鬼平犯科帳 第1シリーズ #18 浅草・御厩河岸

第1シリーズ #18 浅草・御厩河岸

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 鬼平たちは石和まで出張り大盗、鶍の喜左衛門一味を捕らえた。一味の中には錠前外しの松吉もいた。鬼平は松吉の取り調べをするが、松吉は手引きした人間を白状しない。鬼平は親孝行の松吉に父卯三郎を会わせる。卯三郎も盗人だったため、松吉に何も言うなと命じるが、松吉は観念して全てを白状する。

 松吉は幼い頃父と離れ離れになっていたが3年前に再会、それ以来寝たきりの父の面倒を見ていたが、治療に金がかかるため昔の仲間の誘いについ乗ってしまったと告白する。それを聞いた鬼平は松吉を許しそのまま帰すことに。ただし同心酒井の指示に従うことを条件とした。それから3年松吉は飾り職人として働く一方、酒井の手下として忠実に働き、お梶と所帯を持ち、平穏な日々を過ごしていた。

 松吉は父と一緒に暮らしていたが、父卯三郎は松吉に盗人に戻るようにと言うのが口癖だった。しかし松吉が錠前外しの盗人だったことはお梶にも内緒だった。

 ある日、松前屋の彦造と名乗る男が松吉を訪ねてやってくる。箱の鍵を失くして困っている、その鍵を開けてほしいという依頼だった。松吉は見たことのない錠前の細工に感心し必ず鍵を開けてみせると彦造に答える。それ以来松吉は寝る間も惜しんで合鍵を作ることに没頭する。そしてとうとう合鍵を作ることに成功、箱はオルゴールだった。

 彦造と料理屋で会った松吉は、彼から意外なことを明かされる。彦造は松前屋の使いなどではなく、盗賊海老坂の与兵衛一味の人間だった。与兵衛は盗みを働くのにあたり、松吉の錠前外しの腕を借りたいと申し込んできた。

 家に帰った松吉は与兵衛からもらった高額の謝礼をお梶に渡す。それを見たお梶は喜ぶ。そこへ酒井が顔を出し松吉を連れ出す。酒井は松吉の父卯三郎を訪ねてきたものがいないかと尋ね、卯三郎と同じ越中生まれである海老坂の与兵衛という大盗賊が最近江戸に現れたことを告げる。そしてもし海老坂の与兵衛の噂を聞いたら、笠を店の外に掲げれば必ずつなぎをつけると約束する。

 家に帰った松吉は卯三郎から海老坂の与兵衛の仕事を手伝うように言われる。なぜそのことを知っているのか不思議に思う松吉だったが、そこへ彦造が現れ、事情を説明、明日目黒のお不動さんでお頭が会いたいと言っていると告げる。

 松吉は悩んだ挙句笠を店先に掲げる。しかしお梶が盗まれてしまうと言って笠を取り込んでしまう。松吉は海老坂の与兵衛に会いに行く。その留守に卯三郎は松吉が実は盗人であることをお梶に告げてしまう。海老坂の与兵衛は狙いは醤油問屋の柳屋吉右衛門の屋敷の金蔵であること、これが最後のお務めであること、もし松吉が断るならこの仕事は諦め田舎に引っ込むことを松吉に話し、柳屋が金に開かせて作らせた錠前を開けてみないかと誘う。

 家に帰った松吉はお梶から別れを告げられる。お梶は卯三郎から全てを聞いており、これまでのことに対するお礼を言って家から出て行こうとする。松吉は自分は盗賊改の手下として働いていると話し、その証拠にと笠を店先に掲げる。間も無く酒井がやってきて松吉は酒井とともに出かける。それを聞いたお梶は安心する。しかし松吉が酒井に告げたのは、海老坂の与兵衛の使いのものが卯三郎の見舞いに来た、ということだけだった。それを聞いた鬼平は、松吉が盗人一味とお上の間に挟まれ苦しんでいるのだろうと見抜く。

 松吉は一味が柳屋に潜り込ませている手下の手引きで金蔵の型を取る。それを元に図面を起こし合鍵作りに精を出す。それをお梶に見つかるが、仲間に頼まれた仕事だとごまかす。しかし卯三郎から全てを聞いているお梶はそれが嘘だと見抜く。松吉はこれが最後の仕事だと話し、お梶も盗人の妻としての覚悟を決めたと話す。

 翌日お梶は松吉を笑顔で送り出すが、その後店先に笠を掲げる。知らせを受けた鬼平と酒井が待ち合わせ場所に行くとそこにいたのはお梶だった。お梶は鬼平に盗人でも身内より訴え出れば罪が軽くなるのは本当かと尋ね確認すると、松吉を捕まえて欲しいと訴える。松吉は海老坂の与兵衛と会っていた。与兵衛は柳屋に忍び込ませていた人間が病で倒れたため、盗みに入るのは延期すると松吉に話し、合鍵の仕事代だと金を渡す。その時鬼平たちがやってくる。与兵衛は松吉を隠し扉から逃がし自分は鬼平に素直に捕まる。

 鬼平は与兵衛が持っていたオルゴールを持ち帰り久栄に聞かせる。そこへ酒井がきて松吉夫婦が夜逃げしたことを報告するが、鬼平はこれまでの褒美として松吉の探索をしないよう酒井に命じる。その頃松吉とお梶は卯三郎を連れ越中を目指していた。

 

 初見時の感想はこちら。あらすじを追加した修正版。

 

 以前盗人で今は堅気になっている人間が、盗人に戻ってしまうというパターンの話。鬼平シリーズでは定番の話だが、本作は少し他の話と趣が異なる。主人公は一度鬼平に捕まっており、その性格の良さから密偵として働いているという状況。さらに本人は堅気のまま暮らしたいと考えているが、その父親が元盗人であり息子である主人公に盗人に戻るよう言い続けている、という少しコミカルな話。妻にも内緒のことが父によって暴露されてしまい…という展開。

 さらに本作は主人公が盗みとは関係なく、鍵を開けるということに執着している様が見て取れる。つまり職人気質。盗みの仕事を手伝うかどうか悩む主人公に対し、与兵衛は鍵を開けてみないか、とその職人気質の痛いところをついているのも面白い。

 もう一つ本作を面白くしているのは、主人公の妻お梶の変化。義父から夫の正体を明かされ一度は別れを切り出すが、主人公からお上の仕事を手伝っていると言われ安心、しかし夫の嘘を見抜き夫が最後の仕事だと話すと盗人の妻として生きることを決意、それでも最終的には夫のことを訴え出る、という展開。鬼平シリーズでは盗人が主人公になる話は多いが、その妻に焦点を当てた話は少なく、本作はそこに面白さがある。

 

 ラスト、鬼平が逃げた松吉を追わないよう酒井に指示するのも良い。ドラマの中では具体的に描かれないが3年の間、松吉は酒井の密偵として働いたのだからというのがその理由。鬼平の面目躍如といったところか。

 

 松吉がその鍵を開けた箱がオルゴールなのも珍しい。他の話でもオルゴールは出て来るが、江戸時代にそんな身近にあったのだろうか。久栄がネジが切れたオルゴールの仕組みを見抜くシーンもある。何気に久栄、できる女であった(笑

 

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