最後のひと葉 オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション

●最後のひと葉 オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション

 オーヘンリーの全8編からなる短編集。特に良かったものを2つ。

 

 「最後のひと葉」

 スーとジョンシーは同居する若い芸術家。ある時ジョンシーが肺炎にかかってしまう。スーは医者からは彼女が助かる見込みは低い、彼女の生きがいを見つけないと助かる確率がもっと低くなる、と言われる。ジョンシーはベッドから窓の外を見て、隣家の壁のツタの葉の枚数を数え、あれが全て落ちたら自分が死ぬんだと言い始める。

 スーは自分の絵のモデルになってもらうために一階に住むベアマン老人に頼みに行く。ベアマンは酒浸りでいつかすごい絵を描いてみせると言っている絵描きだった。スーはジョンシーのことを老人に告げる。スーは老人の絵を描くが、外では冷たい雨が降っていた。

 翌朝ジョンシーが窓の外を見ると葉が一枚だけ残っていた。しかしその日も天気は悪く嵐となる。翌日窓を開けるとまだ一枚の葉が残っていた。それを見たジョンシーは生きる希望を取り戻す。医者がやってきて、もう大丈夫だと太鼓判を押す。医者を見送ったスーは1階の老人が肺炎にかかったことを知る。

 翌日老人は死んでしまう。スーは老人が壁に葉を描いてくれたことを知り、それをジョンシーに告げ、最後のひと葉は彼の傑作だったと告げる。

 

 「詐欺師の良心」

 詐欺師の二人、慎重なジョンと大胆なアンディ。ジョンは金をだまし取るなら相手に何か持たせてやりたいという信条だった。アンディがピッツバーグの大富豪を騙すため、富豪の持つものの片割れというエジプトの骨董品を質屋で見つけてくる。それを大富豪に売り渡し大金をせしめるが、それはアンディが富豪の家から盗んだものだった。

 

「水車のある教会」大富豪エイブラムが水車小屋のある教会で出会った娘は…

「愛と苦労」若き芸術家ジョーとディーリアは結婚、お互いにお金を稼ぎ始めるが…

「王女とピューマ」家畜王の娘ジョセファに惚れたギブンスは彼女の前で嘘をつくが…

「黄金のかがやき」南米からやってきた将軍に詐欺師が武器を売り込む嘘をつくが…

「ラウンドのあいだに」マーフィーの下宿にいるマカスキー夫妻の夫婦喧嘩

「ジョン・ポプキンズの完璧な人生」貧乏と恋愛と戦争を一挙に経験するポプキンズ

 

 今回はやはり「最後のひと葉」。教科書にも載っている有名な話。だが読み直してみると、一階に住む老人=壁に最後のひと葉を描いた人物、のことは完全に忘れていた。というよりは、この話は、窓から見えるひと葉を使ったコントを何度も見ているから、そこだけがフューチャーされ過ぎている感じか。

 本作はこれ以外にも小粒の傑作が多い。

 上で取り上げた「詐欺師の良心」のオチもさえている。なぜ大富豪の持つ骨董品と同じもの=大富豪を騙せるほど似ているもの、が質屋などにあったのか、と疑問を持って読んでいたが、そういうことかという見事なオチ。

 「水車のある教会」はある程度オチが読める展開だったが、娘と判明するための伏線がしっかりと貼られていたことに驚く。

 「愛と苦労」は劣化版の「賢者の贈り物」。最後のオチが判明する理由が面白い。

 「王女とピューマ」は意外なオチ。女性のしたたかさというか、女性の怖さというか。

 

 やっぱり流石だと言わざるを得ない。このシリーズも後半に入ってきた。あと3冊。

 

 

北北西に進路を取れ

●384 北北西に進路を取れ 1959

 広告会社に勤めるソーンヒルはホテルで打ち合わせ中に男2人組に拉致されタウンゼント邸へ連れて行かれる。わけのわからないソーンヒルはそこにいたタウンゼントに説明を求めるが、彼はソーンヒルカプコンという男性と間違えているようで取り合わない。何も答えられないソーンヒルは酒を飲まされ、車で崖から転落死させられそうになる。ソーンヒルは何とか車を奪い、酩酊状態のまま車を運転し逃げるが、警察に捕まってしまう。

 翌日ソーンヒルの言い分を聞いた警察とともにタウンゼント邸へ行くが、タウンゼントは留守で国連に行っているという。タウンゼント夫人にソーンヒルは酒を飲んで帰ったと言われてしまう。

 ソーンヒルは最初のホテルに戻りカプコンの部屋を突き止め部屋に侵入する。カプコンがホテルの従業員に会っていないことを突き止め、タウンゼントの写真を入手する。

その時電話がかかり身の危険を感じたソーンヒルは逃げるが、エレベータで男たちと一緒になる。母親の一言で何とかその場を切り抜け、ソーンヒルは国連へ。

 ソーンヒルカプコンを名乗りタウンゼント氏と会うが、全くの別人だった。さらに話を聞こうとしたところタウンゼント氏は男の投げたナイフで死んでしまう。ソーンヒルはナイフを抜いたところを見つかり、殺人犯に疑われ新聞にも掲載されてしまう。

 その頃CIAでは幹部たちが、架空の人物カプコンの名を語ったソーンヒルのことを新聞で読み協議をしていた。彼らはバンダムを捕まえるために架空の人物カプコンを作り出したのだった。彼らはソーンヒルについては何もしない決断をする。

 ソーンヒルはシカゴへ列車で向かう。その車内でケンドールという女性に助けられ食事をともにし、部屋に誘われ一夜を共にする。しかしケンドールはバンダムの一味だった。

 シカゴについたソーンヒルはケンドールがカプコンから電話で待ち合わせの場所と指示された41号線のプレーリーストップへバスで行くことに。そこで彼は農薬散布をする飛行機に狙われる。何とかその場を切り抜けたソーンヒルは、カプコンのいるホテルへ。そこでケンドールを見かけると共に、カプコンとの待ち合わせが嘘だったことを知る。ソーンヒルはケンドールの部屋へ。彼女から出て行ってと言われるが、彼女のメモから彼女がオークション会場へ行くことを知り、会場へ。そこにはケンドールとともにバンダムもいた。身の危険を感じたソーンヒルはオークション会場でわざと騒ぎ出し警察に連れて行かれる。しかし警察が連れて行ったのは空港だった。そこにCIAの人間がおり全ての事情を打ち明ける。協力を求められるが断るソーンヒル。しかし彼の登場でCIAのスパイであるケンドールの身が危険であることを知らされ協力することに。

 バンダムたちがいるラシュモア山へ行きカフェでバンダムたちと会う。そこでソーンヒルはケンドールに撃たれてしまう。バンダムたちは逃げるが、空砲だったためソーンヒルは無事だった。ソーンヒルはケンドールと一緒に帰るつもりが、彼女はまだバンダムと一緒に行動することに。病院に隔離されたソーンヒルはそこを逃げ出し、バンダムの隠れ家へ。そこでケンドールの空砲のトリックがバレていること、バンダムたちの隠していたフィルムのありかを聞き、彼女を助け出そうとし、ラシュモア山でバンダムたちと戦うことに。

 

 ヒッチコックの全盛期の一本。「サイコ」の前年に製作されているので、その充実ぶりが伺える。そう言えば、「サイコ」を観たのは去年の6月だった。

 とにかく導入部が圧倒的に面白い。始まってすぐに別人に間違えられ屋敷に連れて行かれるが、相手は主人公の話を一切受け付けない。そして泥酔させられ車へ。その後も連れ込まれた屋敷まで行くが、ここでも空振り。さらに国連まで出てきて殺人犯に疑われてしまう。主人公がどんどん追い込まれて行く、まさにヒッチコックの上手さが全面に出ている。

 ただこの後、いきなり種明かしといてCIAが登場するのはいかがなものか。「めまい」でも同じことを感じたが、種明かしが早すぎるような気がする。もっと謎のまま進行しても面白いと思うんだけどなぁ。

 確かにカプコンが架空の人物だと判明した後に、ケンドールが登場し、こちらの方がストーリーとしての本線になって行くので仕方なしか。ケンドールの正体についても二転三転するし。ただラストのラシュモア山での争いはちょっとしょぼかったかなぁ。

 それでも2時間強の映画、十分楽しめた。有名な飛行機に襲われるシーンも観たし。ところであのバス停、あんな何もないところのバス停って本当にあるのか(笑 誰が使っているんだろう? 

 ネットで読んだが、スピルバーグの「未知との遭遇」はこの映画のオマージュらしい。言われてみるとラストシーンは似た絵面が多い気もするが。

 

本所おけら長屋 十五 畠山健二

●本所おけら長屋 十五 畠山健二

 「はるざれ」

 尾形清八郎がおけら長屋へやってくる。清八郎は島田の元の奉公先黒石藩の家臣で、以前おけら長屋の万松と吉原に行き、実家の下男の娘お葉と出会っていた(おけら長屋 五)。清八郎はお葉を身請けするための20両を持ってきていた。

 清八郎は黒石藩に戻り、貧しい藩や百姓たちを救うため、藩の名産品を作ろうと考え、実家でお葉の母が作った味噌漬を候補と考え、味噌漬を作りそれが評判を呼ぶことに。偶然黒石藩にきていた仙台の料理屋が味噌漬の代金として20両を払っていた。

 しかし味噌漬を作ったお葉の母親は清八郎が江戸に出てくる前の月に風邪をこじらせ亡くなってしまっており、持参したものはお葉の父が覚えていた作り方で作ったものだった。清八郎は20両でお葉を身請けし、味噌漬を作るのを手伝っていたお葉に母親の作り方を教えてもらうつもりであることを藩主高宗に提言、高宗は了承する。

 清八郎は島田とともにお葉のいる女郎屋に行きお葉を身請けし、おけら長屋に連れてくる。お葉は心身ともに弱っていたためだった。清八郎は母親の死や味噌漬の話をお葉にする。お葉はお染と暮らしだし、味噌漬を作るための準備を始める。必要な食材を集めるため、聖庵堂のお満や長屋の隠居与兵衛の力を借り、お葉は母親の作った味噌漬を再現して見せ、長屋や高宗を唸らせる。

 しかし二日後、お葉は姿を消してしまう。心配する長屋の連中は清八郎に話をする。清八郎の前日、お葉に藩に帰ったら結婚して欲しいと話していた。お染はお葉の気持ちを察する。万松がお葉の行方を掴んでくる。

 島田とお染がお葉に会いに行くが、お葉は友人の男に襲われて家から逃げていた。二人は側の神社で首をくくろうとしているお葉を見つけ助け出す。お染は清八郎が死んだと嘘をつく。叫ぶお葉に嘘だと話し、お染はお葉を説得する。

 清八郎は高宗から藩に帰ったら武家の屋敷に養女として入りその後嫁ぐようにとの書状を受け取っていた。二人は黒石藩へ帰って行く。

 

 「なつぜみ」

 お咲の元を遠縁のお喜代が訪ねてくる。彼女は菓子屋竜泉堂の主人の妹で還暦近い老女だった。お喜代は10歳の頃好きだった男の話をし始める。お喜代はこれまで一度も所帯を持ったことがないのだった。

 竜泉堂のそばにはもう一件の菓子屋柳生堂があり、お互い犬猿の仲だった。その柳生堂の次男嘉助がお喜代の相手で、ガキ大将にいじめられているお喜代を一度助けてくれたことがあった。その時嘉助はお喜代のことが好きだと話していた。両国橋の川開きの花火大会の日、親とはぐれてしまったお喜代は嘉助に助けられ、二人は初めてゆっくりと話をしお互いの気持ちを確かめた。しかし嘉助は来月から煙管職人に奉公に出るのだった。

 お咲は万松にお喜代の話をし、煙管職人の嘉助を探すように頼む。半月後、万松は牛込の石切長屋に住む嘉助を見つけてくる。しかし嘉助は病でもう長くはないということだった。翌日お咲お染万松の4人とお喜代は石切長屋へ出向く。しかし一足遅く、嘉助は昨夜死んでしまっていた。落ち込む皆だったが、長屋の老婆の勧めで線香をあげる。その時死んだ人間が嘉助ではなく、良輔だということが判明する。香典を取られてしまいがっかりして長屋を後にしようとした時に、長屋の女が嘉助のことを話してくれる。弁天長屋に住む嘉助は胸を悪くしているとのことだった。5人は弁天長屋へ。

 お喜代は柳生堂へ行き嘉助のことを話す。柳生堂の主人庄吉は嘉助の兄であり、話を聞いて二人のことを許し、これまでのことを謝る。お喜代は竜泉堂の主人で兄の恭七郎にも話をしてあり、兄も柳生堂に謝りにきたいと話していたことを告げる。

 お喜代は嘉助と暮らしだし、ひと月半後の両国の川開きの日に亡くなる。三祐で皆で酒を飲みながら、お喜代は礼を言い、嘉助との日々のことを話す。そして嘉助の遺品の中に、10歳の川開きの日にお喜代がなくした片方の下駄が出てきたことを話す。

 

 「あきなす」

 万造が奉公する米問屋石川屋の姑お袖と嫁お菜は嫁姑の争いが絶えない。

 ある日店に今川座の看板役者今川勘十郎が訪ねてくる。店に誰もいなかったためお菜が対応するが、お菜は勘十郎に一目惚れしてしまい、お米を買いに来た勘十郎に毎日握り飯を届ける約束をしてしまう。

 姑お袖の反対を受けるが、店のことをやったことのないお菜が店のことも考え始めてくれたと考えた主人たちはお菜を応援する。お菜は毎日握り飯を作り今川座に届けるようになる。

 お菜の行動を不審を抱いたお袖は万造にお菜のことを調べるように命じる。万造はお菜が勘十郎に惚れていること、届けたのちに芝居を見たりしていることを告げる。それを聞いたお袖は自分が握り飯を届けられる手はずを万造に考えるように話す。

 翌日客がお菜の元へ来ることになり、握り飯はお袖が届けることに。そしてお袖も勘十郎に惚れてしまい、二人は握り飯のことで喧嘩を始めてしまう。結局二人で半分づつ握り飯を作り届けることに。そんなことが続いたある日のこと、今川座で食あたりで出てしまい、石川屋が食あたりの原因だと噂され、店は立ちいかなくなってしまう。

 噂を聞きつけたお満が万松に話を聞く。その日作った握り飯で食あたりが起きたことが解せないためだった。今川座の皆が食べたのは握り飯の他にニラと豆腐味噌汁だったとのことで、お満はニラと水仙は似ており、水仙を食べると食あたりに似た症状を引き起こすと話し、万松にもう少し調べるように話す。

 万松はニラの味噌汁のことを調べ出す。その場に置いてあったニラだが、誰が置いたかはわからなかった。島田が戯作者の井川先生から小松座が客が入らなくて困っているという話を聞いて来る。島田は小松座が今川座に客を持っていかれたという恨みを持つのではという推理を万松に話す。万松は一計を案じる。

 小松座にニラに関する投げ文をし、金太に小松座にニラを売りに行かせる。最後にはお袖とお菜が食あたり騒動で自害を考えている、という芝居をさせる。それを聞いた小松座の若手犬千代は奉行所に訴え出て全てを白状するが、命じた座頭沖之丞は逃げてしまう。

 芝居には懲りたというお袖とお菜は仲良くナスの漬物を食べるのだった。

 

 「ふゆどり」

 鳥居涼介が剣術修行をしながら江戸を目指す。彼は煮売をしているおけい婆さんが浪人3人に絡まれているところを助け浪人たちを蹴散らす。それを見ていた万松が彼に声をかけると、鳥居は誠剣塾を探しているところだった。鳥居は誠剣塾で島田に真剣での立ち合いを申し入れるが断られる。

 鳥居は黒石藩の刀鍛冶の息子だったが、剣客を目指し武家の家に養子に入る。しかし鳥居家は断絶となり、涼介は剣客をなるため修行の旅に出て5年後黒石に戻るが、姉が自害したことを知る。

 島田は黒石藩邸に工藤を訪ね鳥居のことを尋ねる。黒石藩から江戸に出てきたばかりの人間から鳥居のことを聞く。鳥居の姉は近藤房之介に嫁いでいたが、近藤は島田との剣術指南役を決める試合で負け、その恨みから島田の妻を襲い自害させていた。

 鳥居は毎日誠剣塾の島田の元を訪れ立ち合いを申し入れ断られる日が続く。ある日誠剣塾の門弟足立尚右衛門が鳥居に声をかけ、島田の代わりに自分が立ち会うと申し入れる。噂を聞きつけた島田が立会いの場田中稲荷に行くと足立が怪我をしていた。島田はその場を収める。

 万松お染は島田のことを心配し、島田に鳥居のことを尋ねる。理由を知った万松は鳥居に声をかけ一緒に酒を飲み話を聞く。鳥居は島田を恨んでいるわけではなく、憧れであり剣客として勝負がしたいだけだと話す。その帰り道、鳥居はおけいばあさんの店で出会った浪人に襲われ卑怯な手を使われるが、なんとか撃退、一人を斬り捨てる。鳥居は奉行所に連れていかれ、その場で斬った浪人にも妻と乳飲み子がいたことを聞かされる。鳥居は、姉の件での島田と自分が同じ立場になったことに気づく。

 放免になった鳥居は浪人の妻香織の家へ出向く。そこで浪人の妻から、島田とお染が先に妻の家を訪れ、香織がこの先生きていくために、東州屋で働けるように手配していたことを聞く。

 翌日鳥居は誠剣塾へ出向き、明日江戸を立つことを島田に告げる。すると島田は真剣で立ち合いましょうと話す。剣を交える二人だったが、鳥居は何も出来ず、負けを認める。島田は鳥居に高宗から授かった鳥居の父杉野匠巳の名刀を渡す。その刀を持って鳥居は黒石へ帰っていく。

 

 

 本作も4話構成、前作同様、人情話3話に滑稽話1話といったところ。

 「はるざれ」は「おけら長屋5」の「はるこい」の後日談。「はるこい」ではモヤモヤとした終わり方だったが、その見事な解決編といったところ。清八郎に求婚されたお葉が姿を消すのも自殺しようとするのもよくわかるが、それをお染がキツい言葉で叱責する。「はるこい」でも泣かされたが、「はるざれ」ではもっと泣かされた。そうか、同じ話だからタイトルにどちらも「はる」が使われているのか。今気付いた(笑

 「なつぜみ」はお咲の知り合いの老女の話。だが、内容は幼い時の恋物語。途中見事な?人違いをするというオチがあり笑いを誘うが、ラストのお喜代の話には泣かされる。さらに最後お喜代がなくした片方の下駄が出てくる場面では号泣。これまたタイトルが話の内容をよく示している。

 「あきなす」は人情話が2つ続いた後の滑稽話。こんな嫁姑の争いは今でも起きているのかしら(笑 例によって万松が大活躍するオチとなるが、途中絶望した嫁姑が交わす会話がちょっとホロっとさせる。しかしその後ラストへ向かう際に久しぶりに登場する金太の会話には相変わらず大爆笑。

 「ふゆどり」は一転、またも人情話。一見島田に対する仇討ち話かと思いきや、相手の鳥居は良い人間としか描かれず、長屋の住人も戸惑い始める。そして明かされる理由。常に帯刀し何かあれば人を斬るのが当たり前の世の中で、人を斬ることの愚かさや責任を感じさせる。

 途中、鳥居の話を聞いていたお染が女としての本音をぶちまける場面も良かった。その前に島田から理由を聞いたお染が島田に惚れ直す場面があるからなおさら。

 ラスト島田が名刀を鳥居に渡す場面も良い。本人すら気づいていなかった気持ちを島田が諭す。うーん、やっぱり島田のカッコ良さは別格か。

 

 15巻まできたが、レベルはどんどん上がっているように思える。前作同様、再登場する人物あり、新たな登場人物ありで、ますます世界が広がってきている。もう次作が楽しみでしかない。 

 

アラビアのロレンス 完全版

●383 アラビアのロレンス 完全版 1962

 ロレンスの葬式のシーンからスタート。

 イギリス軍少尉ロレンスはファイサル王子と接触し王子の考えを探り出すという使命を与えられる。ロレンスは王子に会いに行くが彼らはトルコ軍の攻撃を受けていた。王子は進退窮まるが、ロレンスはトルコ軍が占拠するアカバの街を砂漠経由で攻撃するという奇策を考え実行、途中ハウェイタット族のアウダと接触、彼を説得し一緒にアカバ攻略をし見事に成功する。

 ロレンスは軍司令部へ戻りアカバ攻略を報告、次にロレンスはアラブ軍とともにトルコの鉄道を襲撃することに。何度か成功するが、アラブ軍が皆去っていってしまったため、ロレンスは単身敵地へ乗り込む。そこで捕まってしまう。

 傷ついたロレンスは軍に戻り辞表を提出するが却下され、ダマスカスへの進撃を命じられる。ロレンスはイギリス軍よりも早くダマスカスを攻略、街をアラブ国民会議のものとするが、民族間での争いが絶えずロレンスは失望、イギリス軍やファイサル王子からも邪魔者扱いされ、ロレンスはアラビアから去って行く。

 

 超有名な作品だが、映画そのものが長いことや歴史的なものをよく知らないのでずっと避けていた。今回が初見。

 完全版のため、4時間近い映画。中東の雄大な自然は美しく、撮影された画も見事。これは映画館で観るための映画といっても良いだろう。

 しかし長い。自然を見せたり、移動を丁寧に描いたり、などで時間がかかっているため、ストーリーそのものはわかりやすいものだったが、それでも長い。

 もう観ることはないと思うが(笑 鑑賞メモとして。イギリス軍の上官たちが集まるシーンにドライデン顧問という人ブツが登場するが、なんとなく観た記憶が… 調べたら「カサブランカ」の警察署長。カサブランカ以外でこの人を見るのは「汚名」に続いて2回目。有名な作品に結構出演してるんだなぁ。

 

カラミティ・ジェーン

●382 カラミティ・ジェーン 1953

 カラミティが駅馬車を護衛しデッドウッドの街へ帰ってくる。街の酒場では男たちがタバコの景品のカードの美女アデレイド・アダムズのことで大騒ぎしていた。それを知ったカラミティは面白くなく、友人のビルにギルマーティン少尉ならそんなものは見ないと話す。

 そこへ先住民に襲われた男たちが帰ってくる。カラミティは彼らからギルマーティン少尉も襲われたと聞き助けに行く。そして先住民に捕らえられていた少尉を助け出す。

 酒場ではショーが行われていた。しかし支配人の手違いで男性の歌手を呼んでしまい女装させてのショーだった。その女装がバレ客たちは怒り店から帰ろうとする。カラミティは支配人は悪気はなかったと言い、この埋め合わせに支配人はアデレイド・アダムズを呼ぶと宣言してしまう。

 カラミティはアデレイドがいるシカゴへ。しかしアデレイドはヨーロッパへ旅立ってしまい、彼女の付き人のケイティがいるだけだった。カラミティは彼女をアデレイドと勘違い、デッドウッドに来て欲しいと懇願する。ケイティはアデレイドだと偽りカラミティの話を承諾する。

 二人がデッドウッドの街へ。ケイティは店でショーを行うが自信がないため客に歌を非難されてしまう。ケイティはあっさり偽物であることを白状し客たちのブーイングを浴びる。カラミティはケイティを擁護、彼女にチャンスを与えて欲しいと客に頼み、客も了承、ケイティは自信を取り戻しショーを披露する。

 カラミティはケイティを自分の家へ連れて行く。ケイティは家を女性らしい家へ改造し始め、カラミティも女性らしい服装にさせる。カラミティの友人ビルも少尉もケイティに惚れてしまう。二人はカラミティの家へ。ケイティは一計を案じ、少尉にカラミティが少尉に惚れていることを告げるが、少尉はケイティに惚れていた。4人は週末のパーティに参加することに。

 女性らしいドレスを着たカラミティに皆驚く。パーティの最中、少尉はケイティを連れ出しキスをする。それを見たカラミティは怒りケイティのグラスを銃で撃ち抜く。翌日店のショーに出ているケイティの元へカラミティが現れ明日の駅馬車でシカゴに帰るように警告する。ケイティはカラミティにグラスを高く掲げるように言い、銃でそれを撃ち抜く。しかし実際にグラスを撃ったのはビルだった。驚いたカラミティは店を出る。それをビルが追いかけ一緒に馬車に乗る。ビルはカラミティを慰め、二人はキスをし、お互いに愛していることに気づく。

 カラミティは翌日店へ行く。街の皆は冷たく、理由を聞くとケイティがカラミティの言った通りシカゴへ帰ってしまったと聞かされる。カラミティは急ぎケイティの乗った駅馬車を追いかけ、ビルと結婚することを告げる。

 街に戻ったケイティと少尉、カラミティとビルの合同結婚式が開かれる。

 

 西部に実在したカラミティ・ジェーンの物語。ただし映画のストーリーは実際のものとは全く無関係のようだ。

 カラミティの名前は随分と昔から知っていた。小説か映画かで知ったようだ。ルパン三世のエピソードで出てきた気もするがネットで調べてもそんなエピソードはなさそう。

 いわゆるじゃじゃ馬娘であるカラミティが店のショーの支配人を助けるために街に踊り子を連れてきて、そこで起きる恋の騒動が映画のストーリー。まぁオチまで含め予想通りの展開になるのだが。と言ってもミュージカル仕立てのため、ストーリーはあまり意味はない。ただラスト近くで映画の中で歌われた曲がもう一度使われるのは上手い演出だったと思う。

 ドリス・デイの歌と踊りを観る一本、かな。

 

断崖

●381 断崖 1941

 箱入り娘のリナは列車でジョニーと偶然出会う。ジョニーは三等席の切符しか持たずにリナのいる一等席へ乗り込んでくる。差額を持っていなかったジョニーはリナから切符をもらい支払いをする。驚くリナだったが持っていた新聞にジョニーの写真が掲載されており、彼が社交界で有名なプレーボーイだと知る。

 ジョニーは街で偶然乗馬をするリナを見かけ知り合いの女性たちにリナのことを訪ねる。彼女たちがリナの家を訪ねるのに付いていき、リナを教会へ誘う。行くつもりのなかったリナだったが、ジョニーの誘いを受け入れる。教会へ着いたジョニーはリナを散歩に誘う。そして家へ送る。家の中で両親が自分のことをオールドミスだと話しているのを聞いたリナはジョニーにキスをし、彼の午後の誘いを受ける。

 リナがジョニーと一緒だったことを話すと父親は猛反対する。その時ジョニーから電話があり午後行けなくなったと告げられる。その後リナはジョニーからの連絡を待つが一向に連絡は来なかった。

 リナの家に舞踏会への招待状が届く。ジョニーに会えないリナは元気がなく舞踏会は欠席するつもりだったが、当日ジョニーから電報が来て舞踏会で会おうと言ってくる。リナは舞踏会へ出かけることに。ジョニーは舞踏会に招待されていなかったが、乗り込んで来てリナをドライブへ連れ出す。そしてリナの家へ。ジョニーはリナの肖像画の前でリナにプロポーズをする。

 二人は結婚しヨーロッパで新婚旅行をし、新居に帰ってくる。リナはそこで旅行代金や新居にかかったお金が全て借金であることを知る。リナはジョニーを問い詰めるが彼には働く気がなかった。そこへ両親から電話がかかり、リナの結婚祝いに家にあった椅子を送ると知らせてくる。喜ぶリナだったがジョニーは無関心だった。ジョニーは友人の紹介の不動産会社で働くと話す。

 新居にジョニーの友人ビーキーが訪ねてくる。その際リナは親から送られた椅子がないことに気づく。ビーキーはジョニーが競馬に行ったことをバラしてしまう。帰って来たジョニーにリナは尋ねるがジョニーは椅子はアメリカの友人に売ってしまったと告白する。

 リナは街で推理作家の友人に会うが、その際近所の店で例の椅子が売りに出されていることを見つけてしまう。家に帰ったリナだったが、ジョニーがたくさんのプレゼントを抱えて帰ってくる。椅子を売った代金で買った馬券が大当たりしたのだと言う。ジョニーはこれが最後の競馬だと話し、椅子も買い戻していた。お祝いの乾杯をするが、ブランデーを飲んだビーキーは具合が悪くなってしまう。前からビーキーはそうなるのだった。

 リナは友人からジョニーが競馬に行っていたと聞く。彼の勤める不動産会社へ行くと上司がジョニーは会社の金を横領していたからクビにした、しかし告訴はしないと話す。家に帰ったリナはジョニーに別れの手紙を書くが破いてしまう。その時ジョニーが現れ、リナの父が病気で亡くなったことを告げる。父の遺言でリナはわずかな財産を受け継ぐことになった。

 ジョニーはビーキーと一緒に断崖の開発をする会社を立ち上げる。リナは反対するが、ジョニーに怖い声で仕事のことに口を出すなと叱られる。反省するリナだったが、ジョニーはすぐに開発は辞めにすると言い出す。リナはジョニーがビーキーを殺すのではないかと疑い始める。ジョニーがビーキーを車で送って行くと話し、翌朝早くに家をでる。それに気がついたリナは断崖へ行くが誰もおらず家に戻る。そこにはジョニーとビーキーがいた。ビーキーの話では断崖で危険な目にあったが、ジョニーに助けてもらったということだった。ビーキーがロンドンに帰ると言うのをジョニーが送ることに。

 ジョニーが留守の間に刑事がリナの家へ。パリでビーキーが亡くなった、彼はブランデーを飲んで死亡した、その時ビーキーには連れがいて相棒と呼ばれていたとのことだった。リナはジョニーがロンドンで泊まるホテルに電話をするが、彼はいなかった。

 リナは友人の推理作家の家へ。ブランデーを飲むと命の危険がある人間にブランデーを飲ませるのは罪になるかを尋ねるが、友人はそれに関する裁判記録をジョニーに化していると話す。家に帰ったリナはその本を見つける。その本には不動産会社へ金を返すと書かれた手紙が挟まっていた。その時保険会社から、ご主人から問い合わせがあった件は手紙で返答しました、と電話がある。

 翌日保険会社からの手紙をリナは盗み読む。そこには融資はできず、支払いは奥様が亡くなった場合のみ、と記載されていた。

 リナとジョニーは推理作家の家で夕食を共にする。そこで絶対に気づかれない毒薬の話になり、ジョニーは興味を示す。その日家に帰ったリナはジョニーと別に寝たいと言いだし倒れてしまう。ジョニーは推理作家を呼び、リナを看病する。リナは作家と話をし、彼女が毒薬の話をジョニーにしたことを聞く。その晩ジョニーがミルクを持ってリナのベッドを訪ねる。しかしリナはそのミルクを飲まなかった。

 翌日リナは実家へ帰ることに。ジョニーは反対するがリナは受け入れず、そのためジョニーが車で送ることに。車のドアが開きそれをジョニーが閉めようとしたのをリナは殺されると勘違いし騒ぎ出す。車を止めて話し合う二人。リナはジョニーが作家に聞いた方法で自殺をしようとしていたと考え、自分の勘違いを謝罪、二人は家に帰ることに。

 

 これは物議を醸し出すラスト。セリフの通り受け取れば、全てはリナの勘違いだったと思うが、よく観ていると疑わしい点がある。

 友人ビーキーが死んだ際のジョニーの居場所(ホテルを出たタイミング)

 ビーキーが死んだ店の店員の証言(彼は連れのことを「相棒」と言っていた)

 

 リナに飲ませようとしたミルクの問題もあるし、そもそも借金など全く苦にしてこなかったジョニーが自殺で全てを解決しようとするのか、という疑問もある。

 

 ヒッチコックが最後に、ニヤッと笑うジョニーを映し出せば良いのに(笑 それでもそれを描かないで、観客に本当の怖さを考えされる手法だったのかな。

 1時間40分の映画だが、1時間を越えたあたりから、ヒッチコックらしい怖い映像が連発する。ラストへの盛り上げとも考えられるが、ジョニーの人間性の怖さを表したと思えるのは気のせいか。

 見えない恐怖、のさらに上をいくヒッチコックの新しい仕掛けだったように思う。

 

賢者の贈り物 オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション

●賢者の贈り物 オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション

 オーヘンリーの全8編からなる短編集。特に良かったものを2つ。

 

 「賢者の贈り物」

 クリスマスを迎える若い夫婦。妻は金がないため夫へのクリスマスプレゼントに自分の自慢の長い髪を売って、夫の懐中時計用のチェーンを購入し、夫の帰りを待った。家に帰ってきた夫は妻へのプレゼントとして櫛を買ってきたが、そのために懐中時計を売ってしまっていたのだった…

 

 「お金の神さまとキューピッド」

 会社経営者アンソニーが息子に金を使って紳士になれと説教するが、息子は金では買えないものがあると答える。息子はある女性に惚れているが、彼女が明後日にはヨーロッパへ旅立ってしまうためチャンスがないと話す。翌日息子がその女性と会うと道が大渋滞を起こし、二人は馬車の中ゆっくりと話すこととなり、息子は女性に告白、婚約をすることになる。翌日アンソニーに元へ男が現れ、渋滞を起こすためにかかった費用を請求する。

 

荒野の王子さま」使用人としてこき使われ疲れたレナが親に手紙を書くが…

「鳴らないピアノ」父が買ってくれたピアノを娘が父の死の間際も弾かなかった理由

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「騎士道の守り手」銀行頭取が夜中に金庫室から何かを持ち出したのを見た下僕は…

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 今回は何と言っても「賢者の贈り物」だろう。今や日本では、昔話と同じように皆が知っている話。かと言って次の巻のタイトルになっている「最後のひと葉」のように教科書に載っていた記憶はない。何で知ったんだろう?昭和のコントなのかなぁ?

 今回改めて読んで見て驚いたのは、著者がこの作品の中で、東方の三博士まで持ち出して、この夫婦のことを賢者だと断言していること。オー・ヘンリーの小説は、ストーリー展開で読ませ、教訓めいたことを直接言葉にすることはないのだが、この作品だけはハッキリとそれを書いている。これがこの話を有名にした一つの理由なのかしら。