黄色い実 吉永南央

●黄色い実 吉永南央

 「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ第7作。コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」の76歳の女主人、杉浦草が主人公。彼女の周りで起きる問題を彼女が解決していく短編集。「小春日和」「颪の夜」「宿り木」「帽子と嵐」「黄色い実」の5編。

 

 草が店の常連から古民家を買うことを勧められる。全くその気のない草だったが、その家を見に行くことに。そこで男性一ノ瀬と知り合う。さらに草は常連の紹介で地元の名士である大学教授の妻が店を訪ねてきて、息子元の就職先を探すため力を貸して欲しいと言われる。ある時店に地元で有名な元アイドル、オリエこと平織里江が訪ねて来る。草は常連客の仕事の話から佐野元を勧め、彼は就職することに。

 店の久実が一ノ瀬と仲良くなる中、オリエが小蔵屋の駐車場で暴行されてしまう。しかも犯人は佐野元だった。証拠もなくオリエの噂だけが一人歩きしていく。草は駐車場であるものを発見、さらに久実の車の中からもあるものを見つけてしまい、久実までもが暴行にあった可能性を知ってしまう。

 犯人が捕まらない中、草は何をすべきかを考える…

 

 シリーズ7作目にして最も読むのがツラい一冊になってしまった。しかし1日1章と決めていたマイルールを破り、後半は一気に読んでしまった。

 途中、草が発見したものにより悲惨な出来事が想像されてしまうが、まさかこの著者がシリーズレギュラーで草の右腕とも言える久実にそんな試練は与えないだろう、草さんの勘違いだろうと思って読み進めたが、ストーリーは辛い方向に進んでしまう。

 終盤、いつもとは違う草の強い態度に違和感を覚えたが、最終章を読み、草の態度の本当の意味がわかり考えさせられてしまった。このシリーズではおそらく初となる、著者による巻末の付記がその思いを強くさせてくれた。女性の著者だからこそ、書かなくてはいけないテーマだったのだろう。

 思わず1章を読み直したが、冒頭からキチンと佐野の妻百合子の異常な様子が描かれており、著者の上手さを改めて感じてしまった。

 ラストは久実の将来を左右する話も出てきたが、それに対する久実の言葉に思わず涙ぐんでしまった。

 やはりこのシリーズは良い。本当に。