銭形平次捕物控 鬼火燈篭

●679 銭形平次捕物控 鬼火燈篭 1958

 ある男が赤犬の巳之吉を探していた。男は新助、しかし嫌われ者の新助に巳之吉の居場所を教えてくれる者はいなかった。その新助が鼓楼で逆さづりになって死んでいるのが見つかる。新助は聖天一家の人間だったと知り、同心が聖天の嘉兵衛を訪ねる。しかし嘉兵衛は床で伏せっており、娘のおしんが応対、新助は既に一家から出入りを差し止められている、と話す。

 その頃備前屋の子供がさらわれ、身代金1000両が要求される。知らせを受けた同心が駆けつけるが、備前屋は同心を追い返す。同じように子供をさらわれた越前屋の時に同心たちが調べをし子供が殺されたためだった。備前屋は要求通りに身代金を払う。

 島に清次が赤犬を探しにやってくる。清次は島の子供たちの大将、次郎吉に案内を頼む。清次は赤犬の巳之吉と会う。お互い島で育った幼馴染だと清次は話すが、巳之吉は思い出せなかった。しかし清次は巳之吉にもらったというタバコ入れを見せたため巳之吉は清次のことを思い出す。二人は再会を祝い酒を飲む。

 次郎吉は命令に従い備前屋の子供を門前に返す。巳之吉は清次に聖天の盃をもらった方が良いと進め、嘉兵衛を訪ねる。そこにいた嘉兵衛の娘おしんも二人の幼なじみだった。次郎吉はまた子供を誘拐する。その頃巳之吉は改めて清次を連れて嘉兵衛に挨拶に行く。嘉兵衛は仲間となる証として、木戸小屋の多十を殺せと命じる。

 その頃奉行所では連続する誘拐について調べていた。誘拐されたのは十組問屋の店の子供ばかり。残るのは和泉屋善右衛門のところだけだったが、和泉屋は昨年の不始末で十組問屋から外されていた。同心は平次に調べをさせようとするが、平次は留守だった。

 清次は島の子供たちと遊んでいたところ、次郎吉の姉お千代に呼ばれる。巳之吉はおしんに呼ばれ清次のことを聞かれていた。清次はお千代に将来のことを心配していると話すが、手を握られたお千代は清次に惚れてしまう。

 清次は茶屋女のお粂に過去のことなどいろいろと聞かれる。そのお粂は飴屋善兵衛に呼び出され何事かを告げられる。清次は店を抜け出て、善兵衛の後をつける。善兵衛は和泉屋と書かれた屋敷へ入って行く。

 巳之吉はお千代が清次に惚れたことに気づく。清次は多十のいる木戸小屋へ出向くが、既に多十は殺されていた。清次は巳之吉の元へ戻り、多十を殺したなと尋ね、巳之吉はそれを認める。

 信濃屋の子供が誘拐され身代金を要求される。しかし信濃屋はお上に訴えると話す。それを聞いた和泉屋善右衛門はお上に訴えると子供の命が危ないと話す。そこへ銭形平次がやってくる。和泉屋は帰って行く。平次は和泉屋へいき善右衛門と話す。そして島にいる飴屋善兵衛が和泉屋善右衛門なのではと問う。すると善右衛門も島にいる清次が銭形平次なのではと返す。善右衛門は子供を亡くし、境内にいた浮浪児たちを助けるためにそんなことをしていると答える。

 島にいたお千代の元へお粂がやってきて、清次は銭形平次という目明しだとバラす。信じないお千代に、それならば神田明神下の家へ行ってみればよい、次郎吉にでも活かせればと話す。次郎吉は家にいる平次の姿を見て驚く。それに気づいた平次は清次の姿に変装して島へ。

 平次は巳之吉と会う。巳之吉はすでに清次が平次だと聞かされていた。平次は清次との遺言を巳之吉に話す。清次は牢屋で病死したが、彼は島の子供たちのことを心配し、巳之吉との思い出の品を平次に託したのだった。しかし話を聞いた巳之吉は自分は殺し屋だと話しその場を去って行く。そこへ聖天の嘉兵衛一味がやってきて、平次を取り囲む。お千代は平次に騙されたことを嘆く。しかし明神下まで見に行ったと話した次郎吉が皆の前に出てきて、自分が嘘を言ったと話す。それを聞いた嘉兵衛は次郎吉を罰する。それを見た平次は銭を投げ次郎吉を救おうとするが、次郎吉を人質に取られ捕らえられてしまう。そして新助と同じように鼓楼で逆さづりにされそうとなる。お千代が平次を助けようとするが、一緒に引きづられてしまう。そこへ巳之吉がやってきて二人を助ける。平次は巳之吉とともにその場から逃げ、川にあった船へ乗り込む。しかし嘉兵衛一味がやってきて、巳之吉を銃で撃ってしまう。嘉兵衛は平次も逃さないように手下たちに平次を探すように言うが、おしんはそんな父親の姿に疑問を持つ。おしんは父嘉兵衛に誰に命令で悪事をしてきたのかと問うが、嘉兵衛は誰だかはわからないが、頼みを聞くと金が入ってくると答える。

 その嘉兵衛の元へお粂を殺すように指示がくる。お粂も手紙で呼び出される。その頃平次を助けようとしたお千代は捕まえられていた。そこにきたおしんは、平次に惚れたお千代に同情しお千代を逃す。お千代はお粂と合流、お千代は平次に助けを求めることに。

 例の鼓楼にお粂がやってくる。どこかから声がしお粂には死んでもらう、お粂に平次のことを探らせたはずなのにお粂は平次に惚れてしまったと話す。それを聞いたお粂は頭巾をとる。それはお粂ではなく平次だった。そこへ嘉兵衛一味がやってくる。平次は謎の指令が誰だったかと皆の前で見せる。それは和泉屋善右衛門だった。平次は一味と対決、八五郎が同心たちを連れてそこへ駆けつける。

 島にいた子供たちが親元へ帰ってくる。八五郎は、おしんは罪滅ぼしに札所巡りに出たということでしたけど、お千代はどうしたんでしょうと尋ねる。平次はそのうち訪ねてくるだろうと答える。そんな二人をお千代は影から見守っていた。

 

 

 長谷川一夫銭形平次2本目。先日観た作品「銭形平次捕物控 八人の花嫁」で平次が取り扱った事件が連続殺人だったのに対し、本作は子供の誘拐がメイン。ただ本作の見どころはそれではなく、平次が変装、別人となって登場することだろう。

 冒頭から長谷川一夫が「清次」として登場、幼馴染に連れられ何だか悪い奴らの組織(聖天一家?)の一員となろうとするが、悪い奴である証として殺人を依頼されてしまう。平次がどうするのか、と一応ハラハラしながら観ていたが(笑 殺人を仕事とする幼馴染が清次(平次)の代わりに殺人をしてしまう、という展開。

 先に「銭形平次捕物控 八人の花嫁」を観ていなかったら、長谷川一夫の顔がわからず、銭形平次が出てこないなぁ、と誤解したかもしれない(笑 映画中盤で清次が平次であることがはっきりと示され、さらに平次が清次に化けていた理由も明かされる。ここにきてやっと話が見えてきてスッキリ。

 

 正直に白状してしまうと、冒頭で人を探していた男、新助は聖天の親分嘉兵衛を探しているんだと勘違いしていた。で、その親分に新助は殺されたんだと思っていたが、探していたのは巳之吉で、その巳之吉が人殺しを職としており、新助は巳之吉に殺されたんだ、と気づいたのは映画を観終わった後。だから、清次が巳之吉と話をしていた時に巳之吉が人殺しをしている、と話してもあまり驚かなかったのね。

 

 「銭形平次捕物控 八人の花嫁」でもそうだったが、映画の終盤は平次vs悪者一味の戦いとなり、これが見せ場なのだろう。一人で多人数を相手にする、しかも目明しなので刀は使えず、十手と投げ銭だけで戦うのは、今見るとさすがに無理があり過ぎるが、当時の子供たちには大人気だったのだろう。

 

 「銭形平次捕物控 八人の花嫁」と同じ年に製作された映画なのに、銭形平次とその妻お静以外(例えば平次の手下、八五郎)は、別の役者さんが演じているのもスゴい。昔はこんなこと当たり前だったんだろうなぁ。

 

 来週も別の作品の放送があるようで楽しみだ。ちょっとこのシリーズにハマってきているかもしれない。