●弁当屋さんのおもてなし 甘やかおせちと年越しの願い 喜多みどり
恋人に二股をかけられた上でフラれ、その上札幌に異動となった千春。彼女は偶然見つけた弁当屋「くま弁」に立ち寄る。従業員ユウと会話をし、注文した弁当とは異なる弁当を食べた千春は元気を取り戻し、弁当屋の常連となる。弁当屋「くま弁」と千春にまつわる短編集、シリーズ第4作。以下の4編からなる。
「先割れスプーンとオムライス弁当」
千春はくま弁で同じ常連客の三輪と会う。彼女は元生徒の土田ことりと一緒だった。三輪は土田が付き合っている彼氏に振り回されているのではと心配していた。土田は食に興味がなさそうだったが、時々店で千春と一緒に弁当を食べるようになる。ある時土田にかかってきた彼氏の電話の言葉に驚いた千春は、電話で彼氏に怒りをぶつけるが、それを聞いた土田は店から飛び出してしまう。翌日三輪と一緒に土田の家に行こうとした千春は土田に出会い、彼氏と別れたことを聞く。そして店で一緒に食事をするのだが、ユウは土田がコンプレックスに思っていたことを見抜きある提案をする。
「おせち嫌いの大晦日おせち」
千春は会社の後輩宇佐小夜子が弁当屋を嫌っているのを疑問に思う。それでもくま弁が気に入った小夜子は店に通い始める。ある時千春は小夜子の実家が弁当屋をしていたこと、店が潰れたのに常連客だった人々がまだ実家に集まることを毛嫌いしていることを聞く。ユウは大晦日の弁当を作ることを小夜子に提案する。そして大晦日、小夜子に口取りを渡したユウは、くま弁に集まる常連客の集まりに小夜子も参加するように促す。そこで常連客たちから「人と人との付き合い」の話をきく。
「スケートリンクのしばれいなり寿司」
くま弁の店主熊野が30年ぶりに開店当時の常連客だった木津根と田貫がケンカ別れしたことを気にしていた。30年ぶりに二人を引き合わせたい熊野は二人を試食会の名の下に店に呼ぶことに。ユウと千春は関係者からケンカの原因を聞くが、それには田貫の妹鷹子も関係していた。しかしお互いに少しずつ勘違いをしていることがあることに気づいたユウは、ケンカの原因となったと言われているいなり寿司を3人の前に出す。
30年前のいなり寿司の秘密を知った3人はお互いの想いを話し合うことに。
「未来に続くスパカツ弁当」
ユウの元にアメリカで暮らす母親からお弁当箱が送られてくる。その理由がわからないユウは戸惑う。
店の常連鷲見雪子は弟晴嗣と甥美春が美春の進路のことでケンカしているのを気にしており、千春に相談を持ちかけてくる。千春は二人に好きな食べ物について聞くが、味がついたスパゲティが好きな美春と味のついていない付け合わせのスパゲティが好きな晴嗣と、二人の好みは正反対だった。ユウが二人に出した弁当には、とんかつの上にミートソースがかかった、釧路名物のスパカツだった。二人はそれを前にお互いの想いをぶつけ合う。
シリーズ第4作。さすがにちょっとネタ切れ感が出てきたか。話の展開に不自然さが感じられる話が多かったような。
「先割れスプーン〜」は、土田と彼氏の関係に千春が打ってはいるのは流石にどうかと思うし、最後にユウが見抜く土田のコンプレックスもまり話に関係ないように思うし。
「スケートリンク〜」も「〜スパカツ弁当」も仲違いしている友人や親子を仲直りさせる展開が全く同じ上に、関係のないユウや千春がその理由をづけづけ聞いているように感じてしまうし。
「おせち嫌い〜」が展開的に無理のないイメージがあったぐらいか。
もともと、ユウのおせっかいぶりいん即発された千春が常連客にお節介を焼き、問題を解決していく、というのがこのシリーズなので仕方ないのだろうが、本作は少し強引さが目立ってしまったかな。
それでも、(前作にも書いたが)千春の札幌3年縛りの話が進むかと思っていたが、最終章でやっと話が出て二人が気持ちを確かめ合ったのは少しホッとし、続きが読みたくなる展開に。じれったい二人を長い目で見てみましょうか(笑