日曜日の万年筆 池波正太郎

●日曜日の万年筆 池波正太郎

 池波正太郎さんが週に1度の連載として書いたエッセイ51編をまとめたもの。

 

 池波正太郎さんの「男の作法」を読んだが、マナーや作法がテーマということで正直時代的に少し違和感を感じる内容だったので、普通のエッセイを読んでみることに。

 しかしテーマが一般的なものになってもやはり違和感を感じるのは同じだった(笑

 テーマは様々であり、一般的なエッセイがそうであるように、現在進行形での話から過去、子供時代や青年時代の思い出にまつわるものまで。食、新国劇に関するものが多いようにも思うが、思い出話も多い。また「男の作法」と同じテーマで書かれているものもある。

 違和感の正体を考えてみたが、一つは「勘違い」が良い例になると思う。

 

 この話では、冒頭戦時中の芸能人の慰問団のことが触れられる。実はトラックで案内する兵士が迷ってしまい敵国の領地の中を進んだが、ヒヤヒヤしながらもなんとか無事に到着。しかし当の芸能人たちはそのことを知らずにのんきにしていた、というもの。続いてあげられるのが、入院した人の見舞いについて。入院した人にだいぶ世話になった人が、一切見舞いに来ず、悪評がたつ。しかし実際にはその人は毎日水垢離をしていた、というもの。

 この二つの事例を挙げておいて、最後に著者本人が浅草で知り合いに出会い手を振ったが無視された、その理由が著者の風貌がだいぶ変わってしまったことのためだろう、という結末。

 うーん。そうか、としか言いようがない。

 

 以前向田邦子さんのエッセイを読んだが、あの時の感動とは程遠い。「父の詫び状」での一つひとつの話のキレ具合がいかに素晴らしかったかがよくわかる。

 まぁ好みの違いなんだろうけど。