消える密室の殺人 猫探偵正太郎上京 柴田よしき

●消える密室の殺人 猫探偵正太郎上京 柴田よしき

 同居人で推理作家の桜川ひとみが突然飼い猫正太郎を連れて上京する。おなじみS出版に向かった桜川は編集者糸山に怒りをぶつけ、彼は桜川の怒りをおさめるためにホテルへ案内、一緒に連れていけない正太郎は猫モデルたちの写真集撮影の現場へ連れて行かれる。

 正太郎は多くのモデル猫たちと出会い、そこで寝泊まりすることに。2日目の夜、撮影現場であるS出版内の小屋の中で毒殺死体が発見される。そこではモデル猫の一匹デビットも毒殺されていた。

 正太郎は人間はともかく、仲間である猫を殺した犯人探しを始める。

 

 探偵猫正太郎シリーズの第2作。前作「柚木野山荘の惨劇」がクローズドサークルものだったのに対し、本作は密室殺人。しかもその状況から、犯人の脱出手段はもちろん、被害者がどうやって密室内へ入ったかも不明な状態だった…。

 

 前作同様、猫目線で書かれているのが本作最大の特徴。そのため特に初めて出会う人間たちについての描写も猫目線であるため、誰が誰かわかりづらい(人間を名前で表現しない)のがちょっと残念だが、読み進めていけば当然わかるようになっている。

 また前作では人間の探偵役がおり、彼が事件の一部を解決していくのだが、本作では正太郎がほぼ事件全体を解決している。しかし真相に気づいても正太郎は人間にそれを話すことはできないため、ある手段を使って人間にメッセージを送る。それが「間馬白階」。前作にも登場した猫が人間に言葉を伝えるシーンだが、誤字だらけなのが可笑しい。それでもそれに気づく刑事がいたのがスゴい(笑

 

 事件のトリック?としては、ミステリで一番やってはいけない手法を使っているので評価はできないが、このシリーズはそこがウリではないので良しとしましょう。本作のウリは正太郎をはじめとする猫たちの会話とその考え方。仲間の死も悲しいと考えるわけでもなく、生きている以上死は当たり前のもの、というのが正太郎の考え方で、こちらもドキッとさせられた。

 

 前作で登場したヒロインとの再会があるかと匂わせて会えない、というのもなかなか。この後、本格的に「猫探偵正太郎の冒険」シリーズとなっていくようなので、お楽しみはそちらへ、ということだろう。