本所おけら長屋 十八 畠山健二

●本所おけら長屋 十八 畠山健二

 

 「あやつり」

 黒石藩では藩主高宗と正室玉姫との間に世継ぎができないことが心配されていた。江戸家老工藤が島田にも話すほどだった。その工藤の元へ用人鎌田半十郎が訪ねてきて、高宗に側室をと訴える。

 その頃玉姫は奥女中の志桜里が街中で殿を見かけたという話を聞いていた。玉姫は殿に女がいると悲しむ。志桜里は殿と一緒にいた田村真之介に真意を確かめることに。田村は事情を聞き、正直におけら長屋のことを話してしまう。工藤は二人が夜密会しているのを目撃、田村を冷やかすが、田村から本当のことを聞く。

 半十郎が工藤に側室候補の李枝を引きあわせる。李枝は縮緬問屋丹後屋の四女だった。李枝は高宗に引き合わせられるが、高宗は良い顔をしなかった。田村は工藤の命でおけら長屋に李枝のことを調べてもらうことにする。

 調べたところ、丹後屋の主人金五右衛門は借金のカタに李枝を身請けし、野心のために側室として差し出したこと、さらに李枝にも手を出していたことがわかる。長屋の皆は三祐を訪れた高宗と田村に全てを告げ、玉姫も李枝も幸せにする方法を高宗に要求する。

 志桜里は李枝が耕介という大工に惚れていたことを知る。長屋の皆は金五右衛門のさらなる悪事を暴き、彼を脅す。そして高宗は李枝と耕介を一緒にすることに。

 

 「たけとり」

 おけら長屋の大家徳兵衛の元に彦之助がやってきて、遠縁にあたるお竹を預かって欲しいと頼む。お竹は六蔵という亭主がいたが、彼は酒を飲むと暴れお竹にも暴力を振るっていた。お竹はお染の家で一緒に暮らすことに。お染はお竹が優しすぎること、それが六蔵をダメにしていることに気づく。お染はお竹を八五郎夫婦の元へ。夫婦の様子や長屋の皆の様子を見たお竹はある決心をする。

 その頃六蔵はお竹を探し回っていた。そしてとうとう居場所を突き止めおけら長屋にやってくる。六蔵と会ったお竹はやり直すつもりはないとはっきり告げる。

 お竹は甲州大月村にいる叔父の元へ行くことに。

 

 「さいころ

 お満の働く聖庵堂に父本田屋宗右衛門が理由をつけて度々やってくるようになった。お満は父が聖庵堂で働くお律に惚れたのではないかと考え、万松に相談する。

 大家徳兵衛の息子由兵衛が筑波村に行く途中徳兵衛を訪ねてくる。徳兵衛は息子にお律と一緒になりたいと考えていると話す。

 徳兵衛の家に宗右衛門がやってきて酒を飲み始める。お互いに好きな女性がいることがわかり名前を教えあおうということになるが、照れてしまいどちらも話さない。サイコロで先に話す順番を決めようとするが酒の酔いで話はめちゃくちゃになってしまう。そこへお里とお咲がやってきて、酔っ払った二人を見つける。万松や由兵衛、本田屋の番頭もやってきて、二人がお律に惚れていることが皆にバレてしまう。

 翌日万松はそれぞれ宗右衛門、徳兵衛の味方のふりをして一儲けしようと考える。お染はお律に全てを打ち明けるが、お律は聖庵堂の仕事を優先したいと話す。お染はお律が聖庵に惚れているのではと話す。宗右衛門、徳兵衛にも話をし、老いらくの恋は終わりを迎えるが、隠居の与兵衛がお律と一緒になりたいと話し始める。

 

 「きんぎん」

 油問屋黄金屋の三男慶太郎が野良犬に襲われる。黄金屋忠左衛門は慶太郎の仇を取るために、鳶松葉組の棟梁に野良犬を懲らしめるようお願いする。さらに慶太郎の子守をしていたお克をクビにしてしまう。

 金太は神社で握り飯を食っている時、野良犬に握り飯を与える。野良犬は金太に懐くようになり、金太に付いてくる。

 お満が首吊りをしようとしている女を見つけ助け三祐へ連れてくる。女はお克だった。事情を聞いた長屋の皆は長屋にくるようにお克を誘う。

 お染と暮らし始めたお克だったが、金太のところにいる犬を見て驚く。慶太郎を襲った犬に似ていたからだった。しかし犬は金太に懐いていた。長屋の皆は犬に銀太という名前をつける。

 金太と銀太が松葉組に襲われる。金太は銀太を守るが大怪我をしてしまう。通りかかった大工の寅吉が金太を助ける。話を聞いた万松たちは金太を聖庵堂に運び治療をしてもらう。皆で事情を調べ、松葉組の仕業だとわかる。八五郎を始め長屋の男たちは金太の敵討ちに行こうとする。そこへ万造と犬猿の中の栄太郎や早飲み込みの半次もやってきて皆に加勢することに。相手の名前も松葉組の駒吉と判明する。

 黄金屋では新たな問題が起きていた。娘お晴が誘拐され投げ文がされたのだった。200両の身代金を要求され、忠左衛門は松葉組棟梁長蔵に相談する。長蔵は犯人との交渉を買ってでる。

 万松たちは駒吉を捕まえ、仕返しに大いなる嫌がらせを行う。

 お克は川で一人でいるときに、長蔵が黄金屋の娘を誘拐した悪巧みの話を聞いてしまう。お克はクビになる際に一人だけ反対してくれた、黄金屋の娘お晴に恩義を感じていた。お晴の危険を感じたお克は長蔵と話していた浪人の後をつける。

 長屋では帰ってこないお克を心配していた。万松は銀太にお克の匂いを嗅がせ探すことに。彼らは浪人がいる家を見張っていたお克と出会う。そしてお晴を助け出す。

 翌日黄金屋にきた長蔵を待っていたのは同心伊勢平五郎だった。彼の企みはおけら長屋の皆によって暴かれていた。長屋の皆は忠左衛門を非難する。忠左衛門はお克をや問い直すことを約束し、銀太も引き取ると話す。

 

 おけら長屋シリーズ第18作。前作に続き、3ヶ月ぶりに新作を読んだ。本作も前作同様、人情話3、滑稽話1、といったところ。

 「あやつり」は、黒石藩藩主高宗の世継ぎに関わる話。これまでも長屋の住民と親しくしてきた高宗の正室まで巻き込んだ話。いつも長屋の皆に振り回される田村の恋物語も少しあり、ニヤッとさせられる。

 「たけとり」は冒頭、お竹に関する噂話で幕をあける。それがいわゆる昔話のパロディで可笑しい。優しすぎる故に男をダメにしてしまう女性の話。現代にも通じる話か。長屋の辰次の恋物語でもある。

 「さいころ」は不思議な縁で仲の良い老人コンビ徳兵衛と宗右衛門の恋物語。ともに相手は松吉の義姉お律。こんなところでも恋物語かと思いきや、お律が惚れているのはどうやら聖庵先生。あまり物語の前面には出てこないが、これも今後ありそうな感じ。

 「きんぎん」は久しぶりに金太が活躍する話。相変わらず彼の話っぷりに笑わせてもらう。が、今回はその金太が大怪我をしてしまう。それでも怪我もなんのそのなのがやはり可笑しい。ラストはちょっと切ないが、金太はいつまでも金太であってほしい。

 

 前作では登場人物の成長が一つのポイントだったが、本作でそれを感じさせてくれたのは高宗と田村か。どちらも幸せになってほしいが、今後またその幸せになった姿を見せてくれることに期待。