みをつくし料理帖

●585 みをつくし料理帖 2020

 前半。原作シリーズ1冊目のストーリーをほぼ忠実にたどる。原作1冊目から

 江戸の料理屋つる屋で働く澪。大阪淀川の決壊で両親を失った澪は天満一兆庵の女将芳に拾われ天満一兆庵で奉公するが店が火事にあい、店の若旦那佐兵衛を頼って江戸に出てくる。しかし佐兵衛は行方不明となり、主人嘉兵衛は亡くなってしまう。

 澪はつる屋に勤めながら、芳と暮らしつつ天満一兆庵の再建を夢見ている。澪が考えた料理でつる屋は繁盛し、料理番付に名前が載るほどになる。しかし名店登龍楼が店のそばにできたことでつる屋はピンチに陥る。さらに登龍楼の仕業と思われる付け火をされつる屋は火事で全焼してしまう。しかしあさひ大夫から10両を受け取り、それを元に店を再建、あさひ大夫にお礼の手紙を出す。

 

 後半。公式によれば原作2作目3作目が基になっているらしい。

 再建されたつる屋も繁盛、様々な客が常連となる。その一人、戯作者の清右衛門が幻の大夫と言われるあさひ大夫のことを調べ始める。その頃、あさひ大夫のいる翁屋で客が暴れ、それが基であさひ大夫は怪我をしてしまう。澪は大夫のために料理を作る。そんな澪に大夫の使いのものがやってくる。大夫のことを調べているとの噂が流れ、それを聞いた又次が、大夫を守るためには何をするかわからないので、又次にそんなことをさせないで欲しいとの願いだった。

 つる屋で清右衛門が、大夫の情報を持ってきた男と話をする。その男は両親を失った野江を女郎屋に売った張本人だった。そこへ又次がやってきて、清右衛門を殴り、男を刺そうとするのを澪が大夫の言葉を伝え、なんとか止める。又次と大夫はお互いに相手の命を救ったことがあるのだった。

 澪は清右衛門に自分の料理を美味しいと思ったら、一つ願いを聞いて欲しいという勝負を持ちかける。医師源斉に料理本を集めてもらい、新たな料理を作る澪。そして鼈甲珠を作り上げ、清右衛門との勝負に勝ち、大夫とのことを告白、戯作にするのをやめてもらう。それを聞いた清右衛門は、澪が料理人として成功し4000両で大夫を身請けすれば良いと話す。その話を小松原が聞いていた。小松原には縁談が持ち込まれており、澪は自分の小松原に対する気持ちに気づいていたが、小松原は澪が頑張れば4000両を稼ぐことは不可能ではないと告げ去って行く。

 2年ぶりの吉原の俄に出かけた澪は、又次に呼ばれる。そこで野江との再会を果たし、二人は久しぶりの会話をする。

 

 原作1作目で書いたが、映画を観たと思っていたが、ブログに記事がなかったため、映画を観てみた。結論から言えば、映画は初見。どうもドラマの方と勘違いしていたようだ。この映画なら観れば角川映画だとすぐにわかる。何しろ、かつて角川映画で活躍した俳優さんたちが無駄でしょっていうほど目白押しだから(笑

 原作に惚れ込んだという角川春樹が監督をしているだけあり、映画前半は原作1作目のエピソードを上手く表現していたと思う。映画後半は、原作2作目3作目に当たると思われるが未読のためよくわからないが、話は戯作者清右衛門と大夫、又次の関わり合いに焦点が絞られている(他のエピソードも若干あるが)。

 ネットの口コミでも指摘されているが、本作は原作を読んでいないと首をかしげるシーンが多いのではないか。原作の名場面は映像化されているが、そこに至った登場人物の背景や心理描写などが省かれているためだ。どうしても必要と思われる過去のシーンは映像化されているが、やはり2時間強の尺に、原作3冊分を詰め込むのは無理があったと思わざるを得ない。せめて原作1作目に絞り、ラストは原作通り澪から野江への手紙で終わる、つまり映画前半終了場面で終わらせれば良かったのでは?

 本作を観たことで原作の2作目以降のネタばらしになってしまったのは残念だが仕方ない。楽しみに原作の続きを読むことにしよう。