ビストロ三軒亭の謎めく晩餐 斎藤千輪

●ビストロ三軒亭の謎めく晩餐 斎藤千輪

 舞台俳優だった神坂隆一は所属していた演劇ユニットが解散してしまったため、新たな劇団を探している最中。姉京子に誘われ、三軒茶屋のビストロ三軒亭で食事をした隆一は三軒亭でギャルソンとしてバイトをすることに。オーナーシェフ伊勢、ソムリエ室田、ギャルソンの先輩陽介と正輝と共に働き始める。以下の4編からなる短編集。

 

「アントルコート」

 隆一が初めて担当した客高野雅。彼女の行動や彼女の発した言葉ライダウなど、彼女の態度は謎めいていた。二度ときてもらえないと思っていた隆一は彼女が次回の予約をしに来店してくれたことを喜ぶが、伊勢は彼女の秘密を見抜いていた。

 

「ダンドォーマロン」

 隆一の姉京子が学生時代の後輩根本岬と来店する。ご機嫌に酒を飲むふたりだったが、京子がバッグをトイレに忘れ、それを他の客が間違えて持って帰ってしまう。バッグは程なく見つかったが、それをきっかけに二人が口喧嘩を始めてしまう。怒って帰ってしまった京子に、伊勢は電店に戻るよう伝えてと隆一に話す。


ラクレット

 店の3周年を記念してラクレットを出すこととなり、試食会に3人の魔女と呼ばれる女性常連客、高江、アナ、芙美子を呼ぶ。しかし陽介が料理に失敗してしまい試食会を延期することに。3人を見送る正輝は芙美子の指輪について尋ね、彼女の秘密を見抜き、確かめるために芙美子が勤める美容院に正輝と隆一は向かう。

 試食会を無事終えた店にパグを連れた女性がやってきてキッシュが食べられるか尋ねるが、伊勢はキッシュは作らないため断る。その話を聞いた伊勢は血相を変えてマドカと叫びながら女性を追いかけるが見つからなかった。


「キッシュ・ロレーヌ」

 女性の一件があって以来、伊勢の様子がおかしくなる。隆一たちギャルソンは伊勢のことを心配し、女性が連れていたパグを手掛かりに女性を探し始める。ペットショップで女性が連れていたパグが見つかり、女性の名前と住所も判明する。隆一は彼女のやっているピアノ教室へ行き、伊勢との関係を尋ねる。彼女浅井小百合は、伊勢と昔の彼女マドカ、二人が飼っていたエルキュールと言う名前のパグ、二人が別れた理由などを隆一に話し始める。

 

 これもAmazonからのオススメ。冒頭イケメンで個性的なギャルソンたち、おしゃれな料理が登場、いかにもジャニーズ系がドラマ化しそうな話になりそうだったため、これは選んだのが間違いだったかと思ったが、読み進めるとなかなか面白かった。

 美味しそうな料理とイケメンたちに惑わされるが、メインは店に来た女性客たちの悩みの解決であり、どの話もいかにもありそうな問題ばかり。それを店の皆が協力して解決していくという展開で意外に?ハートフルな内容だった。

 サブストーリーとして、主人公隆一の舞台俳優になる夢やオーナー伊勢が犬を苦手とする理由やキッシュを作らない理由が語られる。どのサブストーリーも最終話で解決される、この手の本にありがちな展開ではあったが。

 サブストーリーは解決してしまったが、シリーズ化されあと2冊刊行されているらしい。この展開であれば続きも読んで見たいと思う一冊。