西部無法伝

●680 西部無法伝 1971

 1857年ミズーリ。白人クインシーが黒人奴隷ジェイソンを連れて街にやってくる。クインシーは酒場でジェイソンを競売にかけ客に買ってもらう。しかしジェイソンは逃げ出し二人は合流、二人は奴隷売買の詐欺を商売にしていた。

 彼らは街を転々とし商売を続けるが、途中奴隷商人のプランケットと出会い、ジェイソンを売ってくれと頼まれるがクインシーは彼を銃で追い払う。彼らはカンザスへ。そこでは奴隷制度の是非を問う投票の真っ最中だった。事情がわからないクインシーにジンジャーという女性が街の状況を説明、ジンジャーは奴隷制度に反対の立場でありクインシーはタジタジになる。しかし彼女はスリでありクインシーは金や時計を奪われていた。

 二人は翌日の奴隷市に参加するため街に宿泊するが、ジェイソンは黒人のためホテルに泊まれず馬小屋で寝ることに。そこでジェイソンは黒人女性の奴隷ナオミと出会う。クインシーはホテルの部屋で風呂に入っていたが泥棒を見つけ捕まえる。それはジンジャーだった。二人は一夜を共にする。翌日ジェイソンはクインシーにナオミを買ってくれと頼む。奴隷市が開かれ、クインシーはナオミを落札、ジェイソンは3500ドルの高値で売れる。ほくそ笑む二人だったが、そこへ奴隷解放を主張するジョンブラウン一味がやってきて、奴隷たちに自由を、と宣言し奴隷たちを連れ去ってしまう。

 クインシーは彼らを追いジェイソンと合流。ジェイソンは一味から逃げ出していた。ジェイソンは奴隷詐欺を辞めようと話しクインシーも了承する。これまでの儲けの分けようとするが、金はジンジャーに盗まれてしまっていた。二人はミズーリに戻り、奴隷詐欺を再開するが、その店にプランケットがいた。彼は強引にジェイソンを買い取ろうとする。二人は喧嘩騒ぎを起こしその場から逃げようとするが、保安官に捕まってしまう。以前詐欺で騙した相手がおり、ジェイソンが連れて行かれそうになる。プランケットはその男に金を渡し、ジェイソンを買い取り、クインシーは詐欺で捕まってしまう。

 牢に拘留されたクインシーの元へジンジャーが現れ、牢の鍵や金を渡す。それを使って脱獄したクインシーはジンジャーと合流、お互いの気持ちを確かめ合い、ジェイソンを探すことに。その頃ジェイソンはナオミと共にプランケットからハワードの屋敷に売られていた。ジェイソンはハワードに自分は奴隷ではないと訴えるが逆に罰せられ、屋敷の奴隷になってしまう。クインシーはジンジャーと共に扮装し、プランケットが売った奴隷が疫病にかかったとして、ジェイソンを探す旅に。

 ジェイソンは屋敷でアフリカから連れてこられていたソンガイと呼ばれる黒人たちと出会う。屋敷にクインシーたちがやってきて、二人は再会する。疫病にかかったことにしてジェイソンを連れて行こうとするクインシーだったが、彼はナオミとソンガイも一緒に連れて行くことを希望する。クインシーはソンガイも連れて行くため、ジンジャーを一足先にメキシコへ向かわせる。屋敷にプランケットがやってきて、クインシーの正体を暴露、彼はムチ打ちの刑を受けてしまう。ジェイソンがそれを助け、ソンガイたちも手助けをする。クインシーはジェイソン、ナオミ、ソンガイたちを連れ逃亡、ジンジャーと合流しメキシコへ。クインシーはジェイソンに西部へ行き金の採掘をすることと持ちかけるが、ジェイソンはソンガイたちの面倒を見ると話しメキシコに残る。クインシーはジンジャーと共にアメリカへ戻っていく。

 

 これまたタイトルも知らない1本だったが、とても面白かった。脚本が実によくできていると思う。奴隷制度を逆手に取った詐欺をする主人公の二人。こんな話は見たことがない。二人の詐欺行為を見せておいての女性詐欺師の登場。その女性と仲良くなりまたも奴隷市で上手いことやろうとした矢先に、奴隷解放の一味にジェイソンがさらわれてしまう展開。ジェイソンとあっさり合流するも、今度は因縁があった奴隷商人にジェイソンをさらわれ、それを探しながらの詐欺行為。軍医や牧師に化けた時のクインシーの口八丁が実に見事。そして屋敷からの逃亡へつながるアフリカ黒人たちとの出会い。

 

 全体的にコメディ調なのがまた良い。奴隷役のジェイソンが奴隷口調で話す時と素に戻る時のギャップ。また詐欺師でありながら、女性詐欺師ジンジャーにコロッと騙されるクインシー。街の奴隷市での客の競り合いの可笑しさ。アフリカ黒人とジェイソンのやりとり。現代でも十分通用するコメディだと思う。

 

 主役のジェームズガーナーは、「スペースカウボーイ」でも書いたが、「大脱走」や「ロックフォードの事件メモ」の人。もう一人の主役ルイスゴセットは「愛と青春の旅立ち」のあの軍曹なのね。女性詐欺師のスーザンクラークも60年台後半の映画を何本か見ているし。

 後に有名になる俳優さんたちの若い頃の作品としても面白い一本。