スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 朝食フェスと決意のグヤーシュ 友井羊

●スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 朝食フェスと決意のグヤーシュ 友井羊

 前作に続きシリーズ第7作。理恵は新たな仕事、朝活フェスの担当者となり、フェスに向けて準備に奔走する。そしてフェス当日、思いがけない事件が起きる。以下の5編+1からなる。

 

「優柔不断なブーランジェリー

 話題のパン屋ブーランジェリー・キヌムラにフェスへの参加を打診し、良い返事がもらえていたが、間近になって店主絹村が参加をためらうようになる。理恵はその理由が、絹村が婚約している女性、西村久仁子の元夫に関係していることを知る。久仁子の息子海緒とも知り合った理恵は、絹村の周りで起きた事を麻野に相談する。

 

「鶏の鳴き声が消えた朝」

 フェスに出店予定の弁当屋いなだ屋を訪ねた理恵。店の地主である梅ヶ辻が飼っているニワトリが姿を消すという不思議な事件が起きる。いなだ屋の店主稲田から相談を受けた理恵は、梅ヶ辻が考える容疑者でありいなだ屋の常連である3人、女子高生綱島、トラック運転手酒川、サラリーマン岡上と店で話をする。しずくに来た稲田の話を聞いた露は父麻野に稲田の相談に乗ってあげればと話す。麻野は話を聞き、ニワトリが行方不明になった理由を推理する。


「骨董市のひとめぼれ」

 フェスのトークイベントに人気ブロガー、メイが出演することに。メイは骨董市で手に入れた調理器具について、売主が縁起が悪い品だったと話していたことを聞く。その後、その器具で調理したメイは不思議な現象を経験、さらにその料理を食べたメイは体調を崩してしまう。理恵は麻野に相談し、真実を見抜いてもらう。


「壊れたオブジェ」

 理恵は露と雑貨店に行く予定でカフェで待ち合わせをするが、先についた露が店のオブジェを壊したと疑いをかけられてしまう。理恵は麻野に相談、すぐに店に来ることが出来ない麻野のために現場の写真を撮影する。写真や状況を聞いた麻野は真相を見抜く。


「朝活フェス当日」

 フェス当日、近所で宝石泥棒が発生。理恵は会場内の見廻りをしていたが、迷子や落し物などいくつかの事案に遭遇する。一つ一つ対応していたが、しばらくして会場内のトイレや駐車場の案内板にイタズラがされ始め、会場内は混乱し始める。休憩時間になり麻野のスープを飲みながら休んでいた理恵は麻野に話をすると、麻野は落し物係の場所へ急行する。そこで落し物を奪おうとする男と対決することに。


「麻野と理恵の謎解きカフェごはん」

 理恵は麻野とカフェでランチをしていた。店のオーナーである麻野の知り合い山田は亜麻仁油共同購入を麻野に持ちかけるが、話を聞いた麻野はその亜麻仁油に疑問を持ち始める。

 

 前作でも書いたが、前々作で麻野の母親が登場し、理恵と麻野の仲が進み、次作で二人がゴールインかと思いきや、前作はシリーズの流れを逆手に取った見事なトリックで読者の目をごまかした本シリーズ。

 今度こそ二人の仲に進展があるだろうと思っていたが、本作は全体通して、理恵の新しい仕事である朝活フェスの話に。1話から3話までが、フェスの参加者に起こった事件を理恵が麻野の力を借りて解決し、フェスに気持ちよく参加してもらう、という展開。4話はフェスに関係ない事件かと思いきや、会場探しに困っていたフェスの会場を提供してくれる人と知り合う事件に展開する。そして最終話5話はフェス当日の話。

 ちなみに6話は3分で読めるシリーズに掲載された作品のため、本作の流れとは直接関係なし。

 

 前作のメインが大掛かりなトリックを使ったものだったが、本作については通常運転。読んでいれば怪しい点がわかりやすいものが多かったが、「鶏の〜」のニワトリを拉致?したかった理由がなかなか新鮮だった(笑 そこまでするか、というものだったが、当事者になればそれも仕方なしか。

 「壊れた〜」は、このシリーズでは珍しく麻野の娘、露が一方的に疑いをかけられる話。店員たちの態度も読者にとっては苦々しく思うが、麻野があっさりと真相を見抜き一安心。「鶏の〜」の梅ヶ辻もちょっと嫌な人物だったが、こちらも最後は爽快感を感じる結末に。

 実質的な最終話である「朝活〜」で、フォントの異なる文字で、とある人物の独白が語られるページがあったが、あれは必要だった?フェスに紛れ込んだ二人のサラリーマン風の姿をした人物がいたため、それを読者にわかりやすくするためのものか?それでもあのページがなくても読者は、似たような人物が取る2種類の行動に気づくと思うけどなぁ。

 

 さて二人の仲は今度こそ進展して行くのだろう。本のタイトルに「決意」の文字があるのだから。そこに期待して次回作を待つことにしよう。