蛍火ノ宿 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

●蛍火ノ宿 居眠り磐音江戸双紙 佐伯泰英

 磐音シリーズ第16作。季節は秋。今津屋後添え佐紀の姉香奈と大塚左門猿江村騒動、白鶴身請け騒動〜身請け話、禿殺し、見世番殺し、容疑者特定から解決へ。

 前々作で色々と一段落し、前作では盗賊話が中心的な話で今後の展開がどうなるかと思ったが、今作16作では、とうとう白鶴の身請け話が進み、白鶴が吉原から落籍される。

 磐音シリーズはもともと豊後関前藩の騒動によりその仲を裂かれた磐音が許嫁奈緒を探し追い求めるところから始まった話。第5作で奈緒は吉原に入ることが決まり、その辺りで磐音が奈緒と一緒になることを諦め始め、奈緒を見守っていた。おこんとの関わりも深まり、前作では父正睦に引きあわせるところまで進んでいたので、奈緒とのことはもう決着をつけなくてはいけない、ということだろう。

 しかしここまで16冊、一度も会うことができなかった磐音がとうとう奈緒と会うことに。最初は襖越しの会話のみでの別れ、となるかと思いきや、最後の最後で…。さすがに佐伯さんも粋な演出をする。このシリーズを読み始めたのは、この2人がきっとまた出会える、と思っていたからだったし、5作で吉原に入った後もどこかで、と期待していたが、やはりオジサンの読者が多いであろうこのシリーズ(笑、そんなに甘い結末は待っていなかった、ということか。

 ただちょっと思ったのは、白鶴の落籍を妨害する一味の探索話が後半の3章分ほど続くが、犯人の正体とその犯行内容があまり一致しているとは思えず、もっと大きな敵か思っていたので、正体が知れて残念だった。

 繰り返しになるが、この後もシリーズが続くことは知っているが、この16作である意味この長いシリーズも一区切り、ということ。また新しい展開を期待したい。