動乱

●624 動乱 1980

 第一部

 昭和7年、仙台。宮城大尉の部隊から少年溝口が脱走する。実家付近を探し溝口を発見、溝口の姉、薫が女郎屋に売られると知らせたためだった。宮城はその場で薫と出会うが溝口は追って来た上官を射殺してしまう。宮城は溝口を庇おうとするが上官は認めず、溝口は死刑となる。遺体を実家に運んだ際に宮城は溝口の姉薫に金を渡す。

 東京では515事件が発生。軍内部を二分することになる。

 数ヶ月後、宮城は朝鮮戦線に赴任。慰労会が開かれ女郎達がやってくるが、その中に薫がいた。宮城は薫と話すが、薫は今の方が楽だと答える。宮城はそんな薫を置いて出て行く。宮城は軍の品の横流しを発見し上官に告訴を訴えるが、上官はそれを退けようと薫の話を持ち出す。薫はあの晩自殺を図っていた。

 宮城の部隊が戦線で苦戦する。武器弾薬や医療品、食料もない状態で戦闘を続けさせられ、部隊の兵にも不満が高まっていた。

 第二部

 昭和10年。宮城は薫を連れ東京へ戻っていた。宮城の家に若い兵たちが集まり政治や財閥に支配される日本を憂いていた。そんな宮城は憲兵に見張られていた。宮城は薫を連れ鳥取にいる恩師神崎を訪ね、対抗派閥の水沼を斬ると宣言するが、神崎はその役目は自分がすると答える。薫は自分を同行させたのは隠れ蓑だったのかと話し、抱いて欲しいと訴える。

 神崎が水沼を斬る。宮城は憲兵に呼ばれ取り調べを受けるがその最中に毒を飲まされる。薫は憲兵に助けを求め、薬をもらい宮城は回復する。神崎の行動で機運が高まり、クーデターを実行することに。宮城はその夜初めて薫を抱く。そして226事件が実行される。当初計画は上手くいったように思えたが、天皇の命もあり宮城たちは逆賊として扱われ逮捕される。正式な妻でない薫は宮城と面会もできないため宮城の父の助けを借りて籍を入れ、宮城と面会。しかしその後宮城は死刑となる。

 

 現在、小田貴月が健さんのことを書いた2冊目の著書を読んでいる。その中で健さんが語った映画の一本が本作。これまで観たことがなく良い機会だと思い鑑賞。

 2時間半の長尺だが、日本映画では珍しい最初の1時間とその後で別れる2部構成。

 第1部は、健さん吉永小百合の出会いと当時の日本軍の内情が、そして第2部では226事件へ向けた動きと健さん吉永小百合の愛の行方が描かれる。健さん目線で描かれるため、226事件を起こした青年将校たちの思いに共感できてしまう。しかし現在ビッグコミックオリジナルで連載中の「昭和天皇物語」も読んでおり、そちらでの描かれ方と随分と違うことに戸惑ってしまった。そこでwikiで調べたが、やはりこの映画は右傾化戦争映画の走りと言われているようで、内容に対する批判も多いようだ。

 製作側としては、健さん吉永小百合の恋愛モノを作るとなれば、これぐらいの悲哀を描かなくてはいけなかったのだろうが、歴史を曲げちゃダメだよなぁ。

 

 でもまぁ久しぶりに未見の健さん映画を観れたので良しとしよう。50手前の健さんのカッコよさと35歳の吉永小百合さんの嘘みたいな美しさだけ覚えておくこととする。