弁当屋さんのおもてなし 喜多みどり

弁当屋さんのおもてなし ほかほかごはんと北海鮭かま 喜多みどり

 恋人に二股をかけられた上でフラれ、その上札幌に異動となった千春。彼女は偶然見つけた弁当屋「くま弁」に立ち寄る。従業員ユウと会話をし、注文した弁当とは異なる弁当を食べた千春は元気を取り戻し、弁当屋の常連となる。弁当屋「くま弁」と千春にまつわる短編集。以下の4編からなる。

 

「かにを夢見る鮭かま弁当」

 千春は「くま弁」でザンギ弁当を注文するが、手渡されたのは鮭かまの入った弁当だった。それを食べ元気を取り戻した千春は、鮭かまが入っていた理由に気づく。

 

「あまなっとう赤飯あまなっとう抜き」

 千春は「くま弁」で女性客が甘納豆が入っていない甘納豆お赤飯を注文しているのを目撃する。不思議な注文を疑問に思う千春だったが、その真相を知ることになる。

 

「七月のかきめし弁当」

 「くま弁」のユウをアニキと呼ぶショウヘイという客が現れる。彼の話を聞いていた千春はショウヘイの態度に疑問をもち、ユウに相談することに。

 

「涙の山わさびおにぎり」

 「くま弁」の店主熊野の義理の息子竜ヶ崎が店を手伝い始める。千春は彼から声をかけられ話をし、「くま弁」の今後について知ることになる。

 

 また新しいシリーズを読み始めることに。やはり「ちどり亭」の面白さが忘れられず、同じ弁当屋が舞台のこのシリーズを選択。

 客側である千春目線で描かれているのが「ちどり亭」とは異なる点。そのため、ユウの謎が少しずつ明かされていく展開となっている。また客である千春がお節介?をして、同じ客に降りかかる難題を解決していく展開に。

 千春のお節介?ぶりはさほど気にならず、ハートフルなところも良いと思う。しかしネットで他の読者も指摘していたが、会話が少し不自然に感じる部分もある。特にもう一人の常連である黒川との会話。年の差が大きいにもかかわらず、黒川の千春に対する敬語に違和感がある。

 さらに最終話は少しベタな展開すぎる部分も。1冊目にして最終話に大きな事件を持ってくるのはわかるが、登場人物たちがあまりにステレオタイプすぎ、しかも良い人ばかりで、読んでいるこちらがくすぐったくなってしまう。おそらくとことんハートフルな話にしたかったのだろう。この展開がずっと続くならちょっと、と思ってしまうが、このシリーズはまだまだ先が長いようなので、別の展開もあることを期待して続編も読んでみよう。