舟を編む

●567 舟を編む 2013

 1995年。玄武書房の荒木は辞書編集部にいたが、定年が間近に迫っていた。辞書編集責任者の松本は荒木の定年を残念がる。荒木は後任を探し、部下の西岡の勧めもあり、営業部にいた馬締を辞書編集部に異動させる。

 辞書編集部は新たな辞書大渡海を作ることに。馬締は辞書作りに興味を示し始めるが、辞書作りにうなされる夢も見ることに。馬締が下宿する家に、高齢の大家と同居するために香具矢が一緒に住むことに。馬締は彼女に一目惚れをする。同僚のアドバイスや大家タケの助けもあり、馬締は香具矢とデートをする。会社では荒木は退職をする。

 大渡海の製作が中止になると噂が出る。西岡は先手を打って、辞書の原稿依頼を専門家に発注、その噂が出回り、製作中止は免れることができたが、売り上げに貢献しないという理由で、辞書編集部から1名外れることになる。西岡は自分が異動になることを選択、後のことを馬締に任せる。香具矢に書いたラブレターのことで馬締は怒られるが、素直な気持ちを打ち明けることで二人は付き合うことに。

 12年後の2008年。馬締と香具矢は結婚、退職した荒木も嘱託として職場に復帰していた。大渡海の製作は大詰めを迎えていた。久しぶりの新人岸辺も配属となる。しかし松本の体調が悪い状態が続く。馬締は製作を急ぐが、単語の欠落が見つかってしまい、仕事をもう一度やり直すことに。そんな中、松本が入院。辞書完成の前になくなってしまう。

 翌年辞書は完成、披露パーティーが行われる。松本の死に間に合わず落ち込む馬締に荒木が松本の手紙を見せる。そこには荒木や馬締への感謝の言葉が記されていた。

 

 数年前に観た記憶があり、ざっくりとしたストーリーを覚えていたので気楽に観ることができた。

 映画ではこのような全く知らない世界を覗くことができる1本があるが、まさにこれはそんな1本。辞書作りの難しさ、時間であったり作業量であったり、が本当によくわかる。終盤、新たに配属された岸辺が辞書作りに時間がかかることに驚き、今まで何をしていたのかと問う場面は、そこまでで辞書作りの大変さを画面で見てきた観客にとっては笑い話なのが可笑しかった。

 作品のテーマも良かったが、出演者の配役が絶妙。口下手だが真面目な馬締に松田龍平。退職するために彼を見出す荒木に小林薫。お父さんの松田優作と「それから」で共演してから約30年後の息子との共演。どんな感じだったのだろう。

 まだ売れる前の黒木華、馬締の上役オダギリジョー派遣社員伊佐山ひろ子。これだけでも豪華なのに、ベテラン陣もスゴい。大家の渡辺美佐子、松本教授に加藤剛、その妻の八千草薫

 久しぶりに邦画の実力を観た、という一本。