ミザリー

●657 ミザリー 1990

 シェルダンはミザリーシリーズで人気の作家。シリーズの新作を書き上げ、タバコとドンペリで祝い、新作をカバンに入れて宿を出る。しかし吹雪に見舞われ事故を起こし崖から転落してしまう。

 気がついたシェルダンはアニーの家にいた。アニーはシェルダンのミザリーシリーズの大ファンであり、雪のため電話も道路も通じていないと話す。アニーは看護師の経験があるためシェルダンに適切な治療をし看病をする。しかし彼女はシェルダンの家を見張っていたこと、事故にあったシェルダンを助け出したを告白する。アニーはシェルダンのカバンの中に新作があることを見てしまったこと、それを読ませて欲しいと話し、世話になっているシェルダンはそれを了承する。

 その頃シェルダン担当の編集者は彼が行方不明になったため、地元の保安官に連絡をする。保安官は調査に入り、シェルダンの事故現場で道路脇の木が折れていることに気づくが、降雪のためシェルダンの車を発見することはできなかった。

 新作を読んだアニーはその結末に激怒、シェルダンがここにいることは誰にも連絡していないと告げる。そして新作を燃やすようにシェルダンに指示し、新作の原稿を燃やしてしまう。さらにタイプライターを用意し、自分の思うような新作を書くよう命じる。足を骨折しているシェルダンは彼女の要求を飲むふりをしつつ、彼女に新しい用紙を買いに行かせ、そのすきにアニーの家の中を調べる。しかし電話は設置されておらず、シェルダンは助けを求めることができなかった。

 その頃一部雪解けした現場からシェルダンの車が発見される。警察はシェルダンが雪の下で死亡していると断定するが、保安官は車の扉にこじ開けられた跡があるのを見つけシェルダンは助け出されたと考える。

 シェルダンは新しい小説を書くが、アニーは自分が気に入らないとそれを却下する。仕方なくアニーの思う通りの話を書き進めるシェルダン。シェルダンはアニーを夕食に誘い、以前盗んでおいた薬を飲ませることを企む。ワインを開けた時に実行するが、アニーが誤って薬入りのワインをこぼしてしまい、計画は失敗に終わる。

 雨が降りアニーの様子に変化が訪れる。小説が書きおわりに近づいたことを悟ったアニーはシェルダンが家を出て行ってしまうことを憂慮していた。それを知ったシェルダンはアニーが外出した隙に再度家の中を調べる。そしてアニーの殺人を犯した過去を知り驚き、包丁を持ち出しアニーの帰りを待つ。しかし夜中アニーはシェルダンが家の中を徘徊したことに気づき、彼を薬で眠らせ、彼の足首を折る。

 保安官はシェルダンのミザリーシリーズを読み、手がかりをつかもうとする。そしてアニーが買い物をしている様子を見た時に気づく。アニーが過去に殺人で捕まった際の新聞記事に、彼女がミザリーの小説の一部を引用した話をしていたことを。さらにアニーは最近タイプライターの用紙を購入していることも突き止める。保安官はアニーの家へ向かう。それを察知したアニーはシェルダンを地下室へ閉じ込める。保安官を家に迎え入れるアニー、保安官は何も発見できずに帰ろうとしたが、地下室にいたシェルダンが音を出し保安官に気づかせる。保安官は地下室にいるシェルダンを発見するが、アニーが彼を射殺する。そしてシェルダンに一緒に死のうと話すが、シェルダンはミザリーを完成させてからだと答える。

 アニーはシェルダンに小説の続きを書かせる。彼は小説が完成しそうなので、いつもの儀式を、とアニーに頼む。タバコとマッチ、ドンペリを用意するアニー。一方シェルダンは地下室でオイルを見つけ隠し持っていた。完成した原稿にオイルをかけそれに火を放つことでアニーを挑発、取っ組み合いになるが、シェルダンはなんとかアニーを倒すことに成功する。

 1年半後、シェルダンは編集者と新作の成功を祝っていた。しかし彼にはまだアニーの幻影が見えていたのだった。

 

 スティーヴンキング原作の映画はこのブログで2本目。「グリーンマイル」以来。あちらがちょっと不思議な物語だったのに対し、本作はど直球のホラー映画。

 とにかくアニーの人となりが怖すぎる。冒頭、事故を起こした主人公を助け看病するところまでは普通に見えるが、そこでも何気に主人公をストーカーしていたことをあっさりと暴露するシーンから、恐怖が始まる。時々起こす癇癪も怖いが、それよりもミザリー愛が凄すぎて、主人公に原稿を燃やすことを迫るシーンの方が迫力がある。今で言う推し活そのものだが、30年前にこれを恐怖として描いたこの映画、原作の達観の凄さか。日本でもアニメが気に入らずに犯人が犯した事件があったが、まさに同じである。

 原作の凄さなのだろうが、一見ダメおやじに見える保安官が着実にシェルダンの行方に迫っていくのも良く、映画終盤でやっとそれが実り、保安官がアニーの家を訪れ、さrに物音に気付いてシェルダンを発見した直後に起こるアニーの残酷な射殺も言葉は悪いが見事としか言いようがない。

 やはり人間がこの世の中で一番怖い、ということを実にうまく表現している。