シェルブールの雨傘

●629 シェルブールの雨傘 1964

 第一部 出発

 ギイは自動車修理工場で働く20歳の男性。恋人ジュヌビエーブと芝居を見たり踊りに行ったりとデートを重ねる幸せな日々を過ごす。ギイは結婚してガソリンスタンドをする夢を持っていた。しかしジュヌビエーブの母は彼女が17歳と若いため結婚は早いと反対する。

 ある日ジュヌビエーブの母が経営する傘屋に税金の支払いの督促状が届く。金がない母は宝石店に自分の宝石を売りに行くが店主は買い取ってくれなかった。しかしその場にいた宝石商カサールがその宝石を購入すると話す。翌日、店にカサールがきて宝石の代金を支払う。その時ジュヌビエーブはギイと会っていたが、ギイに召集令状が届き2年間兵役に取られることに。行かないで欲しいと頼むジュヌビエーブだったが、ギイは行くしかなかった。その夜ギイは叔母と住む家に彼女を連れ込む。翌日ギイは兵役を務めるために旅立つ。ジュヌビエーブは駅で彼を見送る。

 第二部 不在

 ジュヌビエーブの母がカサールを夕食に招待する。しかしジュヌビエーブはギイからの手紙が来ないため落ち込んでいた。彼女はギイの子供を身ごもっていた。食事の場を調子が悪いとジュヌビエーブは退席する。カサールはジュヌビエーブの母に彼女と結婚したいと申し出て、3ヶ月間留守にするので、帰ってきたら返事が欲しいと話す。

 ジュヌビエーブはギイからの手紙を読みつつ、カサールへの返事に迷っていた。彼女は妊娠していることをカサールには告げていなかったためだった。妊娠を知って気が変わるならカサールの気持ちは本物ではないと考える。カサールが帰ってきて、ジュヌビエーブの妊娠を知るが、一緒にその子供を育てたいと話す。ジュヌビエーブはカサールと結婚をする。

 第三部 帰還

 ギイが戦場で負傷し帰ってくる。彼はジュヌビエーブの母の店を訪ねるが既に引越しをしたあとだった。ギイは元の修理工場で働き始めるが、ミスを犯し店主と喧嘩となり仕事を辞めてしまう。他の店でも揉め事を犯したギイは娼婦を買うが心は晴れなかった。家に戻るとマドレーヌが叔母が死んだと告げる。叔母の看病のため同居していたマドレーヌは家を出て行くと話すが、ギイは一緒にいて欲しいと頼む。ギイは叔母の残した財産で新しくガソリンスタンドを始めることに。そしてギイはマドレーヌと結婚する。

 数年後、ガソリンスタンドで暮らすギイは、妻マドレーヌとクリスマスの飾り付けをしていた。息子と買い物に出かけるという彼女を見送ったあと、店にジュヌビエーブが娘とともにやってくる。お互いのことを少し話した後、彼女は店から去って行く。そこへマドレーヌと息子が帰ってきて、ギイは息子と仲良く遊ぶのだった。

 

 テーマ曲が有名で映画音楽大全集のようなアルバムを昔からよく聞いていたが、映画は初見。しかも内容も全く知らず。

 冒頭いきなり有名なテーマ曲で始まるが、その後は軽快な音楽に切り替わり、修理工場のシーンへ。ミュージカルとなるが、あぁこんな感じが始まるのかと思いきや、そのままずっとミュージカルで話が続いたのに驚いた。セリフ全てが歌になっている映画は初めて観た。

 ストーリーは至極ベタなラブストーリー。若いカップルが恋に落ちるが、男が兵役で留守にする間に女が別の男性と結婚する、というもの。しかし主人公ギイは何も悪くないのに、このジュヌビエーブはどうなのよ、というのが正直な感想。60年前のフランスではこれが当たり前だったのだろうか。ギイがマドレーヌと結ばれるのでまだ救いがあったが。男目線で言えばとても受け入れられない話だと思うが、女性たちはジュヌビエーブを支持したのだろうか。

 映画としてはラスト5分があまりに切なく、これが名作とされた所以なのだろうけど。二人が話していた子供の名前をそれぞれにつけていたのがちょっと救いか。

 

 蛇足。冒頭、街の通りを真上から撮影、傘をクルクルと回すシーンがある。男はつらいよの中で、雨の日リリーを駅まで迎えに行った寅さんが相合傘で帰るシーンで、寅さんが番傘をクルクルと回す。この映画へのオマージュか。もう一つ。ラスト、かつて愛し合った二人が数年ぶりに再会するが、お互いの子供にかつて二人の子供として考えていた名前がつけられているとわかるシーン。「ラ・ラ・ランド」のラストを思い出した。これもこの映画へのオマージュかも。

 

 しかしあの有名なテーマ曲、場面によって歌詞が違うのね。初めて知った。