因。ここに山車蔵移設の問題が絡んで来るが、草は見事に二つを解決に導く。滋の不思議な行動も彼ら夫婦の離婚も源は同じであることがだんだんとわかって来る。その他にあった伏線も見事に回収に成功している。

 前作のように悪キャラが登場するわけでもないが、高齢である主人公草が真夏に活躍しすぎて倒れてしまうという場面はあまりにリアルだった。それでもラストは仲違いしていたはずの清子とも穏やかに会話できることとなり、見事な大団円。

 もちろん続編を読みたくなるのは当たり前か。