ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

●589 ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 2017

 1966年、アメリカはベトナム戦争で苦戦をしていた。軍に同行取材したダニエルは政府が発表する戦争の状況に疑問に持つ。

 1971年、ダニエルは勤務先であるランド研究所からベトナム戦争に関わる文書ペンタゴンペーパーを盗み出しコピー、NYタイムズ社に渡す。タイムズ社はスクープとして文書の記事を掲載する。

 タイムズ社のライバル社であるポスト紙も文書の入手をしようとするができなかったため、編集長ベンは社長キャサリンに、友人である国務長官マクナマラから文書を入手するよう依頼する。その頃ポスト紙は株式上場を計画していた。ポスト紙に謎の女性が文書を持ち込む。ベンは必死にそれを記事にしようとするが、タイムズ社が先に第2弾の記事をスクープする。しかし政府はタイムズ社に記事差し止めを要求する。

 ポスト紙の記者がタイムズ社に文書をスクープした人間に接触、文書すべてを入手する。ベンはそれを記事にするため全力を挙げる。スクープ記事の印刷が開始される直前になり、ポスト紙の法律顧問たちは、記事掲載は政府の要求に引っかかり、最悪逮捕牢獄される危険性を述べ、記事にすることを辞めるようにベンやキャサリンに提言する。

 ベンと法律顧問、取締役などが激論を交わし、最終判断をキャサリンに求める。キャサリンは新聞社の使命を優先、記事を掲載することを決定する。ポスト紙はタイムズ社と共に裁判にかけられるが、他の地方紙もポスト紙に追随、スクープ記事を掲載し始める。世論が味方についたこともあり、最終的に裁判でポスト紙タイムズ社は勝利する。

 

 こんな事件があったのは全く知らなかった。これこそが「報道の自由」。スピルバーグが早急に映画化した理由は納得。ネットが攻勢となり、オールドメディアである新聞社が2013年に売却された後の映画化なので、余計に意味を持つのだろう。

 単なる報道の自由の闘争だったわけではなく、ポスト紙にとっては株式上場と時期が重なるという大変な時期にこの決断をした女性社長の心意気がしみる。それがラスト、裁判所から出てきた社長を待ち構える女性たちの姿に現れている。戦争に行かされた家族や恋人を持つ女性たち、という無言のメッセージなのだろう。

 ポスト紙に対する苦言を発する大統領の言葉の裏で、ラスト次の事件が少しだけ描かれるのも憎い演出。50年前、新聞は国とまさに闘っていたという事実。