●第1シリーズ #14 あきれた奴
火付盗賊改は同心全員で日影の長右衛門一味を捕らえに行く。この日非番だった同心岡村ももちろんその中にいたが、岡村の妻みつは病弱でありながらまさに出産をしようとしていた。捕物が無事に終わり、鬼平は岡村にすぐに家に帰るように命じる。家に走って帰った岡村だったが、妻は死産しておりそれが原因で亡くなっていた。これ以降岡村は酒を断ち、剣の稽古に励み、捕物では命の危険を顧みず盗賊に立ち向かっていた。
岡村は夜橋から子供を背負い身を投げようとしている女を助ける。そのまま五鉄に連れて行き食事を与え、おまさに身投げをしようとした理由を聞き出して欲しいと頼む。岡村は忠吾の家を訪ね久しく絶っていた酒を一緒に飲むことに。翌日鬼平と市中見回りをしていた忠吾はそのことを鬼平に話す。
おまさが身投げしようとしていた女から聞き出したことを岡村に伝える。女はおたかといい、岡村が10日ほど前に捕らえた盗賊、鹿留の又八の女房だった。又八は正林寺に盗みに入り寺僧2人を殺害、158両の金を奪っていた。岡村は又八と仲間一人が寺から出てくるところに出くわし又八を捕まえたが、仲間は取り逃がしていた。又八は拷問にかけられても仲間について決して口を割らなかった。
おたかによると又八が捕まった日、夜遅くに清五郎と名乗る老人がやってきて、又八の手紙をおたかに見せた。そこには万が一があった時のおたかへの謝罪が書かれており一緒に10両の金が入っていた。おたかはその後身投げをしようとしていたところを岡村に助けられたのだった。
話を聞いた岡村は、おまさにこのことは鬼平に話すのを待って欲しいと頼む。そして盗賊改方へ行き牢にいる又八と話をする。又八の妻を助けたこと、寺に押し入った仲間が寺僧殺しをしたこと、その仲間を放っておくことはできないこと。そして妻と子に会わせてやるので、その代わりに仲間の居所を白状するように取引を持ちかける。又八はそれを聞き話を受け入れる。岡村は牢番に当て身を食らわせ、その着物を又八に着せて屋敷を出る。しかし途中又八は橋から身を投げ逃亡してしまう。又八は家に行きおたかと再会する。
役宅では岡村が鬼平に事情を話していた。鬼平は岡村を牢に入れるように命じ、同心たちには岡村に接触することを禁じる。鬼平は岡村が恐ろしい奴になったと語る。岡村が牢に入り半年が経過する。同心たちは岡村の処分をしない鬼平に対して不満を漏らすようになっていた。久栄から岡村のことを聞かれた鬼平は岡村は自分の命を又八に賭けたのだと話す。
盗賊改方の門前に又八が棺桶を乗せた荷車を引いて戻ってくる。又八が白州で棺桶を開くと中から血まみれになった仲間の紋三郎が出てくる。又八は時間がかかったことをわび、岡村に会わせて欲しいと懇願するが、鬼平は岡村は死んだと答える。鬼平は又八に堅気になっていたはずなのになぜ盗みをしたのかと問う。又八は昔世話になった清五郎から甥紋三郎の盗みを手伝ってやって欲しいと頼まれ断れなかったと答える。
鬼平は又八を牢にいる岡村に引き合わせる。又八は謝罪するが、岡村もまた又八に苦労をかけたと謝る。又八は7年の遠島送りとなる。岡村はおたかに会いに行き7年などあっという間だと励ますのだった。
初見時の感想はこちら。あらすじを追加した修正版。
ゲスト同心が主役の回。このパターンは悲劇で終わる話が多いが、今回はそうはならず、シリーズの中でも屈指の傑作となっている。ストーリーは単純で、同心が犯罪者を信じ牢から脱獄をさせるというもの。昔鬼平のアニメがあり、その中でも特に印象に残った話がこの「あきれた奴」だった。アニメは30分、実質20分強であったがそれで十分なほど、ストーリーは単純明快なもの。
本作では1時間のドラマにするためか、ラスト又八が戻ってきてからに時間を割いているように見える。白州でのやり取りも見応えがあるが、やはり一番は牢にいる岡村と又八の会話だろう。自分を信じて牢に入りその帰りを待っていてくれた岡村に対し礼を尽くす又八に対し、岡村は又八の労をねぎらい頭をさげる。単に戻ってきてくれたことを感謝するだけではない岡村の態度が涙を誘う。
感動的な話だったが、ちょっとだけ水を差すならば、拷問をされても何も答えなかった又八に対し、なぜ岡村は寺僧二人を殺したのが又八ではなくその相棒だったのかと知っていたのか、という点。何も話さなかったのは相棒のことだけで、又八は殺しはやっていないと話したのだろうか？あぁそれなら話は通じるか（笑
約35年前のこのドラマ、若かりし頃の橋之助（現中村芝翫）、長谷直美、平泉成が見られるのは貴重。
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