徳川埋蔵金はここにある 歴史はバーで作られる2 鯨統一郎

徳川埋蔵金はここにある 歴史はバーで作られる2 鯨統一郎

 バー「シベール」で繰り広げられる4人の歴史談義。常連村木老人、歴史学者の喜多川と助手安田、バーテンダーのミサキ。ミサキと村木老人が、奇想天外な歴史解釈をし始め、それを喜多川と安田は論破しようとするが…。シリーズ第2作。以下の4編からなる短編集。

 

 ミサキ達による新説は、

「竜とドラゴンは別の生物」〜西洋のドラゴンと東洋の龍は別の生き物が起源

「サルでも判る応仁の乱」〜複雑だとされる応仁の乱の単純で、勝者は織田信長

「遠い国から来た天草四郎」〜天草四郎は架空の人物で、高山右近が名乗ったもの

徳川埋蔵金はここにある」〜徳川埋蔵金は群馬などにはなく、兜神社の地下に

 

 先日読んだ「文豪たちの怪しい宴」と同様、鯨統一郎氏のバーシリーズの最新作のうちの一つ。あちらは文学をテーマにしたものだったが、こちらは鯨氏得意の歴史もの。前作であるシリーズ第1作は3年前に読んでいるが、正直内容についてはあまり覚えておらず、ガッカリした感だけが記憶に残っている。

 残念ながら本作も同じ結果だった(笑 自分のブログでは

 

 鯨統一郎、歴史、バーとくれば、当然デビュー作「邪馬台国はどこですか」を期待する。しかも新シリーズっぽいので、超期待して読んだが全くの空振り。

 一つ一つの謎解きがそれほどでもないこと、大学教授の生徒である学生安田の語りが共感できないこと、バーテンダーが魅力的でないこと、など「邪馬台国〜」の超劣化バージョンとしか思えない。どうしちゃったんだろう?

 

と書いている。それでも一応、前作との違いを書いておく。

 本作の語り部である安田の言葉遣いはだいぶ修正されたように思う。心の中の言葉がだいぶマシになったというか、なんというか。それでもウザく感じる場面はあったが。

 また前作の内容をネットで見ても何一つ思い出せないが、本作の1話目、「龍とドラゴン〜」については、少し鯨氏らしさを感じられた、という気もする。龍の甲骨文字には足があった(龍のモデルはワニ、ドラゴンはヘビという解釈)、龍と水は親和性があるが、ドラゴンと水には親和性がない、とかなどは興味深かった。

 高橋克彦氏の著作で、西洋のドラゴンと東洋の龍の違いが述べられているのを読んだことがあるが、あちらは宗教がらみだったと思う。そちらに触れずに、龍とドラゴンのモデルの違いに言及したのはちょっと評価できると思う。

 話の展開としては最終話である4話で意外な展開があったが、それについても詳しくは書かれずじまい。ちょっと思わせぶりなエンディングではあったが、これで続編があり得るのか。同じ鯨氏の桜川東子シリーズの終盤の作品「テレビドラマよ永遠に」では、その前作終わりに起きたことを覆すとんでもない展開、トリックがあったことだし、油断はならない。