●733 許されざる者 1960
レイチェルは父親を亡くしたザカリー家の娘だが、愛馬グイパーゴを乗りこなす元気な女性。そんなレイチェルがグイパーゴに乗馬している時に剣を携えた老人と出会う。老人はレイチェルが養女であることを知っていた。家に帰ったレイチェルはそのことを母マチルダに話す。するとその老人が家のそばまでやってきていた。それに気づいたマチルダはレイチェルに用事を頼み、ライフルを構えて老人と対峙するが老人は殺せるものかと言い残し去っていく。
レイチェルの長兄ベンが街から牧童たちを連れて戻ってくる。その中には先住民であるポルトガルもおり、次男のキャッシュは彼を嫌う。レイチェルは兄の帰りを喜ぶ。ベンは母とレイチェルのために街でピアノを買ってきていた。
ザカリー家にローリンズ一家がやってくる。父ゼブはベンと牧場運営をしていた。長男チャーリーはレイチェルと、長女をキャッシュと結婚を考えていた。長女が着替えをしようと草むらに行った時に老人が自分たちを観ているのに気づき皆に報告する。その夜、老人がザカリー家のそばまで来たことに気づいたベンは老人を探しに外へ出るが嵐のため捜索は困難だった。
ベンや男たちは捕まえてきた野性馬を乗りこなそうとしていた。皆が乗り越せないでいる馬をポルトガルが見事に手名付ける。ポルトガルはその馬でレイチェルのそばに行き、彼女の髪についたゴミを取ろうとするが、それを観たベンはポルトガルを殴り倒す。ベンはレイチェルを家に帰そうとするが、レイチェルの愛馬グイパーゴがどこかへ行ってしまっていた。仕方なくベンはレイチェルを自分の馬で家へ連れて帰る。その道中、レイチェルはベンと結婚したいと話すが、ベンはチャーリーに求婚しに来いと言う決心をしたと答える。
その夜、先住民たちがザカリー家にやってくる。何もしない彼らを不審に思ったベンは彼らと話すことに。先住民は馬を贈りたいと話しベンが何も返すものがないと断ろうとすると、彼はこの家に自分の妹がいると老人に聞いてきたと話す。しかしベンはレイチェルは白人だと断る。先住民たちは去っていくが、帰り際に槍を家に投げつけてくる。先住民を嫌うキャッシュは彼らを殺そうとするが、ベンはキャッシュに牛を街に売りに行って欲しいと頼む。
皆で牛を街へ売りにいくが、レイチェルが先住民だったと言う老人が流した噂に動揺する者たちが現れる。しかしゼブはそんな噂を一蹴する。
チャーリーがザカリー家へやってきてレイチェルにプロポーズをする。レイチェルは積極的に彼を受け入れキスをする。ベンは二人の結婚を許すことに。家族の皆は喜ぶが、家へ帰るチャーリーは先住民によって殺されてしまう。
チャーリーの葬儀が行われ、ザカリー家は皆でローリンズ家へ行くが、チャーリーの母親はレイチェルを先住民だから息子が殺されたと騒ぎ出す。ゼブもどうしてこうなったのかとベンに尋ねる。ベンは噂を流した老人を探すことを決断する。老人はレイチェルの愛馬グイパーゴを盗んでおりその足跡を追跡、老人を捕まえることに成功し、老人を皆の待つ場所へ連れて帰る。
老人を絞首刑にしようとするが、その前にゼブがレイチェルのことを尋ねる。老人は昔ザカリー家の父ウィルと組んで先住民の虐殺への報復に行った、先住民たちを皆殺しにしたがそこで見つけた赤ん坊をウィルは家に連れて帰った、その後老人の息子が先住民にさらわれた時に老人はウィルに息子を引き換えるために赤ん坊を渡してくれと言ったがウィルはそれを拒否、老人の息子は殺されてしまった、ということだった。それ以来老人はザカリー家への復讐を誓ったのだった。真実はウィルの妻マチルダが知っていると老人が告げるとマチルダは老人が乗っていた馬を叩き老人を絞首刑にする。
話を聞いたゼブはレイチェルを先住民に返さないとベンに提携を解消すると話すが、ベンは拒否する。ベンたちが家に帰ると、先住民たちの歴史が刻まれたものが置かれていた。そこにはレイチェルが赤ん坊の時に奪われたと記されていた。キャッシュが母親を問い詰めると母親は生まれてすぐに亡くなった赤ん坊の代わりに夫ウィルが赤ん坊を連れて帰ってきたことを認める。
翌日レイチェルの扱いをめぐりキャッシュはベンに抗議をする。皆から仲間はずれにされているため、キャッシュはレイチェルを差し出すよう要求するがベンは拒否、キャッシュは家を出て、ローリンズ家の長女に会いに行く。
その夜、先住民たちが大勢にザカリー家にやってくる。何もせず様子を見ている先住民たち。レイチェルは自分が出て行こうとするがベンはそれを止め、弟のアンディに先住民を撃ち殺せさせる。これにより先住民たちも戦闘体制に入り、家を襲ってくる。家族皆で彼らを撃つ。先住民たちは引き上げ、弾除けの儀式を始める。その音楽を聞いたベンは母親にピアノを弾くように頼む。母親がピアノを弾くと儀式が収まる。すると先住民たちはピアノを破壊するために再度襲ってくる。家族は反撃をし彼らを撤退させるが、母親が撃たれてしまう。その頃キャッシュは銃の音を聞く。
朝になりまた先住民たちが襲ってくる。今度はザカリー家の牛を使い、家を襲ってくる。家に火をつけ反撃をするが、銃弾も底をついてくる。母親も亡くなり、家も焼け落ち、残されたベン、レイチェル、アンディは覚悟を決めるが、そこへキャッシュがやってきて先住民たちを倒し始める。ベンも打って出て彼らを倒す。その隙に先住民のリーダーがレイチェルの元へやってくる。レイチェルを見た彼は彼女に近づこうとするが、レイチェルはその先住民を撃ち殺す。
戦いが終わり先住民たちを全滅させた家族は外へ出る。空には雁が飛んでいた。
先日観た「ロビンとマリアン」に続きヘプバーンの作品。これも知らなかった1本。
ヘプバーン唯一の西部劇出演作であり、映画後半先住民の娘だと判明するというなかなか衝撃的な作品。そのためか冒頭から何だか謎めいたストーリー展開となっている。
ヘプバーン出生の秘密を知る謎の老人、先住民を毛嫌いする兄弟、そしてヘプバーンを妹だと言ってくる先住民、ヘプバーンが愛する兄が連れて帰ってきた仲間の先住民、など。伏線めいたものがこれでもか、と登場する前半。
そしてヘプバーンの結婚相手が先住民により殺されたところから話は急展開。老人によりヘプバーンの秘密が明かされ、一家は仲間はずれにされた上に先住民に襲われてしまう。そしてラストの先住民との戦い。
これだけ書くとなんとなく筋の通った話のように思えるが、実は途中で大きな違和感を覚える展開があった。ヘプバーン〜レイチェルの結婚相手に決まったチャーリーが先住民に殺された後のシーン。チャーリーの親はなぜ息子が殺されたのかとレイチェルの兄ベンを問いただす。ここまでは良い。しかしそれを聞かれたベンは、なぜかレイチェルが先住民の娘だという噂を流した老人を探すことに。これおかしくない?チャーリーは先住民に殺されたという状況、それならば先住民に復讐しに行くのが本当じゃない?チャーリーの両親が噂を重視して「なぜ息子が先住民に殺されたのか」→「息子の結婚相手のレイチェルが先住民の娘だから」と考えたとしても。結果的にベンが老人を探し当てたため、レイチェルの真実が暴露され、一家は仲間はずれとなり、先住民たちと戦うことになってしまう。ヘプバーンが先住民の娘役をしても、その苦悩はあまり描かれずドンパチで解決してしまったのは違和感がある。ラストの雁を眺める家族のシーンもこの先を暗示しているとは思えないし。
wikiに書いてあったが、監督は「私は人種的不寛容の物語に、共同社会のモラリティの実態に対する批評にしたかった」ようだが、それが受け入れてもらえず、活劇映画となってしまったとされている。監督はベンがレイチェルの真実を知り、それでもレイチェルとの愛を守るために、他の住民たちとのイザコザの壁を乗り越える話を描きたかったのでは?
前半の謎めいた展開が面白かっただけに、後半のちょっと違和感のある、あっさりとした解決はちょっと残念だったかも。それでもこの翌年に名作「ティファニーで朝食を」が製作されるからまぁ良いか(笑