高倉健 七つの顔を隠し続けた男 森功

高倉健 七つの顔を隠し続けた男 森功

 ノンフィクション作家による高倉健さんの実像に迫った著書。子供時代のことから上京し俳優になり、俳優として大成、江利チエミとの結婚、離婚騒動など、健さんの生涯を関係者へのインタビューなどから明かしていく。

 

 健さんの養女が記した2冊の本を読んだ際に、Amazonのレビューで知った一冊。養女が書いた本に否定的なレビューで取り上げられており、こちらの方が信用できると書かれていたため読んでみた。

 

 健さんの上京後の暮らしや江利チエミさんとの結婚生活と破綻など、知らないことが多かったが、内容としては30、40年前の週刊誌を読んでいるような印象が強かった。健さんのことももちろん書かれているが、健さんが関わった人に関する記述も多く、それも裏社会や犯罪を犯した関係者などについてが多く、結局は健さんにとっては都合の悪いことを暴いているようにしか読めなかった。

 

 問題となる養女に関しては、養女の著書が出版される前の状態のため、推測やデタラメな記述がほとんど。唯一そうでないのは、先に書いた養女の書いた本のレビューを批判している人々が指摘する健さんの血縁関係にある人の証言。健さんの死に目にも会えず、遺骨や遺品も見せてもらえないことを嘆いている。

 

 本作を読んで改めて思ったのは、養女は健さんと彼の死後についての話をどこまでしたのだろうということ。養女の本によれば、自分のことを書いて欲しいと頼まれたことだけが健さんのメッセージのように思える(もう一つあるがそれは後述)。もちろん養女の本に記載されていないことが二人の会話の中にあったのかもしれないのだけれど。

 この一言で養女が一連の行動をとったとしても、私は養女を批判する立場は取らないけどなぁ。親が死んで(養女は健さんの「娘」なのだから)子供が親の遺骨遺品の整理や遺産をどのようにしようとも、その親の兄弟や親類縁者がどうのこうの言うのはちょっとおかしいと思う。もちろん批判はしたくなるだろうけど。

 健さんのもう一つの願いは、弱った自分を誰にも見せたくない、と言うことだったと養女の本に記されている。それは健さんのファンとしてはとてもよく理解できる。健さんは最後まで健さんのイメージを守りたかったのだろうから。それは親類縁者にも同じことが言える、と養女が考えたとしても不思議ではない。

 

 何か養女を擁護する立場で書いているみたいになってしまったが、私も養女の書いた本に違和感がないわけではない。偶然にも今日(2023年6月8日)、「徹子の部屋」に養女が出演しているのを見た。あの本に記載されていたことを徹子さんに話していただけだったが、失礼だが養女が表舞台に出てくるのは違和感しかないと感じる。偉大だった俳優健さんの記憶が皆からなくならないように陰で支えるのが養女の最後の役割だと思うのだが。