パッチ・アダムス

●749 パッチ・アダムス 1998

 1969年。人生の目的を失っていたアダムスは精神病院へ任意入院する。最初は他の患者の様子に驚くが、次第に彼らと接する事で彼らの心を開くことができることに気づく。患者のメルデルソンからは物の見方を教えてもらい、パッチというあだ名をつけられる。そしてパッチは人を助けるために医者になることを決意する。

 2年後。医大に入学したパッチだったが、最初に聞いた学部長の話や3年生になるまで患者に接することができないことに納得できなかった。パッチは講義を聞いた後、一緒に話を聞いていた女子学生カリンに声をかけるが、彼女は学校には勉強のために来ているとパッチを受け入れなかった。パッチは学友であるトルーマンと街を歩いている時に精肉業者の集いに参加し、彼らと話す。さらに壇上で挨拶をしそれを賞賛され、白衣をプレゼントされる。それを着てパッチは医師のふりをして病棟へ。

 子供達の大部屋に入ったパッチは道化をして彼らを喜ばす。しかし学部長に見つかってしまい、病棟への出入りを禁じられる。

 パッチは試験勉強のために友人たちと勉強会をする。そこへ来たカリンの前でもふざけるパッチだったが、カリンはそんな彼の態度を見て勉強会から去ってしまう。パッチは相変わらず病棟へ潜り込み、患者たちを笑わせていた。試験の結果が発表されパッチは好成績をとる。それを知ったカリンは彼を見直す。そしてカリンも含めた友人たちとともにパッチは大人の患者の夢を叶えてあげる。パッチは看護師も対応に困っているという305号室のがん患者ビルの部屋を訪れる。しかしその患者はパッチの態度を怒り追い出してしまう。

 パッチはまたも学部長に注意され、他の学生から苦情が出ていると言われる。友人のミッチが密告したと聞いたパッチは彼の元へ。ミッチは真面目に勉強している自分よりも好成績だったパッチの考え方を非難する。

 パッチは天使の格好をして305号室へ。そして死にゆく患者に予行演習だと言い、死を説明する言葉を話す。パッチのユーモアが患者に通じ、彼はパッチを受け入れる。

 パッチは学部長から学校で行われる産婦人科学会の接客役にパッチを指名する。彼は1人で準備をし、学会の入り口を女性の股間に見立てたオブジェを作る。激怒した学部長はパッチを退学処分にすると言い出す。困ったパッチは学長に相談に行き、処分を取り消してもらうが、病棟への出入りや学部長に近づくなと言われてしまう。305号室のビルの最期が訪れる。最期の時パッチはそっと彼に寄り添う。

 パッチは3年生になり患者と接することができるようになる。パッチはカリンを山へ連れて行き、ここに無料病院を作ると宣言する。金は精神病院時代の知り合いであるメルデルソンが出資していた。パッチはカリンや友人たちとともに無料病院で多くの患者を診ることに。そこへラリーという患者がやってくる。夜、パッチはカリンと2人だけで話をする。カリンは男性恐怖症だった過去を話し、パッチと付き合うことに。

 無料病院は忙しく、医療器具が不足し始める。パッチは学校の病院から盗めば良いと言い、トルーマンが取りに行くことに。その夜無料病院へラリーから電話が入り、誰かに来て欲しいと言われ、カリンが彼の家へ出向くことに。

 翌日パッチは学長から呼ばれ、カリンがラリーに殺され、ラリーも自殺したと聞かされる。葬儀が行われ、皆が去った後の墓地でパッチはカリンへの詩を読み上げる。パッチは自分のせいでカリンが死んだと考え、無料病院から去る決意をする。トルーマンが止めるがパッチは出て行く。学校の持ち物も片付け始めたパッチをミッチが止めるようとするがパッチは聞かなかった。ミッチは212号室の患者が何も食べない、君から学びたいと話すが、パッチは去って行ってしまう。

 パッチはカリンと見た風景を見に山へ。そこで神へ問いかけ自殺を考える。しかしその時パッチのカバンに蝶々が止まる。それを見たパッチは学校へ戻り、ミッチに声をかける。そしてかつて聞いた患者の夢、パスタの風呂に入りたいという望みを叶える。

 しかし学部長はパッチを退学処分にする。困ったパッチはトルーマンやミッチに相談、州医事当局に訴えることに。パッチの審査委員会が開かれる。委員に医師免許なしで無料病院で医療行為をしていたことを指摘されたパッチは、患者は患者であり医者でもあると話し、自分の考えを訴える。審議が休憩に入った時、部屋に多くの子供の患者たちがやってくる。彼らは一斉に赤い鼻をつける。

 委員会から結果が報告される。パッチの行為全てが認められはしなかったが、彼の熱意は認められ退学処分は撤回される。

 そして卒業式。パッチは卒業証書を受け取る。学部長はやっと協調生を学んだかと声をかけるが、パッチの背中が空いた服を着ており、それを見た聴衆は大喝采する。

 

 映画紹介のサムネイルを見て、観た記憶があったのだが、初見だった。ロビンウィリアム主演で人情系の話なので面白いのは間違いないと思ったが、その通りだった。

 

 人生に絶望した男が精神病院で人を助けることに意義を見出し医者になる。それまでのどこか高圧的な医療に対し、患者に寄り添う形での医療を目指す話。しかも実話がベースらしい。

 主人公が成功して行くメインエピソードももちろん良いが、サブエピソードの数々が本当に良く出来ている。

 

 大部屋の子供たちを笑わせる、大人の患者の夢を実現させる。学会の場所の入り口に作る卑猥なオブジェ。主人公を敵対していた同級生がラスト助けを求めるシーン。そして委員会の休憩中に入ってくる子供たち。もちろん全てが現実にあったエピソードとは思わないが、どのサブエピソードもこの映画には必要だと思わせてくれた。

 

 恋人の死は映画のために作られたエピソードなのだろう(モデルとなった医師のwikiにはそんな記載はないので)。随分と悲劇的な話だが、主人公が成功し続けるだけでは映画が平坦になってしまうので、これも必要だったのかと思える。蝶々のシーンはどうやって撮影したのだろう。カバンにとまる蝶々はまだしも、主人公の服へ飛んで行く蝶々はさすがに少し泣けた。

 

 50年前の医療現場はこんな風だったんだろうなぁ。本作の主人公1人が全てを変えたとは思わないが、後進の医師たちには大きな影響を与えたのだろう。この映画も含めて。