マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

●731 マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 2011

 老婦人がスーパーで牛乳で購入、家に帰り夫と食事をする。ごくありふれた風景だが、老婦人は元イギリス首相サッチャーであり、夫はそこには存在しない。警護の人間はサッチャーが勝手に買い物に出たことで困惑していた。サッチャーは夫の遺品を整理することを決意するが、彼女の傍らにはその夫がいた。

 彼女はサイン本を書いているときに若い頃の自分を思い出していた。娘であるキャロルとニュースを見ている時には首相であるかのような言葉を述べる。娘はサッチャーを医者に診せることにし、夫がもう死んだことをはっきりと告げる。それを聞いたサッチャーは夫との出会いの頃を思い出す。

 初めて選挙に立候補した彼女は落選するが、夫デニスからプロポーズを受ける。その後双子をもうけるが、議員に当選、子育てよりも議員の仕事を優先させる。やがて大臣となった彼女だったが、党の方針に納得いかなかったため、党首選へ立候補することに。あくまで党の人間たちに一泡吹かせることが目的だった。しかし仲間の協力やアドバイスもあり、彼女は党首となり、首相の座に上り詰める。

 首相となったサッチャーだったが、国内では労働紛争や経済停滞やテロなど問題は山積みだった。彼女は信念と持ってその問題に強硬に対峙して行く。そんな彼女のやり方は非難されることが多かった。しかしフォークランド紛争が起こり、サッチャーはそこでも強硬策に打って出る。結果、イギリスはフォークランドを奪還、支持率は上昇、経済も回復する。

 しかしヨーロッパ統一貨幣問題や税金問題でも強硬策を取ろうとしたサッチャーは支持を失い、首相を辞任することに。そして現在の彼女は夫の亡霊を振り払うことを決断、夫の遺品の整理を始め、亡霊に別れを告げる。

 

 ネットでの評価にも書かれていたが、サッチャーの少女時代から首相辞任までの歴史をダイジェストで見せてくれる映画。正直、イギリスの元首相であり鉄の女と呼ばれたぐらいしか知らなかったため、本作でその首相時代を初めて知った。

 経済、テロ、労働組合などこの時代のイギリスは本当に多くの問題を抱えているが、テロを除けば現代の日本の姿も少しダブって見えてしまう。現状を打破するために強硬な態度で政策を進める政治のリーダーが必要なのはどの国も同じなんだと感じる。wikiを読むと首相辞任後もサッチャーへの批判を続ける人も多いらしいが、将来サッチャーが取った政策はどのように評価されるのだろう。

 

 一人の人間の伝記としては、仕事以外にも家族との関係をもう少し描いても良かったと感じるが、映画の尺としてはちょうど良いと思えたので仕方なしか。それよりも驚くのは、本人が存命中に、認知症を患っていることも含めて映画化されたこと。日本ではおよそ考えられない〜世間?が許さないだろう〜ことで、この辺りに製作者の矜持を感じる。