招かれざる客

●568 招かれざる客 1967

 空港にカップルが降り立つ。男性は黒人のジョン・プレンティス、女性は白人のジョアンナ・ドレイトン。二人はジョアンナの母親が経営する店へ行き、母親に会おうとするが留守だった。店員に伝言をし、ジョアンナの家へ向かう。

 ジョアンナの家へ着くと間も無く母親クリスティが到着。母は娘が黒人と結婚をしたがっているのを聞いて驚く。そこへジョアンナの父マットも帰ってくる。父はライアン神父とゴルフの約束をしていたため、すぐに出かけようとするが、ジョアンナが黒人と結婚したがっていることに気づき、ゴルフの約束を取りやめる。

 マットとクリスティが困惑する中、ジョンは二人に両親の反対があるならば結婚は諦めると宣言する。マットは秘書にジョンのことを調べさせていたが、ジョンは優秀な医師であることが判明する。

 家にゴルフを断られた神父がやってきて事情を聞く。神父はジョアンナの結婚話喜び祝福するが、父マットが反対していることを非難する。マットは新聞社の経営者であり、差別と戦ってきた人間だったため。母クリスティは神父を夕食に招くことに。

 ジョンは夜の飛行機で次の仕事場であるジュネーブに行くことになっており、それまでに結論を聞きたいと話す。マットとクリスティは困惑していたが、母クリスティは結婚に賛成、父マットは反対の立場だった。

 ジョンが両親に電話をし結婚のことを話すと、ジョンの両親が息子の結婚相手に会いたいと飛行機でやってくることに。ジョアンナはそれを聞き、家での夕食に招待する。

 ジョンの両親が家にやってくる。父親同士、母親同士が相談をする中、ジョアンナはジョンと一緒にジュネーブに行くことにし、荷物を詰め始める。

 マットは神父から改めて説教をされるが、結婚に反対であることに変わりはなかった。しかしジョンの母から、若い頃の男性と年老いた男性が変わってしまうという話を聞き、考えを改める。

 マットは皆を集め、二人の結婚には困難が待ち構えていること、しかし二人の気持ちがあればそれを乗り越えらえるということを話し始める。

 

 タイトルは有名な言葉であり、推理小説などにも使われる言葉。しかしこの映画のことは全く知らなかった。

 アメリカの60年代の黒人差別を描いた「グリーンブック」を先日見たばかり。あちらは1962年が舞台だったが、本作もそれと同時期を描いたものと思われる(映画の公開は1967年)。

 映画はほぼ全てがドレイトン家の中で繰り広げられる会話劇と言って良い。テーマは白人と黒人の結婚、というストレートのもの。カップルのそれぞれの父が反対、母が賛成という中、ドレイトン家のメイドの黒人女性が、同じ黒人であるジョンを敵対視するのが、あまりにリアル。差別の中で戦ってきた彼女の思いがよくわかる。

 女性の父がリベラルを謳う新聞社の経営者という設定、男性が非常に優秀な医師という設定などが、二人の幸せな結末を予感させてくれるが、それでもこれだけの反対があるというのが、本当のところなのだろう。「グリーンブック」でも天才ピアニストである主人公が差別されて当然の世の中だったのだから。

 ラストのマット(スペンサートレイシー)の演説が圧巻。まるでミステリの最後に謎解きをする名探偵のごとく、だった。トレイシーといえば、このブログでは「花嫁の父」を観ているが、あちらでも娘が結婚してしまう父親役だった。この俳優さんはこの役が当たり役なんだろうか。

 全体通して、数少ない登場人物だったが、演説にメイドを巻き込むのも見事。中盤で母親が経営している画廊の従業員をあっさりクビにするのも見事だったが。

 良い映画を観た。知らない名作はまだまだあると実感。