あきない世傳 金と銀4 貫流篇 高田郁

●あきない世傳 金と銀4 貫流篇 高田郁

 五代目となった惣次と一緒になった幸だったが、江州との取引の諍いが原因で惣次は店を出て行き隠居となり、幸とも別れることに。六代目として智蔵が店に戻り、幸は智蔵と一緒になる。そして商いのことを知らない六代目に代わり幸は五鈴屋のために新たなことに挑戦をし始める。

 

 以下の12章からなる。

 

1章 神無月の客 1745年

 惣次 店を出て半月近く帰らず

 智蔵 五鈴屋へ 惣次の手紙を持ってくる 手紙には隠居すると書かれていた

 桔梗屋 五鈴屋へ 惣次はもう五鈴屋には戻ってこないだろうと語る

 

2章 お家さんの心痛

 富久 寝込み始め、医者柳井は心の臓が弱っていると診断

 幸 治兵衛に相談 治兵衛は智蔵にとっては良いことだと話す

 

3章 揺れる心、揺るがない思い

 富久 医者柳井が容態が悪くなっていると診断

 智蔵 六代目となる決心がつかないと幸に吐露する

 富久 もし何かあっても幸を養女とすると話す

 智蔵 六代目となると皆の前で話す

 

4章 曽根崎心中

 惣次 呉服仲間に幸への去り状を託す

 智蔵 幸を曽根崎心中を見に誘い、帰りに一緒になり人形遣いとなって欲しいと頼む

 

5章 援軍

 呉服仲間の寄合 惣次の隠居、智蔵六代目就任、幸が後添えに が認められる

 幸 智蔵とともに江州へ 機織りを見て、機ずねをもらう

 

6章 披露目

 智蔵 六代目のお披露目、幸との祝言

 富久 祝言の夜、幸に言葉を残し亡くなる

 

7章 結び糸 1746年

 五鈴屋 初荷として浜羽二重を売り出す

 修得先生 惣次隠居を怒るが、智蔵の受け答えを気に入り六代目を認める

 真澄屋 五鈴屋の浜羽二重が盗品だとケチをつけるが、幸の機転で反論

 

8章 新たな売り方

 幸 治兵衛を訪ね、治兵衛の妻お染の叔父が行商をしていることを聞く

 幸 鉄助とともに店前現銀売りの店を訪ねる

 幸 智蔵に行商人に反物を任せることを提案

 

9章 人を育て、我も育つ

 幸 お染の叔父茂作を連れ、江州波村へ 行商の内容を相談

 幸 浜羽二重以外の在庫が増えてきていることをに気づく

 桔梗屋 頼まれていた奉公人の件で、以前五鈴屋にいた留七、伝七を紹介

 幸 留七、伝七に在庫分を行商してもらうことに

 

10章 羽黒蜻蛉

 幸 留七、伝七のために新たな店の名前入り風呂敷を作る

 幸 菊栄に会いに行く 鉄漿粉で儲けている備前の店を教えてもらう

 

11章 勝負の時

 幸 智蔵に人形浄瑠璃を見に連れて行ってもらうが休みのため、舞台裏を見ることに

 幸 人形遣いの亀三に、人形の衣装のため五鈴屋の縮緬を無料で使ってもらうことに

 幸 浄瑠璃の店の前で、人形と同じ縮緬の着物を着て注目を浴びる

 

12章 決意

 留七、伝七 行商から帰り、備前で売り上げを報告

 五鈴屋 浄瑠璃と同じ桑の実色縮緬の売り上げが伸びる

 桔梗屋 五鈴屋に来て、店を真澄屋に売る決意をしたと話す

 呉服仲間寄合 真澄屋が桔梗屋を買い取る条件を変えると言い出す

 幸 桔梗屋を買うと宣言

 

 シリーズ4作目。前作終わりで五代目である惣次がショックを受け、本作冒頭でその惣次が行方不明となってしまう。そして隠居宣言、幸への去り状と続き、とうとう幸は三男であり六代目となる智蔵と祝言をあげることに。第1作で智蔵からの愛をほのめかされていたが、その伏線が4作目にして回収されたことになる。

 商いに素人の智蔵に代わり幸が五鈴屋を仕切ることとなり、前作で仕込んだ浜羽二重が売り出され、さらに反物を売るために行商人を使う、というアイデアも生まれ五鈴屋は絶好調に。

 

 一方で、幸の味方であった富久が亡くなるという事件も。前作でこのシリーズでは感動する話がないと書いたが、富久が亡くなる6章はさすがに泣けた。シリーズとしては4作目だが、小説内では幸が五鈴屋に奉公に上がって12年。その12年前の話を持ち出されたら、そりゃ泣けるでしょ(笑 

 商売が上手く廻り始め人手や店の改築を検討し始めた時に、四代目の起こした事件で店を出て行った二人、留七と伝七が店に戻ることとなり、ここでも伏線回収といった感じ。さらには、惣次が失敗する原因となった「利も情も」、といったことを思い起こさせる最後の桔梗屋の売買騒動も。

 相変わらず次回作も読まずにはいられない、といった終わり方。いよいよ五鈴屋が幸の手腕によって大きくなっていく様が描かれることが予想される次作。楽しみである。