鬼平犯科帳 第1シリーズ #19 むかしの男

第1シリーズ #19 むかしの男

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 鬼平は、幕府の命により甲州・韮崎に出張、甲斐信濃の二州に渡って猛威をふるっていた凶賊、犬目の伝次郎の逮捕をする。

 鬼平留守の役宅、鬼平の息子辰蔵は友と夜遊びをし役宅には入れないで困っていたが、そこへ同心酒井が盗人砂吉を捕まえ戻ってきたため、辰蔵は役宅に入ることができた。しかし久栄に見つかり、明日からの禁足を言い渡される。

 久栄は鬼平の妹美雪と寺へ出かける。そこで美雪は近藤唯四郎を見たと久栄に話すが久栄は否定する。酒井は砂吉が嘗役であることから、仕事仲間の頭の名前を聞き出そうとするが、砂吉は何も答えなかった。

 唯四郎は金継一味の配下、勘造と三次と会う。勘造は唯四郎に盗賊改方に捕まっている砂吉を奪い返してほしいと頼まれ、100両を受け取る。勘造は唯四郎が鬼平と関わりがあると金継の親分に聞いていたのだった。

 久栄の元に容認から手紙が渡される。その手紙は唯四郎からで、明日護国寺の茶屋まで来るようにというものだった。もし来なければこちらから参上すると書いてあった。久栄は茶屋に出向く。しかし唯四郎が要件を話さないため久栄は帰ってしまう。久栄に相手にされなかった唯四郎はやけ酒を飲む。勘造は唯四郎から久栄についての話を聞く。

 勘造は夜、役宅へ忍び込み久栄の寝所へ入る。そして久栄に牢抜けの道具を渡し砂吉へ渡して欲しいと頼む。久栄は断るが、唯四郎と茶屋へしけこんだと瓦版で騒ぎになっても良いのかと脅される。なおも久栄を襲おうとするところへ辰蔵が物音を聞き駆けつけ、勘造は逃げて行く。辰蔵は騒ぎにしようとするが、久栄がそれを抑える。

 その頃鬼平小仏峠で一休みをし、皆にほうとうをふるまっていた。

 辰蔵は友からの遊びの誘いを禁足を理由に断っていた。そこへ美雪が娘妙を連れてやって来る。勘造は唯四郎に役宅へ忍び込んだことを話す。唯四郎は鬼平を恐る勘造たちを見て、子供のころ一緒だった自分が鬼平にほえ面をかかせてやると話し、妙が女中しのといるところを唯四郎たちは誘拐する。そして久栄に手紙を送り呼び出す。

 久栄に会った唯四郎は、人質は本郷麟祥院で砂吉と交換だと話す。そこへあとをつけてきた辰蔵が現れるが、久栄は辰蔵にすぐに屋敷へ戻るように話す。久栄は役宅に戻り、酒井に事情を説明する。

 麟祥院に駕籠に砂吉を乗せた久栄がやって来る。妙としのを砂吉と交換し無事に保護する。砂吉を助け喜ぶ唯四郎たちだったが、駕籠かきが酒井と辰蔵で、二人で一味を捕まえる。

 夕方鬼平たちが帰って来る。鬼平は酒井から唯四郎を捕まえ蔵に放り込んでいることを聞く。久栄が鬼平に何か話そうとするのを止め、鬼平は久栄に足を揉ませる。そして蔵にいる唯四郎に会いに行き話をする。唯四郎は鬼平に久栄は自分が女にしてやったのだと話すが、鬼平はそんなことは知っていて娶ったと答える。その鬼平の言葉を蔵の外にいた久栄が聞いていた。

 そこへ辰蔵が友とやってきて闇稽古に行くと話す。久栄は辰三に小遣いを渡し見送る。

 

 

 初見時の感想はこちら。あらすじを追加した修正版。

 

 シリーズでおそらく最初で最後の久栄が主役の話。鬼平が捕物で江戸を留守にしている間に起きた事件。久栄の初めての男、唯四郎が盗賊の仲間となり久栄の前に現れる。その唯四郎があまりに情けなく描かれるのが本作の特徴か。

 最初は久栄が自分と会うことを喜んでくれると思っていたふしがあるのが笑えるし、あっさりと久栄にフラれてやけ酒を飲む姿も情けない。そうかと思うと、盗賊たちが人質を取り久栄と交渉できる段になると、いきなり強気になり鬼平など…と言い出す始末だし。

 そんなバカな男に振り回されつつも、酒井の力も借りしっかりと事件を解決した久栄。唯四郎を前に毅然とした態度を取り続ける久栄がカッコ良いが、盗賊に寝所を襲われた後、辰蔵におかしな言い訳をするのは本作唯一のコメディシーンか。

 

 そんな久栄に対する思いを蔵で捕まっている唯四郎の前で吐露する鬼平もまた最高にカッコ良い。そして蔵の外で久栄にその話を聞かれていたことに気づいた後のセリフも。

 

 男女の関係性が現代とは全く異なる江戸時代が舞台。ドラマは約35年前の1989年放送、原作に至っては約55年前の1969年らしい。現代からすれば可笑しく見えてしまう唯四郎の言動も、この時代ならばそうではなかったのか。ただ鬼平のカッコ良さは現代にも通用するが。

 

 

 蛇足ながらもう一つ。今回は久栄が主役でありそのため役宅の場面が多く出て来る。久栄に手紙を持って来るのが用人(エンドロールで松浦与助とされる)であり、役宅に与力同心以外の男性がいることが示される珍しいケース。この用人、この話以外で見た記憶がない。相当珍しいキャラ登場の回でもあった。

 

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