●737 ア・フュー・グッドメン 1992
キューバのグアンタナモ基地でサンテイアゴ一等兵が死亡する事件が発生。それを知ったギャロウェイ少佐はコードR(レッド)が発令されたのではと推測、自ら被告であるドーソン上等兵とダウニー一等兵の弁護士になりたいと志願する。しかし上官はキャフィ中佐を指名、彼は司法取引でこれまでも多くの事件を解決してきていた。ギャロウェイはキャフィとその補佐となるサムの3人で基地へ。
基地の司令官であるジェセップは海軍の規律を重視する男。死亡したサンティアゴは訓練に根をあげ転属を希望する手紙を出しており、転属が叶うならドーソンが行なった発砲事件のことを話すという条件まであげていた。それを知ったジェセップは直属の部下であるケンドリックにコードRを発令していた。同席していた副司令官マシューはそれを黙認していた。
3人は被告の二人と面会。キャフィは検察側のロスからケンドリックが皆にサンティアゴには手を出すなと命じていたと聞かされる。
3人は基地へ。ジェセップと面会し話を聞く。最初は協力的な態度を見せていたが、ギャロウェイが細かい点を聞き出そうとすると、彼は高圧的な態度に変わりキャフィに口の利き方を注意するように話す。
ワシントンに戻った3人に副司令官だったマシューが行方不明になったと連絡が入る。3人が被告と再度面会し、キャフィは早速司法取引を持ちかけるが、ドーソンは命令に従ったまでだとそれを拒否する。司法取引ができないと悟ったキャフィは弁護士を降りると言い出すが、ギャロウェイがそれを止めようとする。
裁判が始まる。キャフィは弁護士として出席する。証人喚問が行われ、被告に不利な証言ばかりが出てくる。キャフィはそれを覆そうとするが、被告に有利な証拠は何もなかった。そんな時、行方不明だったマシューがキャフィの前に現れ、真実を述べる。キャフィは被告の無実を確信する。
被害者の転属命令が出されたことについて調べ始めるが、書類はすでに偽造されており証拠とはならなかった。キャフィはマシューを証人として裁判に出そうとするが、それを聞いたマシューは自殺をしてしまう。さらに検察側の尋問により、ダウニーがコードRを直接聞いていなかったことが暴露されてしまう。キャフィは打つ手がなくなったこと、マシューの自殺を知ったことで自暴自棄となりダウニーの証言が間違っていたことに気づかなかったギャロウェイを非難する。部屋を出て行くギャロウェイ。しかしサムはキャフィにこの裁判に勝てるのはお前だけだと話す。キャフィはギャロウェイに謝罪し、ジェセップを証人喚問すると話す。しかし士官であるジェセップを疑うことは裁判に負ければキャフィの身を危うくすることを意味していた。
裁判にジェセップが証人として出席する。キャフィは転属命令を受けたはずの被害者がその準備を全くしていなかったことを指摘するが、ジェセップは動揺をせず受け答えする。キャフィは絶対的権力者でありその命令に全員が絶対服従するはずのジェセップが、被害者の危険性を考慮して転属させたことの矛盾を指摘。さらに大声でジェセップを問い詰め始める。怒り始めたジェセップは興奮し、自らコードRを発令したことを叫んでしまう。その証言によりへせっぷは逮捕され、被告たちは無罪を勝ち取る。しかし被告たちには除隊命令が出てしまう。ダウニーはそれに対して怒るがドーソンは自分たちは弱いものを守るべきだったとダウニーに告げる。キャフィはそんなドーソンを称賛、それを受けてドーソンはキャフィに最敬礼をする。
「ケイン号の叛乱」を観たばかりで、同じ軍の裁判モノということで鑑賞。140分弱の長尺だったが、ラストのオチが良かったのでまぁ良しとする(笑
しかし2つほど不満。
一つは裁判のポイントのわかりにくさ。
「ケイン号〜」はラスト30分ほどが裁判シーンだったが、本作は映画冒頭から終わりまでずっと裁判。そのためかこのシーンは何のためにあるのかと思うシーンがいくつかあった。裁判途中ギャロウェイが執拗に発言を繰り返すシーン。その後サムにそれを窘められるが、あれは何だったのか。弁護側が勝てる要素を全く見出せず焦っている、ということを示したかったのか。その後のサムの本音を聞き出すシーンも同じ。サムは弱い者イジメが嫌いだと話すが、あれも何?その後に活かされる訳でもなく。原作に関連する部分があってそれがカットされているのか。
基地から飛び立ったはずの飛行機の記録の改ざんについてもよくわからなかった。結果的に翌朝6時の飛行機ではなく、当日23時にも飛行機が飛び立っている、それならば被害者がその飛行機に乗らなかったのはなぜ、というのがポイントだと思うが、その辺りちゃんと描かれていた?私が見逃しただけだろうか。
もう一つは人間関係の描き方の雑さ。
裁判前にキャフィにロスがケンドリックの発言を教えるシーンがあるため、あそこではロスは弁護側の人間だと思ってしまった。しかし実際にはロスは検察側の人間であり、司法取引をスムーズにするための発言だったとは後になってわかる。
ダウニーとドーソンの関係性も重要な点なのだろうに、最後のシーンでようやくわかる程度。これを事前に描いていれば、ダウニーの証言がひっくり返された意味もわかるし、ラストのドーソンのセリフももっと活きてくるのに。
それでもラストのオチは素晴らしかった。「ケイン号〜」と同様、犯罪の張本人がぽろっと本音を吐き出してしまう。台詞のやり取りでジェセップが高揚して行く様を演じたジャックニコルソンがスゴいのはわかるが、やはり脚本の上手さか。本作を観てあぁこれは「刑事コロンボ」なのだと気づく。「刑事コロンボ」はコロンボの見事な初期捜査で手がかりを発見することが多いが、実は証拠が見つからない事件ではコロンボの巧妙な語り口に乗せられた犯人が、最後にぽろっと真実を語ってしまうというオチの事件がいくつかあった。私が好きなのは「殺しの序曲」で、本作と同様、コロンボの煽りによって高揚した犯人が、犯行手口をコロンボに暴露してしまう話。
余談。結局被害者殺害の罪はジェセップやケンドリックにきせられることになるのだろうが、軍の内部で起きた犯罪は一般的な捜査ではなく、軍の内部で処理されるのが米軍のルールなのだろうか。ちょっと不思議な感じがする。
それにしても軍内部の恐ろしい規則を映画化した本作は見事だと思うし、それを許すアメリカもスゴいと思う。本作は1992年製作だが、やはり冷戦が終わり仮想敵がいなくなったことで、内部へと目を向けることになった時代、ということなのだろうか。うーむ。