戻り舟同心 夕凪 長谷川卓

●戻り舟同心 夕凪 長谷川卓

 同心を息子に譲り隠居していた二ツ森伝次郎が奉行所から永尋(ながたずね〜未解決事件)の担当として復帰する。同僚だった染葉、現役時代に使っていた岡っ引き鍋虎と孫の隼などと一緒に事件解決に奔走する。シリーズ第2作、以下の3編からなる。

 

「《布目屋》お近」

 27年前の大垣屋の番頭殺しの下手人、鎌吉が江戸に向かっているという情報を知った伝次郎は仲間たちと高輪で張り込みし捕らえる。翌日見回りに出た伝次郎は、街で老婆が筵を引いて座っているのを見る。伝次郎は、鍋虎から老婆が布目屋の近で、18年前に布目屋に押し入った鬼火の十左を探していると聞く。伝次郎は近を見張ることに。近が襲われ18年前の事件を解決していくことになる。

 

島流し

 伝次郎は9年前殺された栄吉という83歳の老爺殺しを調べ始める。栄吉がお目こぼし舟の船頭をしていたこと、36年前に舟の客が島流しの男に会えず海に飛び込んでしまった事件のことを聞く。9年前に赦免になった芳蔵にたどり着き、芳蔵の前職研ぎ師を調べるうちに、研ぎ師政五郎の店で働いていたことを知る。伝次郎たちは政五郎を見張ることにするが。

 

「暖簾」

 寅屋にいた伝次郎を吉兵衛が訪ねてくる。彼は娘の富が夢枕に立ち、2年前に浅茅ヶ原で見つかった白骨死体が自分だと言ったと話す。富は24年前、働いていた栄古堂から金を持ち逃げした手代の佐助と共に逃げたとされていた。伝次郎は金を盗んだはずの二人が罪を着せられ殺されていたと考え、栄古堂のことを調べ始める。事件後に婿入りした主人の栄三郎と番頭の国右衛門が怪しいと睨んだ伝次郎は、二人に罠を仕掛ける。

 

 

 前作に続くシリーズ2作目。前作終わりで登場が予告された真夏が仲間に参加、迫力ある斬り合いのシーンも増え、より面白くなってきた。伝次郎の孫正次郎もすっかり馴染み、仲間うちでの会話も楽しい。

 伝次郎の行動やセリフもカッコよさを増し、まさに鬼平犯科帳並みのシリーズになる予感がする。1章の話で本懐を遂げたお近が仲間になったり、真夏が見かけた掏摸が意外な形で後に関係してきたり、様々なゲストキャラが伝次郎たちの捜査を助けたり、とエピソードも多く、時代小説の醍醐味を感じさせてくれる。

 永尋の同心仲間についても、前作で名前だけが上がっていた塩谷のことを断る一方で、マメに日記を書いていたという河野が加わることに。

 ドラマ化されていないのが不思議なほどの完成度。次作以降も楽しみに読んでいきたい。