難事件カフェ2 似鳥鶏

●難事件カフェ2 似鳥鶏

 喫茶店プリエールは、季と智の兄弟で経営している。智は元優秀な警部であり、彼の推理力を頼って、県警の直ちゃんが事件を持ち込んでくる。以下の3編+1からなる短編集。

 

「最高の仲間 奇跡の友情」

 学生時代の同級生であり皆東大出のエリートの4人が、別荘に集まった際にそのうちの1人が殺される。それぞれの父親もエリートであり事件が報道されない中、直ちゃんが事件を店に持ち込む。内部犯行とも外部犯行とも思えない事実が明らかになってきて季は困惑するが、智は真相を見抜き、意外な犯人を指摘する。

 

「理想は不存在」

 駅前のトイレで刃物で刺され重傷を負った女性吉崎夏香が発見される。彼女をストーカーしていた男が容疑者となるが、男は被害者発見時の時刻には、被害者が発見された駅とは逆方向の電車に乗っていたことが確認される。被害者を見舞った智は、ある可能性に気づき、真相を見抜くことに。

 

「焙煎推理」

 店の客糸川が自分もカフェを開きたいので相談に乗って欲しいと季と智にお願いしてくる。直ちゃんを含めた3人は彼の店に行くが、その場で出されたコーヒーが変な味がして皆吐き出す。単なるアクシンデントかと思われたが、事件性を嗅ぎ取った智はその事件について推理をし、意外な真相に辿り着く。

 

(挿話)

 プリミエールを偶然発見したと思われる客からの目線で描かれる。兄弟に興味を抱いたその客が店に通い出し、常連になっていくと思われたが…。直ちゃんがプリミエールに持ち込む事件とは別に、県警が追っていた新富士見駅での事件が意外な形で絡んでくる。

 

 前作から7年後に発行された続編。県警の直ちゃんが事件をプリミエールに持ち込み、兄弟がそれを解決するというフォーマットは前作と同じ。

 前作では4話中の後半2話が現実社会での問題をテーマにしていたが、本作では1話2話が同じような展開に。「最高の仲間〜」ではいじめ問題、「理想は〜」では日本人特有の「お騒がせする」ことを避ける一方で「訴えた」人間を叩く文化、に警鐘を鳴らしている。3話と挿話は現実にあったら非常に怖い事件。3話はさすがに行き過ぎの感があるが、挿話はそうと言えないのが現実か。

 事件のトリックについては、前作同様、ちょっと(だいぶ?)無理があるものが多いのは著者の特徴で仕方なし。それよりも本シリーズは、レギュラー3人の会話を楽しむものと思う。1話と2話における直ちゃんの事件への引きずり込み方が強引すぎて可笑しい。

 挿話については、前作が隠れたテーマがあり、短編集ながら長編のような意味を持たせたのに対抗して、本作でも同様なことをしたかったのかと思う。冒頭と各話の間に本編とは無関係に見える話を挿入し、最後にそれが何だったのかが明かされるというもの。本編である3話に関係してくるのかと思いながら気をつけて読んでいると、意外な展開に驚かされる。

 本作ではそれ以外にも3話目で兄である季が弟、智を疑う場面が出てきて驚かされるが、疑いが晴れると同時に弟の秘密が明かされることとなる。どんな秘密かとドキドキさせられるが、実は「そこまででもない」事実でちょっと拍子抜けした、というのが本音だが(笑

 

 蛇足だが、3話目のクイズの答えは「OSAMU」。理由は、正解を入れた各問題の文字列で検索をかければ出てきます(笑

 

 最後のあとがきはいつも通りふざけた文章で笑わせてもらった。前作から7年開いたしまった理由は、描くスイーツがなかったということらしいが、本作では7年間に現れた新しいスイーツを使っている。ということは、今後も世の中に新しいスイーツが登場すれば本シリーズの続編も書かれるということだろう(笑 期待しておきたい。