折れた槍

●536 折れた槍 1954

 州刑務所からジョーが3年の刑期を終え出所してくる。彼を待っていた男がデブローを州知事の元へ連れていく。ジョーは州知事から娘バーバラはまだ独身だと告げられ、兄弟たちと引き合わせられる。兄弟たちは、ジョーが服役している間に牧場経営は多角化した、母は部族に帰った、新天地オレゴンで暮らせ、金は出すと言われるが断る。ジョーは実家に行くがそこはさびれていた。ジョーは3年前のことを思い出す。

 父と兄弟四人で牧場をしていたマット家、ジョーは末っ子で、兄たちと異なり、先住民の母の子だった。ある日、牧場の牛が盗まれる。父と共に牛泥棒を探すが、それは兄二人マイクとデニーだった。二人は安い給料で働かされていることに不満だった。父は二人を勘当しようとする。

 その夜マット家に客が来る。州知事とその娘バーバラや友人だった。その場には勘当されたはずの兄弟もいた。ジョーはバーバラと仲良くなる。

 牧場の牛たちが40頭死ぬ事件が発生する。原因は川の水だった。上流にある工場の廃液が理由だと考えた父と兄弟は精練所へ。責任者と言い争いになり一触即発の状態に。工場の従業員も彼らを襲おうとするが、そこへ牧場の仲間たちがやってきて応戦、彼らは工場を焼き払う。法に訴えられた時のことを考え、父はジョーを弁護士のところへ行かせる。ジョーはそこでバーバラと再会、仲を深める。

 父は知事に呼び出され、工場の会社が訴えると言っていることを聞く。父は知事に味方になってくれるように頼むが、知事は良い顔をしなかった。これまでと違う対応の理由を知事に問いただすと、知事は娘バーバラはジョーにやるわけにはいかないと話す。これまで知事に協力してきた父は、先住民の子であることを理由に知事が娘との仲を反対していることに激怒する。一方、ジョーはバーバラと完全に愛し合うようになる。

 裁判が行われることとなり、父は土地を会社側に差し出すことになるが、その前に土地を息子たちに譲渡しておくことに。裁判が始まるが、マット家は不利な状態に。審議休憩中に、父は鉱山の譲渡、賠償金の支払いを促され、さらに誰かが責任を取るために、ジョーを銃を抜いたことを理由に有罪とするように、服役しても短期間だ、と言われる。父は反対するが、そうしないと父親自身がムショに入ることになると言われてしまう。

 裁判が終わり、父は土地を売りジョーを釈放してもらうために兄弟たちにサインをしろと命令するが、長男ベンは拒否する。父は激怒し鞭を振るうが興奮のため倒れてしまう。結果的にジョーは3年の刑に。服役していたジョーは面会に来たバーバラに冷たく対応する。ベンたちは石油会社に土地を売ることに。それを知った父は売らないように命じるが、ベンたちは聞かなかった。父は契約をする兄弟を止めようと重症の体で馬に乗り街へ向かうが途中で死んでしまう。

 ジョーの回想は終わる。実家に母親がやって来て、ジョーに兄たちへの復讐をやめるように話す。ジョーは拳銃を渡す。家を出たジョーをベンが待ち構えていた。ベンはジョーを殺そうとするが、ジョーは逃げる。乱闘となりそれでもジョーは逃げるが、ベンはライフルでジョーを殺そうとする。その時牧場の使用人だった男がベンを撃ち殺す。

 ジョーはバーバラと共に父の墓に行き、そこにあった復讐の槍を折って新天地へ去って行く。

 

 先日「燃える平原児」を観たばかりで、またも白人と先住民とのハーフの子が主人公の話。「燃える〜」は主人公が差別と戦う話だったが、こちらは家族間での争いがメイン。厳しいと父とそれに耐えて来たが父を憎む長男。映画の主人公は末っ子なのだろうが、トレイシーとウィドマークの二人に主役を食われた感じか。

 短い尺の映画だったが、謎めいた冒頭から回想シーンに入りまた元の時へ戻る、という筋書きはこのころの映画では珍しいかも。時代設定も、開拓時代というよりは、工場など会社が出て来ることから西部時代の末期なのか。自分たちの力で問題を解決してきた父の世代と、息子でありながら使用人のように使われたことに反発する長男の世代の世代交代のような感じも受ける。

 なかなか見ごたえのあるストーリーだったが、ちょっとだけ不満な点も。

 冒頭牛泥棒が兄弟の二人の仕業とわかり父が勘当をするが、その直後にその二人は家にいる。確かに父はそのことに怒っているように見えるが、あっさりと見逃してしまうように見える。後半の強権的な父の態度とちょっと辻褄が合わないように思うが。

 もう一つ。ジョーが罪をかぶることになるが、当初の話では短期間で出所できるはずだったのが、3年の刑期となってしまう。おそらく裁判直後のシーンの土地の売買に関すること(ベンがサインしなかったこと)が影響していると思われるが、そのあたりの描写がないので不親切かも。さらに、ジョーの服役中に父が死亡するが、その葬式になぜかジョーがいる。タイトルにも関係する槍が葬式で登場するので仕方ないのだろうが、ここも説明が必要では?ひょっとして当時〜開拓時代〜は親族の葬式には服役中でも参列できたのかしら。

 何れにしても、「折れた矢」や「燃える平原児」など、1950年代から先住民をただの悪者として描かず、先住民と共に暮らそうとした人々を描いた西部劇がこれほどあったとは。