銭形平次捕物控 八人の花嫁

●677 銭形平次捕物控 八人の花嫁 1958

 江戸の町で若い娘3人が次々と殺される。3人はいずれも洲崎の埋立地に作られる八大竜王社の落慶式のために選ばれた8人の花嫁だった。一人目が殺された現場に女目明しのお品が駆けつけ、「いろはにほへとち」と書かれた文字の「い」に印があるのを見つける。2人目の殺害現場には同じことが書かれた紙があり「ろ」に印がしてあった。

 事件のことを聞いた平次は、被害者の娘たちが八大竜王社の計画に関わる者の娘であり、3人の名前には「いろは」の文字があることに気づく。

 お品は神社でおきんと会う。彼女も8人の花嫁の一人だった。二人が別れた直後、おきんが弓で射られてしまい、おきんは怪我を負う。お品は事件が自分の手には負えないと感じ、平次に助けを求めるが、平次は亡くなったお品の父の跡を継ぐ者が他人に助けを求めてはいけないと諭す。それでも平次は事件のことを調べ始める。

 1人目が駕籠の中で殺害されたトリックを見抜く。おきんが襲われた神社に行き、弓で狙うには男では無理で、小柄な女か子供だと推理する。八五郎が弓の名人の女ならば、ということで軽業師のお蝶のことを話し、二人は見世物小屋へ出向く。八五郎は小屋の親父からお蝶のことを聞き出す。彼女は叶屋に両親を殺されたも同然の目にあっていた。

 平次は奉行所で過去の記録を調べる。6年前の大火事で洲崎に多くの人間が移り住んだが、そこに八大竜王社を作るためにその人間たちを追い出した。その時それに反対した桧垣津軒は殺されていた。八大竜王社を作り儲けを企んだのは商人たちだった。彼らの娘たちが連続して殺されていたのだった。

 平次は叶屋のことを八五郎たちに調べさせる。商人たちの中には娘たちが殺されたことを気にして、八大竜王社の建設から手を引こうとするものが出てくるが、寺社役大脇はことを強引に進めようとする。

 叶屋の娘星江は許嫁と密会している時に矢で右目を射抜かれてしまう。やったのはお蝶だった。お蝶は両親の仇をとったと墓前に報告、自害しようとする。それを見つけたお品は平次に知らせる。平次はお蝶と星江がいた位置関係から、星江を射抜いたのはお蝶ではない別の人間だと判断するが、お蝶は亡くなってしまう。

 星江は父親の前で嫁にいけない体になってしまったことを恨み、誰が自分をそんなに恨んでいたのかと話す。その場にいた平次は恨まれていたのは星江ではなく、父親である叶屋だと話すと、星江は父親に全てを銭形の親分に話すように父親に言う。平次は叶屋に八大竜王社に関わる人間の名前を教えて欲しいと頼む。

 その夜、叶屋は平次に言われたことを書こうとするが、そこへ悪漢たちが来て叶屋を殺害、書いていた紙も燃やしてしまう。しかしその紙を天井裏から見ていた小人がいた。平次は叶屋が殺害されたことを知る。そして同心笹野に呼ばれる。笹野は平次に事件には関わらないよう上から命令されたと話し、十手を返すように言う。平次は不服ながらそれに従うが、事件を調べることは諦めなかった。

 家に帰ったへ時を待っていたのはお品だった。おきんが洲崎で亡くなった桧垣津軒の娘、錦と瓜二つであること、そのおきんが行方不明になったことを告げる。それを聞いた平次は八五郎たちとともにおきんの家へ。そこには八大竜王社に関わった人間の名前の書かれた紙があった。

 家に帰る平次は何者かに襲われる。一人奮闘する平次を侍が助ける。家に戻った平次はお静が攫われたことを気づき外へ。お静が残したであろう銭を拾いながらあとを追うが悪漢たちに捕まってしまう。そこにはお静もいた。悪漢たちが去った後、おきんがやって来て二人を助け出そうとするが、平次はおきんこそが今回の事件の首謀者の一人だと見抜いていた。これ以上の殺しは辞めるように話すが、おきんはその場を去ってしまう。平次は牢から抜け出し、八五郎たちと合流する。八五郎は、前に洲崎に住んでいた住民たちが集まって八大竜王社へ向かっていると話す。

 おきんは小舟で八大竜王社へ向かうが、お品がその船に乗っておりおきんが行くのを食い止めようとする。しかしおきんに反撃をされる。そこへ平次が駆けつけ、一緒に八大竜王社へ。そこには多くの元洲崎住民が集まり、八大竜王社を取り壊そうとしていた。寺社役大脇の配下の者も集まりそれを食い止めようとする。平次はおきんに住民たちを止めるように言うが戦いはすでに始まってしまう。

 平次の話を聞いたおきんは住民たちが爆弾を持って八大竜王社の中へ。そこで罪の償いだと話し自爆、社は潰れてしまう。平次は大脇たちと対決するが、そこへ奉行所から役人たちが駆けつけ一件落着となる。

 全てが解決し、旅に出るという星江と叶屋を平次たちが見送る。

 

 銭形平次といえば大川橋蔵という世代なので、長谷川一夫の平次は新鮮。というか長谷川一夫の映画もこれで2本目(「忠臣蔵」が1本目)。

 

 ストーリーは、若い娘が連続して殺され、平次親分が出張るという展開。この時代の映画にしては、平次が女目明し、お品のために一歩引きつつも駕籠内殺人のトリックや容疑者が男ではないと見抜くシーンなど、捜査や推理が論理的に展開されていてちょっと驚いた。そう言えば、大川橋蔵版のTVでも推理を丁寧に描いていた記憶がある。原作がそうなっているのだろう。

 

 注目すべきはラストの大騒動か。洲崎から追い出された農民や町民たちが八大竜王社を襲うのだが、その人の数の多さにビックリ。相当な数のエキストラだと思うが、まだまだ映画に力があった時代なのだと実感。

 

 と言っても、女の弓名人があっさりと判明しその直後に自害したり、なんだかよく分からない寺社役が悪者だったり、といかにもこの時代の時代劇らしい展開も多かった。

 エノケン八五郎だったり、平次が使う下っ引きが漫才コンビダイラケだったり、と当時のお笑いのスターが出演しているのも楽しい。ギャグが今見て面白いかどうかは別だが(笑 

 

 子供の頃TVでよく見ていた大川橋蔵版TVよりもさらに古い銭形平次。ちょっとくせになりそうな予感(笑