●アンと幸福 坂木司
高校を卒業後、正社員就職も大学進学もしなかった梅本杏子(通称アン)は東京百貨店の地下の和菓子店「みつ屋」でアルバイトを始め、店長の椿、社員の立花、バイト仲間の桜井とともに働き始める。アンちゃんは、客に対する店長の鋭い推理に驚かされていく。
江戸と長崎
店長の椿が栄転し、店に新しい店長藤代がやってくる。男性のため苦手意識を持つアン。一緒に仕事をしていく中で、アンは客との会話中に割り込んでくる藤代に疑問を持つ。アンは桜井や立花にも相談するが、藤代が常連客の杉山や子供客に対する態度を見て、藤代の狙いに気づく。
秋ふかし
アンは立花の様子がおかしいことに気づくが、何も聞けなかった。アンは店に来た親子の子供から、サツマイモはご飯なのかお菓子なのか、と聞かれる。その後、老婦人の客がお菓子を指差して「トーマス」と言った意味がわからなかったが、青果担当の人間から、それは唐茄子のことではと教えてもらう。アンは地方とのつながりを意識することに。アンはイモに関する市民講座を受講する。また店にやってきた老婦人はからいもんを求めるが、アンはその言葉の意味をしっかりと理解できた。
掌の上
バレンタインの時期になり、店では手作り和菓子セットを売り出す。スーツ姿の男性客がきてお茶の席用にオーダーできる和菓子を買い求める。その後その男性から電話で包装についての注文が入る。翌週その男性客がやってきて、お茶会のことを話すが、それを聞いた桜井が、男性客のお茶会について懸念を持つ。アンは友人たちとお茶をした時の会話から、男性客の行動が衛生上の問題があることに気づき、男性客にそのことを伝える。
はしりとなごり
若い男性客2人が店にやってきて、和菓子のことを教えて欲しいと頼む。彼らは俳句の会に参加しており、その場に和菓子を持っていったが、何か間違っていたとのこと。話を聞いた藤代がその時のテーマについて調べ、疑問は解決、アンはさらに持って行く和菓子についてアドバイスをする。アンは藤代から正社員にならないかと誘われ悩む。数日後、アンは藤代に正社員になると返事をする。
お菓子の神さま
アンは正社員となる。椿から連絡があり、彼女の出張に同行することに。アンの出張期間と何かに悩んでいた立花が取った休暇は重なっていた。出張先は和歌山の橘本神社での菓子祭だった。椿と新幹線で大阪経由で行くことになり、ホテルに前泊。ホテル到着後、温泉へ行き夕食もともにする。翌日神社での仕事を手伝うが、そこに立花がいた。椿は立花にも仕事を手伝わせる。仕事が終わり、椿の気遣いでアンは立花とともにホテルへ先に帰ることに。そこで立花は最近様子がおかしかった理由を語り始める。そして店から去ることを告げる。
湯気と幸福
翌日、アンは椿、立花とアドベンチャーワールドでの1日を楽しむのだった。
シリーズ4作目にして最終作。
椿店長が店を離れ、新店長藤代がやってくる。藤代から正社員になることを誘われたアンはそれを受け入れる。正社員になったアンは、椿から出張に同行するよう求められる、という展開。
前作でも書いたが、このシリーズは小説内での時間がしっかりと進んでいる。「1冊で1年」のペースだったが、本作は前作の続きであり、バイトを始めて4年目を迎えるアンが、4年目の春に正社員になった、ということのようだ。
6話構成だが、アンが正社員の話を受けるのは4話目。そこまでの3話は、いつも通り店での出来事や客に関する謎についての話となっている。1話目は、新店長の行動の謎、2話目は、方言、3話目は客のとった行動の謎。これまでは和菓子に関する謎が多かったが、本作のこの3つは和菓子とは直接関係のない話になっているのが、少し残念か。
4話目も、和菓子ではなく、俳句に関する謎、といえば良いか。そして5話目、6話目は、アンが椿とともに出張する話となるが、本作の中でずっと描かれていた立花の元気のなさの理由が明かされる。
前作までシリーズを読み、本作が最終巻と知って、最後に描かれるのは、アンの就職と立花との恋愛だと思っていた。就職についてはまさに4話目で結論が出る。しかしアンと立花の恋愛については、少し肩透かしを食った感じ、と言えば良いかな(笑
2人がはっきりと付き合う訳でもなく、お互いの気持ちを告白するわけでもなく。5話目の2人の会話は、告白なのかもしれないけれど。まぁ本のタイトルが、「〜恋愛」ではなく、「〜幸福」だからこれで良いのか。
5話目のアンの涙は、本当に恵まれた仲間たちに囲まれた職場で働くことができた、ということなのだろう。椿、立花、桜井の3人が本当にアンのことが好きだということがよくわかる話だったし。
これでシリーズが終わるのは残念だが、坂木司さんの別の小説を読むことにしよう。
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