小説家を見つけたら

●588 小説家を見つけたら 2000

 ブロンクスで友人たちとバスケットボールをするジャマールは16歳。読書が好きでノートに文章を書き溜めている。友人たちとの話題は、彼らがバスケをしているコートのそばのマンションの一室からこちらを覗き見ている老人のことだった。

 ある時、度胸試しにその老人の部屋に忍び込むこととなったジャマール。見事に忍び込むが、老人が起きてきたため慌てて部屋から逃げ出す。そして部屋に自分のバッグを忘れてきてしまう。

 しばらく後、そのマンションをそばを歩いていると自分のバッグが上から落ちてくる。ジャマールはそれを拾うが、中にあったノートの文章に赤字で多くの批評が書かれていた。ジャマールは老人を訪ねるが、けんもほろろに追い返されてしまう。

 ジャマールの学校での成績は普通だったが、一斉テストで好成績を収める。それを知った私立メイラー校がジャマールをスカウトに来る。学費は無料にされると聞くがジャマールは転校するかどうかを迷う。そして老人の家を訪ね相談をする。老人は彼の迷いの答えは今の学校では見つからない、とアドバイスする。

 メイラー校に通い始めたジャマールはクレアという女子生徒と仲良くなる。ある日彼女が読んでいた本の著者の写真を見、それがあの老人だと気づく。老人は幻の作家と言われるウィリアムフォレスターだった。ジャマールはフォレスターに会いに行き、文章に関して教えを請う。フォレスターはいくつかの条件とともにこの部屋で書いた文章は持ち出さないことを条件にジャマールを受け入れる。

 ジャマールはフォレスターと仲良くなり、ともに過ごす時間が長くなる。学校でもバスケのレギュラーとして活躍をする一方で、その文章が評価され始める。授業で作文コンテストが行われることになる。担当教師であるクロフォードはジャマールの文章がウマすぎることに疑念を抱く。それを知ったジャマールは授業でクロフォードに恥をかかせ、作文としてフォレスターの部屋で書いた文章を提出する。

 クロフォードはその文章のタイトルと出だしの文章が以前フォレスターによって書かれたものと同じであることを発見、ジャマールの作文をコンテストから外すことに。ジャマールの懲罰に関して、バスケの試合での活躍が認められ、学校を優勝させれば、作文のけんは不問にすることに。

 しかし優勝がかかった試合の最後でジャマールはフリースローを外してしまい優勝を逃してしまう。コンテスト発表当日、フォレスターが学校に現れスピーチを行う。教師たちはフォレスターの文章を絶賛するが、彼はその文章はジャマールによって書かれたもので、自分とジャマールは友人であると宣言する。ジャマールの盗作疑惑は払拭される。コンテストが終わり、フォレスターは久しぶりに故郷へ帰ることを決意する。

 ジャマールの最終年度、フォレスターの弁護士が彼を訪ねて来る。そしてフォレスターが死んだことを告げ、彼の手紙をジャマールに渡す。

 

 普通に良作と思える作品。外出もせず窓から外を眺めることを趣味にしている、著作1冊だけの幻の作家と、バスケも読書も好きで書く文章に才能がある高校生の組み合わせが良い。ただ高校生が黒人であったのはちょっと盛りすぎかも。映画冒頭でブロンクスの風景が映し出されそんな街によくいる若者、という意味があるのだろうけど。

 映画で素晴らしい才能を持った作家や画家が描かれることがあるが、実は表現は難しい。実在する文豪などなら問題ないだろうが、本作のような架空の作家を大家として描くのは、やはり難しいと思う。その分本作では、外出もせず著作も1冊しかない、という表現でそれをうまくごまかしているように見える。

 中盤、話が少しゴチャゴチャするが、終盤のコンテストでのフォレスターのスピーチは感動的。もちろんその後の展開も。ただ、ラストのフォレスターの死については冗長だったように思えるがどうなんだろう?

 良作であることは間違いないが、ポイントポイントで少し話がぼやけてしまっているように感じられるのは残念。