「和菓子のアン」シリーズの坂木司が和菓子をテーマに9人の作家たちに短編をリクエストして出来た10編のアンソロジー。作品は以下の通り。
空の春告鳥 坂木司
「アンと青春」に収められた作品。「飴細工の鳥」の言葉の意味。
トマどら 日明恩
警察官宇佐見に届けられる和菓子。宇佐見が和菓子屋藤吉にしたこととは。
チチとクズの国 牧野修
亡くなった父が経営していた店で自殺しようとした男がそこで父の幽霊と出会う。
迷宮の松露 近藤史恵
モロッコに旅をしていた主人公が日本人観光客と出会い道を教える。お礼にもらった松露は彼女の思い出の品だったが、その名前の由来を初めて知ることになる。
融雪 柴田よしき
高原でカフェを経営している主人公。常連客が連れてきた先輩に泡雪羹を出すとその先輩が学生時代の恋愛について語り始める。
糖質な彼女 木地雅映子
引きこもりの主人公は母親に連れられて病院へ。そこで大好きだったアイドルと出会うが…
日本が熱帯化した近未来。父と息子がお菓子の宮古を目指して旅を続ける。
古入道きたりて 恒川光太郎
渓谷を訪ねた主人公は雨に降られ老婆が住む家に泊めてもらう。老婆から古入道の話を聞いたその夜、彼も入道を目撃する。彼は戦地で戦友にその話をする…
しりとり 北村薫
知り合いの編集者から亡くなった夫が病室で書いた俳句を見せてもらう。それは一部分が書かれていない俳句だった。
甘き織姫 畠中恵
学生時代の友人たちが新婚家庭に集まる。ホストである男性が今日は来ていない友人から好きになった女性に告白をした際の謎解きを頼まれたと話し出す。本人も突然家に現れ、皆で謎解きをするが、解決したのはホストの新妻だった。
「和菓子のアン」シリーズが面白く、著者が提案したというアンソロジーを読んでみることに。
各短編の簡単な解説を最後に坂木氏自身がしているが、そこに書かれているように様々な作品が集まっている。和菓子がテーマなので似たような作品が多いのだろうと思って読み始めたが、どれも設定が個性的なものばかり。ハッキリ言えば、和菓子がメインではないのでは、と思う作品もある(笑
半分ぐらいの作家さんは未読の方。ちょっと不安もあったが、なかなか面白い作品が多かった。こうやって新しい作家を見つけるケースもあるのか。
やはり秀逸だったのは、北村薫さんの「しりとり」。いつも通りの「日常の謎」でありながら、和菓子がしっかりと謎の中心にいるのはさすが。
和菓子がテーマということでは、近藤史恵の「迷宮の松露」か。「和菓子のアン」シリーズでも度々驚かされた、和菓子の名前の由来にまつわる話でありながら、話のオチも爽やか。
柴田よしきの「融雪」と畠中恵の「甘き織姫」は、私好みの短編。恋愛に絡んだ短編はやっぱりサクッと読めて、ホッとするオチが良い。
小川一水「時じくの実の宮古へ」と恒川光太郎の「古入道きたりて」は、普段なら読まないような設定が斬新。近未来や怪奇と和菓子、という組み合わせ。
さて、アンソロジーも読んだので、「和菓子のアン」シリーズの最終巻を読んで観ますか。