大人は判ってくれない

●546 大人は判ってくれない 1959

 学校の教室での授業中、男子生徒たちが女性の写真を回しあっていたが、ドワネルだけが教師から叱られ立たされることに。ドワネルは腹いせに壁に落書きをするが、それもチクられてしまい、さらに叱られることに。

 翌日登校を一緒にする親友から誘われ、学校をサボって街で楽しむドワネル。途中、母親が男性とキスしている場面を目撃する。帰りに学校を休んだ理由を作らなければいけないドワネルは、親友から欠席届を偽造すれば、と提案され家で書こうとするが、家事の手伝いなどがあり、書けないままだった。

 翌日教師に昨日の欠席の理由を聞かれたドワネルは、母親が死んだと嘘をつきその場をしのぐが、両親に昨日ドワネルが休んだことをチクった同級生がいたため、両親が学校に来てしまう、嘘がバレてしまう。

 下校途中、家に帰れないと話すドワネルに親友が自分の家の工場で寝泊まりするようにアドバイスする。翌日親友と学校へ行くが、家に帰って来なかったドワネルを心配して母親が学校に来て、ドワネルを連れて帰る。優しくしてくれる母親は、作文で良い成績を取ったらお小遣いをあげると約束する。その夜、ドワネルはバルザックを読み、彼の虜になる。そして彼の写真を飾りロウソクに火を灯すが、それが原因でボヤを出してしまう。怒る父親だったが、母親は家族で映画を観に行くことを提案。家族3人で楽しく映画を見るのだった。

 ドワネルは作文を書くが、それは作家バルザックの文章の写しだったため、また教師が激怒する。しかしドワネルは盗作とは認めず、教師から停学だと言われてしまう。親から常々軍隊学校へ入れると言われていたドワネルは、家に帰るわけにいかず、またも親友を頼り、彼の家で寝泊まりすることに。自立したいドワネルは金が必要だと考え、父の会社のタイプライターを盗むことに。盗みは成功するが、それを売ることができず、タイプライターを返しに行くが、そこで捕まってしまう。

 父に警察に連れていかれ、父は鑑別所送りするように警察に頼む。母親も同調しドワネルは鑑別所に行くことに。鑑別所に行ってもドワネルの態度は変わらなかった。そこでドワネルは家庭環境などを話すことになる。ある時母親が面会に来て、ドワネルにお前を引き取るつもりはないと宣告して帰って行く。ドワネルは屋外でのサッカーの最中に隙を見て脱獄、ひたすら走り、海へたどり着く。

 

 タイトルは有名なので昔から知っていたが、今回が初見。子供、少年を主人公にした映画には傑作が多く、これも名作とされている1本だが、どうも共感できなかった。

 ドワネルは、学校や家庭でどれだけ叱られてもその態度を変えることはなかった。さらに留置場や鑑別所でも悲しんだり不安になった態度は取らなかった。映画後半になると、母親のドワネルに対する思いが明らかにされ、それまであったシーンも含め、ドワネルの一連の態度の理由がわかる。

 親や教師に何を言っても信用もしてもらえず、話も聞いてもらえない。前半、母親の不倫現場を目撃するシーンがあるが、それは最後まで触れられないまま。ひょっとすると、最後の鑑別所での母親の面会シーンで話の出た、ドワネルが父に書いた手紙にそのことが書いてあったということかもしれないが。最後まで観て思ったのは、母の不倫は相当な事件なのだが、ドワネルにとっては、どうでも良いことだったんだろうということ。

 でもなぁ。それでも共感はできなかったなぁ。wikiによれば、監督の自伝的な話のようなので(映画好きという一面が鑑別所で明らかにされる)、脚本というよりはそちらの面が強いのかもしれないが。それでも印象に残ったのは、教師からの不条理な罰を受けても、留置場でも、親に見捨てられても、感情を動かさなかったドワネルが護送される車の中から夜の街を見て涙を流すシーン。説明はできないが、これが自伝的な話だとすると、リアルさを感じさせる。

 教室での教師の態度、ドワネルの家の様子、学校での屋外授業から抜け出す生徒たち、子供を見捨てる母親、など当時のフランスでの当たり前の風景だったんだろうか。共感はできなかったが、一度観たらちょっと忘れられなくなる一本だった。