地下室のメロディー

●676 地下室のメロディー 1963

 シャルルが刑期を終え5年ぶりに家に帰る。妻が家で待っており二人は再会を楽しむ。妻は今ある金で南仏にホテルを買って暮らそうと提案するが、シャルルは最後の大仕事をすると言い出す。妻は2度逮捕されたことを指摘するが、シャルルは捕まったのは一人で仕事をしたからだと話す。

 シャルルは早速昔の仲間であるマリオの元を訪ねる。マリオはカンヌのカジノの図面を入手しておりシャルルに見せるが一緒に仕事はできないと話す。シャルルは刑務所で一緒だったフランシスに連絡を取る。

 フランシスは仕事にもつかず母親から怒鳴られる毎日を暮らしていた。彼は車の修理工である義兄から小遣いをせびっていた。シャルルはフランシスと会い、彼の義兄も仲間に入れることに。

 シャルルはフランシスに金を与え、カジノのあるホテルへ先に行かせ、ショーの舞台裏に入れるようにしておけと命じる。フランシスはショーの踊り子であるブリジットと仲良くなる。そして舞台裏にも入り、シャルルに命じられていた屋上へ通じるハシゴを発見する。

 準備が整ったところでシャルルがカンヌにやってくる。シャルルはカジノの売り上げを盗む計画を二人に話す。カジノの売り上げを支配人が運び出す様子を3人で観察、1週間後に計画を実行することに。

 当日フランシスはブリジットに一緒になろうと告げるが彼女の返事はNOだった。やりきれないフランシスは計画実行前に彼女のショーを見に行く。

 そして計画が実行される。しかしショーの最終日ということもあり踊り子や関係者たちが打ち上げをしていたため、フランシスは舞台裏のハシゴから屋上へ上がるのが遅れる。外で彼からのサインを待っていたシャルルたちは焦る。それでもフランシスは屋上から二人へサインを送り、計画通り通風口を通って、地下の金庫へ通じるエレベータに潜り込むことに成功する。

 支配人たちが金庫を開け金を取り出そうとしたところでフランシスは彼らの前へ。銃で脅し、外からの通路の扉を開けさせシャルルを呼び込む。そして金を奪い逃走。金はあらかじめフランシスが借りていたビーチの脱衣所に隠す。3人は安心して一晩を過ごす。

 翌朝シャルルは新聞を見て驚く。カジノでの盗難が記事となっていたが、カジノで撮影された写真にフランシスがはっきりと映っていたためだった。シャルルはフランシスに連絡、金を持ってビーチのバーに来るように指示する。フランシスは脱衣所に金を取りに行くが、すでにあたりは警察官でいっぱいだった。兼ねてからの打ち合わせ通り、脱衣所の窓から脱したフランシスはバーへ向かうが、シャルルのそばにも警察官がおり近づけなかった。仕方なく少し離れた場所にいたフランシスだったが、近く通り過ぎる警察官たちが、支配人に金を奪った犯人たちが持っていたカバンについて尋ねていた。支配人はカバンの特徴をよく覚えており、まさにフランシスが持っているカバンそのものだった。どうすることもできないフランシスは、カバンを隠そうとプールにカバンを沈める。しかしプールの中でカバンが開き、札束が水面に浮き出してしまう。シャルルもそれに気づくが何もできなかった。

 

 ジャンギャバンの映画は初めて観たかも。もちろん名前は昔から知っていたが。オープニングで、テーマ曲が流れて、アノ有名な曲がこの映画のテーマ曲だと初めて知った。

 

 年老いた泥棒が最後の仕事にカジノの売り上げを企む話。2時間弱の映画だが、ストーリーは単純明快で、よくこれだけの話で2時間もたせたなぁといった感じ。その分主人公2人と脇の義兄の心理描写などを細かく描いている。

 

 ダメな義弟に優しいながらも、仲間を売ることは完全に拒否する冒頭の義兄。ラスト近く、大金を楽に手にすることが自分の将来を危うくすることに気づき、分け前を辞退する生真面目さ。

 

 母親に定職につくよう言われても知らんぷりのフランシス。盗みのために踊り子に近づくが、いつの間にか本当に惚れてしまい結果フラれてしまう。それが大仕事上で唯一のミスであり致命傷となってしまう。

 

 そしてシャルル。5年ぶりにシャバに出て自宅のある街の変貌に驚くが、家で待ってくれていた妻に感謝を忘れない。しかし南仏で余生を過ごすことを拒否し最後の大仕事に取り組もうとする。ひょっとすると5年ぶりの街の変貌=時代の変化、に負けまいとして最後の大仕事をしようとしたのだろうか。

 

 泥棒の映画だが、ボスであるシャルルはその手口をなかなか明らかにしない。その分フランシス演じるアランドロンのホテルでの過ごし方が生き生きとしている。盗み当日、アクシデントでアランドロンがなかなか屋上へ行くことができないシーンはドキドキもの。その後のエレベータのシーンといい、単純な展開であるが緊張感ある場面となっている。

 そしてラスト。用意万端で仕組んだ仕事だったが、押し入った時に使ったカバンをそのまま使ったのが運の尽きとなる。あぁ3億円事件などで当初現金が入っていたジェラルミンケースが放置されていたのは、これが理由なのか。そりゃそうだよなぁ。

 

 主役の二人、ジャンギャバンとアランドロン。二人の名前が並んでいるのを見て、高倉健さんを思い出した。NHK健さんの特集インタビュー番組で、健さんが憧れの俳優としてあげたジャンギャバン。黄色いハンカチを取り上げた番組で、撮影時に宿泊した宿の女将さんが思い出として、夜遅くに帰ってきた健さんがその家の子供(娘)たちと話をしている際に「好きな俳優は?」と尋ねたところ、「アランドロン」と答えられたそうで、それに対し健さんが「アランドロンには高倉健もかなわんもんなあ」と答えたそう(笑

 

 あぁちょっと脱線してしまった。それにしてもジャンギャバンの映画、もっと観たいなぁ。