ストラング先生の謎解き講義 ウィリアム・ブリテン

●ストラング先生の謎解き講義 ウィリアム・ブリテン

 オルダーショット高校の教師ストラングは、一般科学担当で既に35年以上教師をしている。彼は素人ながら探偵としての才能があり、ガスリー校長やロバーツ刑事から持ち込まれる事件を次々と解決していく。14編からなる短編集。

 

 これもなぜかAmazonからオススメされた一冊。正直最初の2編を読んで、あまり面白くなかったので、途中で読むのを止めようかとも思ったが、読み進めていくうちに完全にハマってしまった(笑 なぜだろう?

 一つは1話1話の短さ。30ページを超えるものはなく、展開もパターン化されている。事件が起き、ストラング先生に依頼がきて、彼がちょっとしたことから、事件の真相に気づく、という展開。半分以上の話が、彼の勤める学校の生徒が容疑者となっているのも見逃せないか。先生は生徒を信じ、彼らが犯行を犯したはずがないと探偵役を買って出ることが多い。その他にも、友人?ロバーツ刑事からの依頼や先生自身が容疑者になり、その身の潔白を明かすために推理することもあるが。

 読み進めるとハマるもう一つの理由は、先生のキャラはもちろん、周りの登場人物たちのキャラが立っていること。ちょっと偏屈で汚い言葉で文句ばかり言うストラングも魅力的だし、先生の推理力を信じている刑事や、なんだかんだ言ってストラングを頼りにしている校長も良い。

 3話目の「〜グラスを盗む」や4話目の「〜消えた凶器」は、読んでいて結末が予想できた。しかし、すべての話が、ワンアイデアのトリックであり、容疑者も限定されているので、犯人やトリックを見抜くことがこのシリーズの楽しみではないのは、わかってくる。やはり、ストラングが、いかに犯行トリックに気づくかがポイント。

 トリックも「〜先生の逮捕」を除けば、小難しいものはでてこない。私のお気に入りは、「〜証拠のかけらを拾う」と「〜爆弾魔」と「〜ハンバーガーを買う」かな。「〜証拠の〜」は見事なトリックだし、「〜爆弾魔」は推理がキチンと成立している。「〜ハンバーガー〜」は、突然事件が発生して読んでいて驚くが、伏線がキチンと書かれていたことに驚かされる。

 

 1970年代前後に雑誌に1話ごと掲載されていたものを、2010年になって日本でだけ14編をまとめた本書が発行されたようだ。40年ぶりの発行を喜んだ人が多かったのもわかる一冊。先生の短編はまだまだあるようだ。その他の話も単行本化されれば良いのに。