幸せへのまわり道

●584 幸せへのまわり道 2019

 人気子供番組の司会者ロジャースが写真で友人を紹介する。その一人、ロイドの物語が語られる。

 ロイドは雑誌記者であり大きな賞を受賞するような敏腕記者だった。彼は妻アンドレアとの間に子供が生まれたばかり。姉の結婚式に出席するが、そこには母や自分たちを捨てた父ジェリーも出席していた。ロイドはジェリーと会話するが、怒ってケンカになってしまう。

 会社で上司からロジャースのインタビュー記事を依頼されたロイド。早速番組収録の場に行くが、そこでのロジャースの言動に興味を持つ。ロジャースと会話してみるが、彼はロイドと父との関係がうまくいっていないことを見抜く。

 ロジャースの人間性に興味を抱いたロイドはさらにインタビューを続ける。しかしまたも父とのことを話されインタビュー途中で帰ってしまう。家に戻ったロイド、家に父ジェリーが内縁の妻を伴い訪ねてきていた。ジェリーはロイドとの間を修復しようとしていたが、ロイドはまたも激怒し父を叱責する。それを聞いたジェリーは倒れてしまう。病院へ付き添ったロイドだったが、父のことよりも、とロジャースのインタビューに出かけてしまう。

 番組収録の現場へ行ったロイドだったが、自分が番組に参加しているかのような錯覚を起こし気絶してしまう。目を覚ましたロイドがいたのは、ロジャースの家だった。彼に誘われ食事に出かけるロイド。そこでロジャースから、自分を愛してくれた人のことを1分間でいいので思い出してみようと言われる。

 家に戻ったロイドは妻に病院での出来事を謝罪、父に会いに行くと話す。父の家に行ったロイドは父と会話をし、父から昔のことの謝罪を受ける。父が長くないと感じたロイドは父の家で寝泊まりすることに。そして姉夫婦も呼び、久しぶりに家族団欒の場が訪れる。そこへロジャースもやってきて皆で会話をする。間も無く父は亡くなる。

 ロジャースの番組のシーンに戻る。彼はロイドたちの家族写真を紹介、収録は終わる。収録を終えたロジャースはピアノを弾く。

 

 実話を基にしたストーリー。そのため大きな事件などは起こらず話は静かに展開するが、自分にとっては「刺さる」話だった。

 肉親に対する怒りは、人生の中で最も大きな怒りとなると思う。今まさにそのような状態にある自分にとって、興味深く観ることができた作品だった。はやりの言葉で言えばアンガーマネージメントということになるのだろう。ロジャースがどのように主人公の怒りをコントロールするのかが気になったが、レストランでの食事シーンがその決定打なのだろう。しかし自分にとっては、それも空振りに終わってしまった(笑 実際の人生は映画のようにはいかないよね。

 それでも本作の主人公は、ロジャースの言葉によって救われる。ラストの家族団欒のシーンは本当に良かった。さらに映画の本当のラスト、ロジャースが番組収録を終え、ピアノを弾きながら、一度だけ低音の鍵盤を叩きつける場面。これはロジャース本人が言っていたアンガーメネージメンとの一つ。ロジャースさえもまだ怒りを持つことが当たり前だと知らされる。

 トムハンクスの抑えた演技も素晴らしい。この人は何をやらせても本当に上手い。