インビクタス/負けざる者たち

●528 インビクタス/負けざる者たち 2009

 1990年南アフリカ。27年投獄されていたネルソン・マンデラが釈放され、1994年の全人種選挙を経て、大統領に就任する。白人たちは黒人マンデラが大統領になったことを恐るが、マンデラはそれまでいた白人の政府職員に残留を要請する。現場の反対はあったが、大統領SPにも白人を参加させることに。

 その頃南アフリカラクビー代表チームスプリングボクスは国際マッチで負け続けていた。マンデラは試合を観戦、白人がボクスを、黒人が相手チームを応援しているのを目の当たりにする。黒人主導のスポーツ評議会では、アパルトヘイト時代の象徴であるボクスのチームカラーなどの変更を決定するが、そこへマンデラが出向き、赦しを訴えその決定を覆させる。

 マンデラの想いは政府内や家族にも理解されづらい状態が続く。マンデラはボクスの首相であるフランソワを官邸に招き、話をする。さらにマンデラはボクスに黒人少年たちへの指導を依頼。それがニュースとなり国中に知らされる。

 W杯が始まる。低かった前評判を覆し、ボクスは勝ち進む。大会の最中にフランソワはマンデラが27年間収監されていた刑務所を見学。マンデラの赦しの心に感動する。

 チームは勝ち進み決勝戦へ。相手は無敵のオールブラックス。ボクスは善戦し前半終了時点で同点、後半も一進一退の攻防を繰り広げるが、ついにドロップゴール1本の差で勝利、優勝を果たす。

 

 映画を見初めてオープニングロールでイーストウッドの作品だと知った。

 主人公が実在の人物であるため、「ハドソン川の奇跡」を思い出したが、その作品と同様、イーストウッドは無理に盛り上げようとする脚色をするのではなく、実際に起きたことを丁寧に描くことで、映画を完成させている。そしてそれが心を打つ。

 ネットでも多く書かれているが、冒頭の白人少年たちが揃いのユニフォームを着てラクビーをする隣で、黒人少年たちが裸足でサッカーをするシーンが、それだけでこの国の現状を表している。

 それが映画が進むにつれ、マンデラが目指した通り、白人も黒人も一緒になり、チームを応援するという方向に変わっていく。それを描いているのは、これまた冒頭で揉めそうだったSPチームの人々の様子。ラクビーのルールもわからないまま、決勝戦を固唾を飲んで見守る黒人SPが良い。決勝を見守る国民の様子はもちろん、決勝戦場外での警備員と黒人少年の様子の変化も。

 一方で、ウィットも効いている。冒頭の闇夜を意味ありげに疾走するバンが新聞配達であったり、マンデラが秘書や女性職員に語りかけるセリフが粋だったり。圧倒的なのは、決勝試合開始直前の飛行機のシーン。SPを描くことで緊張感を高めておいてのアレは、さすがに大笑いさせてもらった。

 イーストウッドの傑作をまた1本鑑賞させてもらった。