ダンケルク

●777 ダンケルク 2017

 第二次世界大戦、連合軍はドイツの攻勢を許し、フランスダンケルク海岸までの押し込まれていた。撤退が始まるが、兵士を乗せるための巡視船はわずかな数しか来ず、40万と言われる兵士たちは海岸で撤退できるのを待っていた。

 陸軍兵士トミーは舞台が全滅したため海岸へ逃げ延びる。そこで多くの連合軍兵士が撤退するための船を待っているのを目撃、偶然知り合った兵士とともに病人を担架に乗せ船に乗船しようとするが叶わなかった。次の船に乗り込むことに成功し安堵するが、その船もドイツ軍の魚雷に狙われ沈没。なんとか海岸まで泳いで戻ることに。

 遊覧船の船主ドーソンは船を徴収され、フランスダンケルク海岸の兵士を撤退させるために出発する。息子とその友人も同乗しフランスへ向かう。途中、転覆した船に残された兵士を助けるが、彼は戦場での恐怖からイギリスへ帰りたいと反対、もみ合いになった末、息子の友人を船室に落として怪我させてしまう。

 ダンケルク海岸上空では、撤退する兵士たちを乗せた船をドイツ空軍の戦闘機が狙う。それを阻止しようと連合軍戦闘機が戦う。ドイツ軍戦闘機を壊滅させるが、自軍の戦闘機もやられ死傷者が出る。なんとか不時着した戦闘機もハッチが開かず脱出できずにいたが、通りかかったドーソンがハッチを叩き割ることで脱出に成功する。

 

 トミーたちは海岸に打ち捨てられた商船を発見、仲間たちとともにその船に乗り込む。満潮になれば商船で逃げることができるためだった。しかしその船もドイツ軍に狙われ、船内に水が入ってくる。船を浮かすために仲間内で言い争いが起きるが、浸水は続き、皆は何とか脱出。

 ドーソンたち民間船が海岸に到着、次々と兵士たちを撤退させる。その時ドーソンの息子の友人はすでに亡くなっていた。

 撤退作戦は成功し、33万の兵士が撤退に成功したと新聞は伝える。故郷に戻った兵士は戦争に負けたことを非難されると恐れていたが、待っていた人々は彼らを温かく出迎えるのだった。ドーソンの息子は友人のことを新聞社に伝え、彼を称える記事が掲載される。

 

 

 街でドイツ軍に攻撃され所属していた部隊が全滅し1人残った陸軍兵士、民間遊覧船でありながら徴収され撤退作戦に臨んだ船主、撤退をしようとする連合軍の巡視艦を攻撃してくるドイツ軍戦闘機を迎え撃つ空軍パイロット、3者の視点でこの撤退作戦が描かれる。

 通常戦争を描いた映画だと、主人公がいてその視点で描かれることが多いが、本作はそれを拒否しているかのように3者の視点で描き続ける。同じ撤退作戦に関わる3者、陸海空それぞれの困難さが前半で描かれ、後半では3者がそれぞれ絡み合っていく姿を描く。しかもカットバックで3者の視点を素早く入れ替えることで、戦場の緊張感も高まっている。

 いやぁ見事だなぁ。ここ最近黒澤明監督や渥美さんの「拝啓」シリーズなど、反戦がテーマの映画を何本か観てきたが、本作は戦場そのものをリアルに描くことで、その怖さや愚かさを観客に感じさせている。尺も実質100分ほどと無駄に長くないし。

 本作のノーラン監督は好き嫌いが分かれる監督らしいが、作品は本作が初見。他の作品を観ることがあったら覚えておこう(笑