三屋清左衛門残日録 三十年ぶりの再会

●三屋清左衛門残日録 三十年ぶりの再会 2019

 BSフジで放送された時代劇。北大路欣也主演。原作は藤沢周平の同名の短編集。シリーズ化されており、2021年までに5本が放送されている。

 

藤沢周平の原作

 

 

あらすじ(赤字はカッコ内の原作の話にはない部分)

 

(第2話 「高札場」)

 清左衛門は釣りに行き、そこで安富源太夫と再会、酒を一緒に飲もうと誘われる。家に帰った清左衛門は里江に源太夫のことを話し、子供の頃を回想する。

 

 OP

(第13話 「立会人」)

 涌井に清左衛門、熊太、源太夫、小沼が集まり酒を飲む。もう一人、中根が来るはずだったが、病のため来られなくなったと平松が店に告げに来る。皆は平松に中根の代わりに飲んで行くように誘う。妻を亡くしたと語る小沼は昔話を始める。中根の話題となり、中根は道場の先代の後継者争いの試合を納谷甚之丞としており、それは同時に先代の娘杉乃を賭けた勝負でもあった。試合に勝った中根は杉乃を娶り、道場も継ぐことになった。負けた甚之丞は離藩しその後行方知らずになっていた。

 宴はお開きとなる。源太夫は皆に改めて礼を言い、別れを告げ去って行く。

 

(第8話 「梅咲く頃」)

 清左衛門は塾の帰りに安西左太夫と一緒に帰る。そこで鉄砲の名手と言われた安西からその師匠の猪狩りの話を聞く。

 

(第2話 「高札場」)

 夜、家で清左衛門は又四郎から、源太夫が腹を切ったことを聞く。熊太が家にやってきて、源太夫切腹をした理由について話し合う。切腹の時に女の名前を叫んだという話もあるが、安西家が源太夫のことを隠したがっているため、真相は不明だった。清左衛門は、源太夫切腹した理由を調べ始める。

 その場にいた足軽から源太夫が「もよ」という名前を叫んだと聞く。清左衛門は道場へ。中根は平松と厳しい稽古をしていた。清左衛門は中根と源太夫のことを話し、源太夫が中根道場に来た経緯、その前に通っていた市村道場のことを聞き出す。平松が市村道場で源太夫と親しかった笹原の名前を聞く。

 清左衛門は笹原に会いに行き、源太夫と親しかった女性の名前が「友世」だと教えてもらう。二人は夫婦約束をしていたが、源太夫は安富家に婿養子に入ってしまった。友世は婿をもらって2年足らずで若死にしてしまったとのことだった。清左衛門はなぜ今になって源太夫切腹をしたのかと思うが、笹原は源太夫が家で厚遇されていなかったと話す。笹原と別れた清左衛門を武士たちがつけていたが、清左衛門は友の死の理由を探っているだけだと追い払う。

 涌井で清左衛門は熊太に源太夫のことを話す。みさは、出世のために自分のことを捨てた男のことを女はいつまでも想うことはないと話す。

 

(第8話 「梅咲く頃」)

 塾の帰り、清左衛門は安西から妻とは離縁していると聞く。家に帰った清左衛門に女の客が来ていると里江が告げる。それは江戸屋敷に勤めていた時に知った松江だった。松江が国元に帰って来た理由を尋ねると縁談だと言う。相手は野田平九郎平九郎という松江の2つ年下の男だった。清左衛門は縁談のことを喜ぶ。松江が帰ったあと、清左衛門は里江に松江のことを話して聞かせる。松江は江戸屋敷で村川という男に騙され自害をしようとした。清左衛門は松江を見舞い続けたが松江は生きる気力を失っていた。ある時清左衛門は梅の枝を持って松江を見舞う。梅の枝と見た松江は涙を流しつつも元気を取り戻し始めたのだった。

 夕食の際、清左衛門は野田のことを又四郎に尋ねる。野田家は無尽の不正をしたことがあり、今は借金で火の車だとのこと。清左衛門は野田家のことを松江に話す。野田家の狙いは松江の持参金400両だったことが判明、松江は今回の縁談は断ることに。

 塾帰り、清左衛門は夜道で野田平九郎に襲われる。斬り合いになるが、安西が助けに入る。清左衛門は野田を叱りつけ帰らせる。そして安西に離縁の理由を尋ね、嫁をもらわないかと話す。涌井で清左衛門は安西と松江を引き合わせる。安西は自分が作った梅干しを松江に勧める。

 

(第10話 「草いきれ」)

 その頃、清左衛門はみさと酒を飲んでいたが、そこへ小沼がやって来る。小沼は清左衛門を家へ誘う。道中、小沼は源太夫のしたことをバカにする。たどり着いたのは、小沼が囲っている若い妾の家だった。そこで小沼は清左衛門にいろいろと話をするが、清左衛門は若い妾を見て呆れるのだった。

 

(第2話 「高札場」)

 小沼のことがあり、清左衛門は道場で激しい稽古をする。そこで平松から、笹原が友世と親しかった女が見つかったと言って来たと話す。清左衛門は彼女に会いに行く。友世は源太夫と別れたばかりの時は落ち込んでもいたが、その後婿をとり、その婿に夢中だったとのこと。涌井でみさと話した清左衛門は、実のない男のことなど女は心に留めていないと聞かされる。そこへ熊太がやって来る。遠藤家老が朝田派を倒すつもりだとのこと。一方。朝田家老も遠藤家老や清左衛門のことを気にしていた。

 

(第13話 「立会人」)

 家に中根がやって来る。中根は甚之丞との果し合いの立会人を頼みに来たのだった。甚之丞は長年の修行でやっと中根を打ち負かす技を身につけたのだろうとのことだった。清左衛門は立会人を引き受ける。そして当日3人が道場へ集まる。木剣による戦いが始まり、中根は甚之丞を打ち負かす。清左衛門は甚之丞に手当てをするように言うが、甚之丞はそのまま去って行く。

 

 家で熊太を迎えた清左衛門は甚之丞の一件を話す。熊太は里江の出した羊羹を美味しそうに食べる。

 涌井で清左衛門は安西に会う。安西は松江と結婚することを報告する。安西が帰ったあと、清左衛門はみさと酒を飲みながら、安西と松江が幸せになることを願う。

 家に帰った清左衛門に里江がお茶を出す。清左衛門は残日録を書き、後日、妻喜和の墓参りをするのだった。

 

 

まとめ

 シリーズ第3作となった本作。前作を完結篇と銘打ってしまい、その続きをどうするのかと思っていたが、まるで何事もなかったかのように、話を続けている(笑

 本作は原作の中から、2話8話13話のエピソードをメインにし、前作で少しだけ使用した10話の小沼のエピソードも使っている。これにより、原作でメインとなるエピソードが未使用なのは、1話5話12話となる(12話は涌井に泊まり込む清左衛門に寝床にみさが入って来るエピソードがあるが、これは前作で使用済、ただし12話のメインは清左衛門の過去のある言動に対する後悔がメイン?)。

 本作は第1作と同様、3つのエピソードを使用しているが、1作と異なり、前作のように3つの話を上手く絡めながら話が進む。

 

 さらに、原作にはない部分を広げることで話に奥行きを持たせている感じもする。

 原作(第2話)では実は源太夫は登場しない(切腹をした後の話となるため)。本作では、釣りの現場で清左衛門と源太夫を引き合わせることで(原作では、釣りの場で清左衛門と源太夫があった、ということのみ触れられている)、さらに涌井での宴へ展開、その場に「第10話」の小沼も登場させるというテクニックを使っている上、その場での会話に中根の昔の後継者争いの話をさせることで、第2話と第13話の2つのエピソードが上手く絡んできている。

 第8話も同様。安西の話を広げ、松江との結婚話の顛末まで本作では扱っている(原作では、清左衛門が安西に松江との結婚を勧める場面で終わっている)。

 前作で店から去ったはずの涌井のみさも登場(笑 みさの出番を増やすために(?)、源太夫に対する友世の件や安西と松江との結婚の件で、みさに語らせているのも上手かった。

 

 前作のまとめでも書いたが、もともと原作の中で語られるのは、

(1)藩の派閥争い

(2)息子の嫁里江との関係

(3)涌井の女将みさとの仲

(4)清左衛門の若い頃の友人たちとの話

(5)清左衛門に持ち込まれる難事の解決、など。

 本作では(4)(5)がメインとなり、前作で決着済みの(1)については少しだけ触れる形となった。(2)(3)もないわけではないが、サブタイトルが「三十年ぶりの再会」となっているためか、(4)に重きを置いているように見える。源太夫の30余年前への想い(見事な勘違いだったが 笑)、中根に対する甚之丞の30年の想い。

 

 さて、原作で残ったエピソードは3つ、実質2つとも言える。現時点でシリーズはあと2作あるのだが、どのように展開するのだろう。