悪霊島

●796 悪霊島 1981

 1980年冬。ジョンレノンが殺されたことを五郎はニュースで知り、刑部島で起きた事件のことを思い出す。

 1969年。刑部島の崖から男が飛び降りる。男はフェリーに拾われるが、最期に「あの島には恐ろしい悪霊が」と話す。五郎は気ままな旅をしていた。電車で切符をなくした金田一と出会い、二人は駅の改札を突破する。偶然居合わせた磯川警部は変死体を捜査、スーツに青木と名前が入っているのを確認する。

 磯川はその場にいた金田一に声をかけ、捜査に来た事件の現場へ。被害者は浅井はるという老女で、イタコやモグリの産婆をしていた。磯川ははるから10日前に手紙をもらっており、仕事上他人の秘密を知っており、24年前の秘密で強請りをしていたがそれが原因で恐ろしいことが起きる、身を守って欲しいという内容だった。しかし磯川は仕事の都合でそれを知ったのが1週間後で、すでにはるが殺害されていたということだった。金田一も越智の依頼で島で行方不明になった青木という男性のことを調査するために島に来ていた。磯川は青木という男性が死体で見つかったことを話す。越智は島の2大勢力である刑部家と越智家の越智家側の跡取りだった。はる殺害時にはるの家からヒッピー風の男が逃げたとの目撃情報もあった。青木は最期に「腰のところでくっついた双子…あの島には恐ろしい悪霊が…鵺のなく夜は恐ろしい」という言葉を残していた。

 金田一は五郎とともに島へ。島では有名な祭が行われるところだった。越智も島へやってくる。越智は昔巴と駆け落ちをしたことがあった。金田一は宿へ。そこで宿帳に青木の名前があるのを発見する。島には源氏に追い詰められた平家の落人がきて、生き延びた一人が刑部家となったという伝説があった。金田一は吉太郎を見かけ跡をつけ、廃墟へ。そこで野良犬に襲われる。逃げ延びた金田一は刑部神社へ。そこでは五郎が刑部家の娘、真帆と片帆、その母親巴の写真を荒木とともに撮影していた。夜、金田一は大膳と会い、神社に越智が黄金の矢を寄進したことを聞く。

 金田一は五郎に鵺のことを尋ねる。五郎は荒木にも同じことを聞かれたと話す。金田一は刑部家の離れに巴の姉ふぶきがいることを知る。ふぶきは脳を患っているとのことだった。その時ふぶきが出て来て巴が跡を追う。宿に戻った金田一は荒木から父が10年前に島で失踪したこと、手紙で鵺の鳴く夜は恐ろしいと書かれていたことを聞く。

 島に越智が寄進した神輿がやってくる。その時車に乗っていた越智に五郎が何事か話しかけていた。島に毎年やってくる神楽の人々もやってくる。その中に誠と勇の兄弟もいた。誠は片帆と愛し合っていた。金田一は磯川から青木が扼殺されていたことを聞く。

 祭が行われる。真帆は片帆が昨夜から行方不明になっていて探していた。宵宮で神楽が行われるが、火事が発生。皆で消火作業をする。それが終わった時越智が守衛が黄金の矢で殺されているのを発見する。警察が来て捜査を始める。越智は取り調べでなぜ拝殿にいたかを聞かれる。野良犬が人の腕を咥えているのが見つかり、廃墟で片帆の死体が発見される。野良犬の仕業かと思われたが、片帆には扼殺の後があった。守衛の死因は矢が心臓に刺さったことだったが、さらに矢は遺体を貫通させられていた。片帆の死亡推定時刻は守衛の前だと判明。行方不明になった晩にすでに殺されていたことになる。五郎が捜査本部に呼ばれる。彼ははる殺しの現場でも目撃されていた。五郎はあの晩荒木と散歩しており、菅笠をした男性を目撃していた。2人の葬儀が行われる。双子の真帆と片帆は別々に広島と尾道の家に預けられていたが、それは大膳の提案だった。

 金田一は巴と越智が若い頃に愛し合っていたのに手助けをしていた人間がいるはずだと多年子に尋ねる。彼女がその張本人だった。二人は鵺の鳴き声を合図にして密会していたが、巴が妊娠したため大膳が怒り、二人を引き離し、巴はモグリの産婆のもとで子供を産んだのだった。金田一はそれがはるだったのではと推理する。金田一はふぶきの様子がおかしくなったのはいつからかと尋ね、それが戦後島に戻って来てからだとわかる。金田一は越智に五郎になんと言われたのかと尋ねる。越智は「お父さん」と呼ばれたと答える。

 金田一はふぶきがいたという広島の中之郷へ。ふぶきを知る女性から彼女は普通の明るい女性だったと証言を得る。捜査本部では、火事の晩、五郎がどうして拝殿にいたのかと聞かれていた。五郎は拝殿の蔵で勇を見かけたと証言する。誠と勇の兄弟の父は5年前、島で失踪しており、二人はその手がかりを探していたと話す。五郎ははるの家を訪ねたことも告白する。母が亡くなった時、本当の母親ではない、知りたければはるを訪ねろと言われたことも。母親のことはわからなかったが、その年巴が子供を産んだことがわかったため、越智が父親ではないのかと考えたのだった。そして火事の晩、悲鳴を聞き拝殿に向かうと守衛が殺されており、そこに巴がいた。巴を母だと思っていた五郎は巴を庇うため守衛に刺さった矢をさらに突き刺した、しかし巴だと思った女性はふぶきだったと話す。

 警察は守衛殺しはふぶきの仕業と断定、彼女を逮捕しに行くが、ふぶきは裏口から逃げていた。警察が追うが捕まらない。崖にたどり着いた時、そこには女性の着物を持った大膳がおり、ふぶきは崖から身を投げたと話す。

 金田一が島に戻ってくる。彼は越智になぜ拝殿に行ったのかと尋ねる。越智は守衛と相談、ご神体を黄金の矢に入れ替え、島をレジャーランドにする計画があったと話す。神社の神主だった守衛は全てを支配する大膳に反発し、金を持って島を出て行くつもりだった。

 金田一は吉太郎の家を調べる。机には「現代人の失っているもの それは静かで激しい拒絶だ」と書かれていた。引き出しの中には女性もののカツラもあった。さらに金田一は片帆が殺された晩、吉太郎と一緒にいたはずの大膳がいなかったことを突き止める。金田一は犯人と菅笠の男が別人だと見抜いていた。

 金田一は磯川とともに森の中を逃げたふぶきの足跡を見つける。女性にしては大きな足跡だった。その時二人のそばにやが放たれる。金田一は島を出ろという警告だ、森のどこかに本当の刑部神社があるはずだと話す。

 巴は一人紅を指していたが、突然豹変しふぶきが現れる。それを真帆が見ていた。巴は逃げる真帆を追いかけ、森の中で真帆の首を絞める。その時鵺の鳴き声が聞こえ、巴はそちらへ。そこには越智が待っていた。金田一は巴とふぶきが同一人物だと説明、皆の前に現れたふぶきは吉太郎の変装だとも。ふぶきは広島にいる時原爆で死亡したが、越智との仲を裂かれた巴が狂い出し、大膳はふぶきを蘇らせたが、それには吉太郎の協力が必要だった。巴はご神体の入れ替えに気づき、ふぶきとなった巴が守衛を殺した。巴は片帆が誠を逢い引きしている現場を目撃、若い二人に嫉妬し片帆を殺したのだった。菅笠の男は大膳であり、殺された片帆を運んだのだった。金田一は大膳も巴を愛していたのだろうと話す。

 金田一は森の中で真帆を発見、その場を磯川に任せ巴を探し洞窟へ。そこには大膳がおり、そこが本当の刑部神社だった。金田一はそこで腰がくっついた双子の赤ん坊のミイラを発見する。大膳はそれは巴が生んだ子供であり、取り上げたのははるだったこと、20年間ずっとそのことではるにゆすられていたことを話す。さらに、巴は淫乱な女性であり、島に来た男性とそういう仲になるが、男は秘密を暴露してしまうと大膳は話し、金田一も襲おうとする。そこへ巴と越智がやってくる。二人をつけていた吉太郎はライフルで双子のミイラを撃ち壊す。ロウソクの明かりが消え、真っ暗闇に。その中で大膳は吉太郎を刺殺。明かりを取り戻すと巴は双子のミイラを探し歩き回り、洞窟内の穴に落ちてしまう。全てを見ていた大膳はライフルで自殺する。

 全てが解決し、五郎はパトカーで連行される。磯川は五郎に巴の写真を渡す。島を出て行くフェリーを真帆が一人見送っていた。越智が作った島のレジャー施設の模型は壊されていた。

 

 

 これまでもこのブログでは金田一ものを何本も観てきたが、減じて伝ではおそらくこれが最後の1本となる。

 観たのは何十年ぶりだろう。ストーリーを覚えているはずもなく、印象に残っていたのは「鵺の鳴く夜は恐ろしい」というCMコピーとビートルズの曲のみ。

 

 今回キチンと鑑賞し感じたのは、いろいろと残念だった、ということ。前半は登場人物の紹介や島の伝説伝承に時間を割かれてしまい、話について行くのがやっと。で島の祭りの日にいきなり殺人事件。それも2件。後半、警察の取り調べで五郎が守衛殺人の事件の目撃者であったことが明かされる。もちろんこの時金田一は事件現場である島にはおらず、例によって離れた地へ事件の真相解明の鍵となる人物の話を聞きに行っている(笑 そして金田一が島に帰ってきて一気に終盤へ、というストーリー展開。

 

 本作の鍵は、双子。そして島では双子が忌み嫌われていた、という事実。ここが事件解決の話をごちゃ混ぜになっていたため、重要ポイントとしてズレてしまった感が否めない。あとは石坂金田一のような連続殺人ではなかった(被害者は2名出るが)のも見どころが少なくなってしまった要因かも。おどろおどろしい感じもあまりなく、石坂金田一を見慣れた自分には、物足りない感じがしてしまう。

 

 wikiによれば、横溝正史最後の作品であり、角川春樹も相当力を入れて作った一本らしいが。あぁあと違和感があったのは、時代設定かな。原作も映画と同じ1960年代後半の設定らしいが、やっぱり金田一は戦後の混乱期でないとなぁ。ビートルズがど真ん中だった世代には曲との相乗効果でピンと来るものがあるかもしれないけれど。

 

 そういえば、NHKでちょっと前にやっていた吉岡秀隆金田一シリーズはもう作らないのかなぁ。新しい金田一を観たくなった。