男の作法 池波正太郎

●男の作法 池波正太郎

 「鬼平犯科帳」の池波氏が作法について、口頭で述べたものをまとめた一冊。

 この本を原作としたネット漫画を読む機会があり、なかなか面白かったので、原作本である本作を読むことに。

 

 結構な序盤で語った文章がやはり「鬼平犯科帳」を彷彿とさせるものだった。

 

 人間とか人生とかの味わいというものは、理屈では決められない中間色にあるんだ。つまり白と黒の間の取りなしに。その最も肝心な部分をそっくり捨てちゃって、白か黒かだけですべてを決めてしまう時代だからね、いまは。

 

 「鬼平」の中で散々語られた、『人間は善いことをしながら悪いことをする、悪いことをしながら善いことをする』という言葉と同義だろう。

 さてこれは面白くなるな、と思い読み進めたが、ちょっと引くぐらい古い考え方でビックリ(笑 文章の中で氏が57歳と語っているのをみると、これは1980年に語られた言葉であり(氏は1923年生まれ)、今から40年前のもの。さらに、「作法」として語っている内容は、40年前の世相に合わせたものではなく、その20、30年前はこうだった、という内容。つまり、この本で語られている、昔はこうだったの「昔」は今から60年から70年前〜昭和20年から30年の頃のこととなる。古くても仕方なしか。

 

 食べ物屋での振る舞い、おしゃれ、男女のこと、親との関係、死について、など多くのことについて、池波氏が語っているが、現代では当たり前になっていることもあれば、現代ではいわゆる炎上するであろうことまである。炎上部分は除くと、40年前には意外に先進的な考え方だったのかもと思わせる部分もあるということか。

 

 ネットの漫画は、随分と現代に合わせるために苦労したんだろうなぁと思う一方で、現代でもヒントとなることも多い一冊だったのかと感じた。