●798 キング・オブ・コメディ 1982
TVでジェリーのショー番組が放送されている。収録が終わり、楽屋口には多くのファンが詰めかけていた。ジェリーは自分の車に乗り込もうとするが、熱狂的ファンの女性マーシャがすでに乗り込んでおり、ジェリーは一度車の外へ。大混乱するファンをパプキンが取り仕切る。マーシャは車から引き摺り出され、代わりにパプキンがジェリーとともに車に乗り込み、車は発車する。
パプキンはジェリーにコメディアンであることを明かし、アドバイスが欲しいと話し出す。ジェリーは事務所に電話をくれと答える。
家に帰ったパプキンは、ジェリーに6週間番組の代役をして欲しいと言われる妄想をする。パプキンはバーに行き、バーテンのリタを食事に誘う。そこで彼はジェリーと知り合いだと話す。家まで彼女を送るが、リタはパプキンの目的がわからなかった。家に戻ったパプキンはショーを一人で演じる。
翌日映画社や公衆電話からパプキンはジェリーの事務所に電話をするが、本人には出てもらえなかった。パプキンはジェリーの事務所を訪ね、出演依頼をされたと話す。対応した秘書は、芸のテープを送って欲しいと話す。事務所を出たところで、パプキンはマーシャと言い合いになる。
家に戻ったパプキンは早速テープの録音を始める。ジェリーのショーに自分が出演したテイで話をする。彼は秘書にテープを渡し、明日連絡をもらえる約束をする。家に戻ったパプキンはジェリーに認められた妄想をする。
ジェリーは一人街を歩いていた。多くのファンから声を掛けられるジェリー。しかし彼はマーシャが自分を尾行していることに気づき、彼女を巻く。
翌日。パプキンはジェリーの事務所へ。秘書を待つ間も自分がジェリーのショーに出演しリタとの結婚式をする妄想をしていた。秘書はパプキンにもう少し勉強が必要だと話す。パプキンはそれはジェリーの判断かと聞くと、秘書は自分の判断だと答え、クラブに出演するときには連絡をもらえば必ず見にいくと答える。しかしパプキンは答えに納得がいかず、事務所内でジェリーの帰りを待つことにするが、警備員に強制的に追い出されてしまう。
パプキンはリタを誘い、ジェリーの別荘へ。彼はジェリーに招待されたとリタに話していた。執事は二人を見て驚き、ジェリーはいないと追い返そうとするが、パプキンは聞く耳を持たず、別荘に居座る。リタはすっかり別荘が気に入り中を見て回る。そこへ執事から連絡をもらったジェリーが帰ってくる。ジェリーはパプキンの態度に怒り、追い返そうとする。リタは事情を察し帰ることに。パプキンは調子の良いことを言ってごまかそうとするが、ジェリーの怒りは収まらず、別荘から出ていくことに。
パプキンは拳銃を用意し、マーシャとともにジェリーを尾行する。そして車で彼を拉致誘拐する。マーシャの家にジェリーを連れ込み、プロデューサに電話をさせ、パプキンを番組に出演させるよう言わせる。
脅迫電話が終わる。マーシャは彼に自分が作ったセーターを着せようとし、パプキンはなぜ自分が送ったテープを聞かなかったのかと尋ねる。ジェリーは帰らせてくれればテープも聞くし、二人のことを告訴はしないと話す。
その頃TV局では、ジェリーが誘拐されたことや見知らぬ男を番組に出演させることについて協議をしていた。とりあえず男を出演させ番組を録画し、問題がなければ放送すると決まる。
パプキンはジェリーをテープでぐるぐる巻きにして出かける。そして番組プロデューサーに電話をし、自分が出演した番組が放送されたらジェリーを解放すると話す。その頃マーシャはジェリーと二人きりになっていた。パプキンはスタジオへ。そこではFBIや地元警察が待っていた。しかしパプキンはジェリーを人質にとっており、彼の書いた台本通り番組を収録することを要求する。
収録が始まり、パプキンは一人で漫談を始める。その頃マーシャはジェリーの要求を聞き、テープを剥がす。ジェリーはすぐさま彼女を殴り外へ脱出する。収録後、パプキンはFBIや警官を連れてリタのいるバーへ。そこで放送が始まった番組を見せる。その中でパプキンは、どん底のまま終わるより、一夜の王をなりたいと話していた。放送が終わり、パプキンは逮捕され連行されていく。
TVではパプキンのことをニュースで報じる。彼は逮捕され6年の刑を受けるが、1年後ムショの中で自伝を書きそれがベストセラーになる。2年9ヶ月後には仮釈放され、自伝は映画化、自身も芸能界に復帰をしスターとなっていた。
このタイトルから、解散してしまったお笑いコンビを思い出し観ることに(笑
パプキンの妄想が続く前半は、コメディ映画なのだろうと思って観ていたが、中盤別荘の一件や誘拐が起きてからが本作のテーマなのだと気付いた。妄想狂で相手の言葉を言葉通りには受け取らず自分に都合の良いように解釈する主人公。一ファンでありながらスターであるジェリーが自分のことを愛していると思い込んでいる女性ファン。この手のいわゆる「ヤバイ」やつがいることが当たり前になったのは、いつの頃からなのだろう。本作は約40年前の作品だが、日本ではまだ「オタク」という言葉がやっと出てきたあたりではないだろうか。
終盤、誘拐犯人だとわかっているのにTV番組に出演するあたりはどうなのだろう。FBIや警察は本当にこのような事件が起きても同じような行動を取るのだろうか。よくある誘拐事件を扱った小説や映画とは全く異なった犯人の行動は、当時としても今見ても、新しい犯罪者のイメージがある。
ラストが現実なのか妄想なのか、というのが問題とされるのも良くわかる。観客に委ねられているのだろうが、逆にいえば、どちらと判断するかでその観客の常識度がわかるということか。
wikiに興行的には失敗したが、多くの有名人が本作のデニーロを絶賛したとある。私はタクシードライバーの方がスゴいと感じたが、あちらのように狂気を暴力で表したのではなく、血生臭さもなく狂気を表した本作の方がよりスゴいということなのだろうか。