クライ・マッチョ

●670 クライ・マッチョ 2021

 マイク・マイロはかつてロデオののスターだったが、怪我をして引退、今は牧場で働いていたが、勤務態度などのせいで雇い主ハワードからクビにされる。

 1年後、ハワードがマイロを訪ねてきて、自分の息子をメキシコに住む母親の元から連れてきて欲しいと頼む。ハワードは息子ラファエルが母親レタに虐待されている、自分で行きたいが警察と揉めているため逮捕されてしまう、と話す。昔世話になったことがあるハワードの頼みのため、マイロはラファエルを連れ戻しにメキシコへ向かう。

 マイロは母親レタに会いラファエルのことを尋ねる。レタは豪邸に住み男遊びをして暮らしていた。レタはハワードがラファエルを連れ戻すために何人も送り込んできたが無駄だ、ラファエルは不良となり今は闘鶏場などに出入りしていると話す。マイロは闘鶏場へ行きラファエルと会い、事情を説明、ラファエルはマイロとともにアメリカへ行くことを受け入れる。そして荷造りをするといって消えてしまう。マイロはレタの家に行きその話をするが、レタはラファエルがマイロを騙したのだと言い、マイロをベッドに誘う。しかしマイロが断るとレタは激怒、マイロを追い返し手下にマイロを尾行するように命じる。

 マイロが一人車を運転していると後部座席にラファエルが隠れていた。マイロは怒りラファエルを車から降ろそうとするが彼は従わない。言い争いになるがマイロは折れ、ラファエルを連れてアメリカに戻ることに。

 しかしレタからの連絡を受けた警察が国境付近で検問を行う。それを見たマイロは迂回、しばらく時間を潰し様子を見ることに。レストランに入った二人、そこへレタの手下がやってきてラファエルを連れ戻そうとするが、ラファエルの機転でその場を逃げ出す。

 車が故障し困る二人だったが、ラファエルが車を盗む。マイロが体調を崩し二人はまた別の街へ。そこでレストランに入るが、警察が店に入ってこようとしたのを見て、店の女主人マルタは店を閉め二人を匿う。マイロは店で眠り休息をとる。二人は礼を言って店を後にする。宿を探した二人は礼拝堂で一晩を過ごす。翌朝マイロは礼拝堂の外に朝食が用意されているのを目撃、二人に気づいたマルタの差し入れだった。

 二人は近くの牧場で馬を飼う主人と話をし仕事を手伝うことに。そしてマルタの店を訪れる。マルタの過去を聞く二人。マイロはラファエルに乗馬を教えつつ牧場の仕事をこなしていたが、近所の人たちが連れてくる動物の面倒も見始める。

 マイロはハワードに近況を報告する。ハワードはその時初めてラファエルを連れ戻す必要がある理由を説明する。ハワードはリタ名義でメキシコに投資をしたがそれが成功、その金を手にするためにレタとの交渉材料として息子ラファエルを手元に置きたいということだった。

 二人は牧場での生活をしつつ、マルタの家族との生活も満喫していた。しかしレタの手下たちの捜索の手が忍び寄ってくる。それを知ったマイロはマルタたちと別れ、アメリカへ戻ることを決意。その道中マイロはハワードから聞いたことを正直にラファエルに話す。ラファエルは激怒し、車から降りてしまうがそこへパトカーがやってくる。ラファエルのことがバレたかと思いきや、警官はヤクの取り締まりをしていた。無事警官たちから解放された二人はアメリカへ向かうが、レタの手下に追われてしまう。絶体絶命のピンチに陥るが、ラファエルの飼っていた闘鶏マッチョが手下を襲い、無事その場から逃げ出すことに成功する。

 マイロはラファエルをハワードの待つ国境へ連れて行き、二人を再会させる。ラファエルはマイロに礼を言い、マッチョを託す。ラファエルたちがアメリカに戻って行くのを見届けたマイロはマッチョを連れ、マルタの待つ店へ帰って行く。

 

 イーストウッドの現時点での最新作。企画自体は50年ほど前からあったらしいが、その後様々な経緯を経て、映画化が成立したらしい。

 

 家庭環境に恵まれず強さに憧れる若者に対し、高齢の老人が強さだけでは意味がないと諌める、という王道のストーリー。

 というかストーリーなどはむしろどうでもよく(笑 90歳を超えたイーストウッドが監督主演を務めた、ということだけで十分な一本。馬をはじめとする動物たちとのふれあい、美しい女性とのダンス、恩がある人への礼、若い頃に感じたマッチョに対する思いと歳をとった今思うことの違い。

 健さんがそうだったように、イーストウッドもただそこにいるだけで良いのだ。