三屋清左衛門残日録 完結篇

●三屋清左衛門残日録 完結篇 2017

 BSフジで放送された時代劇。北大路欣也主演。原作は藤沢周平の同名の短編集。シリーズ化されており、2021年までに5本が放送されている。

 

藤沢周平の原作

 

 

あらすじ(赤字はカッコ内の原作の話にはない部分)

 

(第7話 平八の汗)

 清左衛門は道場で若い土橋と試合稽古を行う。稽古が終わり土橋は清左衛門の若さを褒め称える。

(第5話 梅雨ぐもり)

 また清左衛門は道場で少年たちを教えるようになっていた。

(第10話 草いきれ

 涌井で熊太と飲んでいた清左衛門は、遠藤派の集まりに朝田派の間者が入ったと聞くが、それが誰かはわからないとのことだった。

(第7話 平八の汗)

 涌井から戻った清左衛門は里江から、昼間客があり、それが大塚平八だとわかる。

 後日、涌井で清左衛門は平八と会う。平八は親父の一件のことを聞きたいので、ご家老を紹介して欲しいと頼み、清左衛門は間島家老を紹介する。しばらくして、家に又四郎が帰った時に、平八からの贈り物があるのを見て、やはりと呟く。

(第3話 零落)

 ある雨の日、外出していた清左衛門はある屋敷の門前で雨宿りをする。するとその家の者が声をかけて来る。それは金井奥之助だった。清左衛門は金井の家で茶をご馳走になる。

(第7話 平八の汗)

 屋敷に帰った清左衛門は、又四郎から、平八の息子がしくじりをしたが、間島家老の口利きで大事に至らずに済んだこと、清左衛門の元用人という肩書きは伊達ではないのでご用心をと言われる。

(第3話 零落)

 奥之助が清左衛門の家へやってくる。酒を飲んで過去のことを愚痴る奥之助。遠藤派の集まりに朝田派の間者は自分の息子であり、息子からも相手にされていないことを告白する。里江は奥之助のことで清左衛門を心配する。清左衛門は奥之助に釣りに誘われたと話すと、里江は辞めたほうが良いと止めるが、後日清左衛門は奥之助とともに釣りに行く。そこで、奥之助は清左衛門を海に突き落とそうとし、自分が海に落ちてしまう。驚いた清左衛門は奥之助を助けるが、自分のしたことを後悔した奥之助はもう2度と会わない、一人で帰ってくれと清左衛門に話す。

(第13話 立会人)

 清左衛門は平八を見舞う。そこで平八から過日のことを謝罪される。

(第9話 ならず者)

 清左衛門は涌井で熊太と飲んでいた。その時店でみさの昔の男が騒ぎを起こす。清左衛門が男を懲らしめる。その後涌井で清左衛門はみさと酒を飲んでいた。みさが昔を語り始める。

(第10話 草いきれ

 清左衛門は風邪をひき寝込んでしまう。やっと治ってきた清左衛門は道場へ。

(第15話 早春の光)

 道場で清左衛門は奥之助が死んだことを聞く。そして奥之助の葬式の参列を見送ろうとするが、奥之助の息子から非難を受けてしまう。

(第13話 夢)

 その帰り道、清左衛門は雪の中を彷徨い、なんとか涌井にたどり着く。どてらを着せられ、みさに熱い酒をふるまってもらいなんとか人心地つける。みさの昔話を聞いたその夜、清左衛門は涌井に泊まることに。深夜みさが清左衛門の布団に入ってくる。

(?)

 その頃、江戸では黒田がある屋敷の戸を叩いていた。

(第14話 闇の談合)

 城下に石見守に異変があったという知らせが入る。道場にいた清左衛門は、平松から石見守が毒死されたと聞く。家に現用人の船越が清左衛門を訪ねてくる。船越はすでに朝田家老が石見守を毒殺した証拠を掴んでおり、殿の命令で、明日朝田に伝えに行くのに清左衛門を同行して欲しいと頼みに来たのだった。翌日清左衛門は船越に同行、朝田の屋敷を訪れ処分を伝える。その帰り道、黒田が清左衛門たちを送ると言い出す。そして帰り道の途中、黒田が船越を襲おうとするが、平松が駆けつけ、黒田を倒す。

(第15話 早春の光)

 朝田への処分が下る。熊太が家に来て、城内の風通しが良くなったと話す。途中、熊太は涌井に最近行っているのかと清左衛門に尋ねる。清左衛門は涌井を訪ねる。その帰り、みさが清左衛門を送るためについてくる。そして故郷へ帰ると話し出す。

 清左衛門は平八の家の前を通りかかる。すると庭で平八が歩く習練を始めていた。清左衛門は家に帰り、里江と話をし、釣竿を出してくれと頼む。

 

まとめ

 前作にも書いたように、前作は原作の4話6話11話の3作品のエピソードが使用されていたが、本作は上記の通り、3話7話9話13話14話15話の6作品と、多くのエピソードが使われている(さらに言えば5話10話の一部のエピソードも)。

 多くのエピソードが使用された理由は、本作のサブタイトルが「完結篇」と名付けられたため、最後だと思ったのか?原作の未使用のエピソードをふんだんに取り込もうとしたからだろう。大塚平八、金井奥之助、みさの昔の男の3エピソードまでで、放送時間の半分ほど。残りの半分はみさとの話、そして派閥争いの決着。

 

 随分とバタバタのようにも思えるが、本作の巧妙なところは、話の組み合わせか。平八と奥之助の話をクロスして描くことで、若い頃の知り合いの変化を絶妙に描いている。また、清左衛門の風邪と奥之助の死によるショックから第13話「夢」へ繋げるテクニックは原作を知っているものからしても見事だった。原作よりも、失意の中涌井にたどり着く清左衛門、という姿が自然に見える。

 

 前作のまとめでも書いたが、もともと原作の中で語られるのは、

(1)藩の派閥争い

(2)息子の嫁里江との関係

(3)涌井の女将みさとの仲

(4)清左衛門の若い頃の友人たちとの話

(5)清左衛門に持ち込まれる難事の解決、など。

 本作では、多くのエピソードを使用した結果、(1)から(4)が描かれており、前作に比べると、原作のイメージをそのまま映像化するのに成功している。

 

 しかしご存知のように、この北大路版「清左衛門」はこの後もシリーズ化されることになった。原作のエピソードを多く使ってしまったが、次の作品でどのようにしていくのか、そこも一つの楽しみである。